ORCID

ORCID（Open Researcher and Contributor ID）とは

ORCID（Open Researcher and Contributor ID）は、科学者や学術著作者を一意に識別するための国際的な非営利コードです。このコードは、研究者の名前が同姓同名であったり、結婚や文化的背景による改名、イニシャル表記、異なる文字の使用などによって、個人の特定が困難になるという問題を解決するために開発されました。ORCIDは、個人を識別するための永続的な識別子を提供し、デジタルオブジェクト識別子（DOI）と同様の役割を果たします。

ORCIDの管理団体は、研究や学術出版における寄稿者識別のデファクトスタンダードを目指しており、オープンで独立したレジストリを提供しています。2012年10月16日にレジストリサービスを開始し、ユーザー識別情報を発行し始めました。

ORCIDの開発と立ち上げ

ORCIDは、当初「Open Researcher Contributor Identification Initiative」として設立されました。プロトタイプは、トムソン・ロイターが自社のResearcherIDシステムで使用していたソフトウェアを基に開発されました。現在は、2010年8月に設立された独立系非営利団体であるORCID, Inc.によって運営されています。事務局長はローレル・ハークが務めています。

ORCIDは、自由に使用でき、他のIDシステムとの相互運用が可能です。2012年10月16日にレジストリサービスを開始し、ユーザー識別情報を発行し始めました。以前は、ORCIDはURLで定義されていましたが、現在では短縮形が広く使用されています。例えば、ジョン・ウィルバンクスのORCIDは、https://orcid.org/0000-0002-4510-0385から、ORCID: 0000-0002-4510-0385 のように短縮化されています。

ORCIDは、国際標準名称識別子（ISNI）のサブセットとして定義されており、ISO 27729として標準化されています。ISNIは、書籍、テレビ番組、新聞への寄稿者を一意に識別します。ORCIDは、ISNIとの協力関係を築いており、ISNI識別子の範囲内で、ORCID専用のブロックを確保しています。これにより、個人はISNIとORCIDの両方を持つことができます。

ORCIDとISNIの識別子はともに16文字で、数字とハイフンで構成されています。最後の文字には、チェックディジットとして「X」を使用することがあります。例えば、ニック・ジェニングスのORCIDは https://orcid.org/0000-0003-0166-248X です。この識別子は、ISO/IEC 7064:2003標準に準拠したMOD 11-2チェックディジットを使用しています。

テストや講習用として、架空の人物に割り当てられたORCIDアカウントも存在します。例えば、ジョサイア・S・カーベリーのORCIDは https://orcid.org/0000-0002-1825-0097 です。

ORCIDの利用目的

ORCIDの主な目的は、学術出版物の探索を支援し、科学文献に埋もれた繋がりやアイデアを発見するための電子科学への移行を促進することです。さらに、各研究者に対して、出版物リストにとどまらない、科学への貢献を記録した「デジタル履歴書」を提供することを目指しています。このデータベースはオープンアクセスであり、他の組織が独自のサービスを構築するために利用できます。

ネイチャー誌の社説では、研究者が論文を作成する際にORCIDを追加のタグ付けとして使用することが推奨されています。また、ORCIDは、大学のブログコメント、未発表の論文ドラフト、ウィキペディアの編集など、多様な貢献を記録するためのデータセットに割り当てることも可能であると述べています。

2014年4月、ORCIDはConsortia Advancing Standards in Research Administration Informationと協力し、査読プロセスにおける貢献を記録し承認する計画を発表しました。

ORCIDの会員、スポンサー、登録者

2013年末時点で、ORCIDには111の登録団体と46万人以上の登録者がいました。2014年11月15日には、登録者数が100万人に達したことが発表されました。登録団体には、エルゼビア、シュプリンガー、ワイリー、ネイチャー・パブリッシング・グループなどの大手出版社、カリフォルニア工科大学、コーネル大学などの研究機関、トムソン・ロイターなどの営利企業、学会、慈善団体、ウェルカム・トラストなどが含まれています。

2014年6月には、アンディ・マベットがウィキペディアン・イン・レジデンスに任命されました。

ORCIDの統合的組み込み

ORCIDは、登録者、スポンサー、ジャーナル、出版社だけでなく、ワークフローやデータベースにも組み込まれています。例えば、The Journal of Neuroscience、シュプリンガー・パブリッシング、ヒンダウィ・パブリッシング・コーポレーション、Europe PubMed Central、国立情報学研究所の研究者リゾルバー、ウィキペディア、ウィキデータなどでORCIDが活用されています。

一部のオンラインサービスでは、ORCIDからのデータのエクスポートやインポートを可能にするツールが開発されています。例として、ScopusやFigshareがあります。また、トムソン・ロイターでは、ORCIDとResearcherIDの間でデータを相互交換できるようになっています。

サードパーティ製のツールも、他のサービスからORCIDにコンテンツを移行するのに役立っています。例えば、ODINによるDataCite対応ツールや、Mendeley2ORCIDによるMendeley対応ツールがあります。

さらに、一部のORCIDデータは、RDF形式で利用することも可能です。

外部リンク

公式ウェブサイト
ORCID Japan Consortium for Research Institutions
* Editage Insightsによるローレル・ハークORCID事務総長へのインタビュー

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