ResearcherID

ResearcherIDとは

ResearcherIDは、科学界における学術論文執筆者のための典拠管理システムです。2008年1月にトムソン・ロイターによってサービスが開始されました。現在では、他のデータベースに統合されています。

このシステムは、研究者個人に固有の識別子を付与することで、論文の著者特定と正しい出典管理を支援します。学術論文の引用においては、著者名とイニシャルが用いられることが一般的ですが、同姓同名や綴りの誤記などにより、著者の特定が困難になる場合があります。ResearcherIDは、このような問題を解決し、研究者が自身の著作物を正確に管理することを可能にします。

ResearcherIDの機能と利点

ResearcherIDを利用することで、研究者は自身の著作物であることを申告し、個人に割り当てられた識別子を付与することができます。これにより、典拠情報が訂正され、常に最新の研究成果一覧を維持することが可能です。また、デジタルオブジェクト識別子（DOI）とResearcherIDを併用することで、研究者と論文を紐付けることができ、登録された研究者の検索や、同じ分野の研究者、共同研究者の発見が容易になります。

データベース統合

研究成果の閲覧、査読、論文投稿などのサービスを提供するPublons（Clarivate Analytics社）とResearcherIDは、2019年4月にプラットフォーム統合されました。これにより、研究者は単一のアクセス先で自身の研究成果と論文掲載状況をより包括的に把握できるようになりました。

また、Web of Science（2018年12月）およびORCIDとの統合も行われ、データベース間の多元的な連携が実現しました。この統合は、研究分野による論文発表形式の違い（コンピュータ科学における会議発表、人文科学における書籍など）にも対応するものです。

評価と課題

ResearcherIDの評価は、商業主義的であるという批判がある一方で、執筆者の誤認という共通の問題に取り組むイニシアチブであるという見方もあります。また、ばらばらだった典拠情報が紐付けされることによる利便性も評価されています。

まとめ

ResearcherIDは、研究者の学術活動を支援するための重要なツールです。研究者情報の正確な管理、論文の効率的な検索、研究者間の連携促進など、様々な側面で研究活動の効率化に貢献しています。データベース統合による利便性の向上は、今後の研究活動をさらに加速させるでしょう。

関連情報

関連文献
岩井雅史, 後閑壮登「研究者情報との連携による機関リポジトリの戦略的発信 : 信州大学の取り組み(<特集>e-Researchと学術出版)」『情報の科学と技術』第59巻第1号、情報科学技術協会、2009年、18-22頁、doi:10.18919/jkg.59.1_18、hdl:10091/2762、ISSN 0913-3801、NAID 110007028637。
小山聡「アイデンティティを推定する(<特集>WebアイデンティティとAI)」『人工知能』第24巻第4号、人工知能学会、2009年、544-551頁、doi:10.11517/jjsai.24.4_544、ISSN 09128085、NAID 110007338471。
渡邊隆弘「典拠コントロールの現状と将来(<特集>書誌コントロール再考)」『情報の科学と技術』第60巻第9号、情報科学技術協会、2010年、371-377頁、doi:10.18919/jkg.60.9_371、ISSN 09133801、NAID 110007701194。
蔵川圭 (2011年) 「Web上に公開される著者のデータベースと識別子(<特集>典拠・識別子の可能性:ウェブ・オントロジーとの関わりの中で)」『情報の科学と技術 』第61巻第11号、一般社団法人 情報科学技術協会。447-452頁。doi:10.18919/jkg.61.11_447
谷藤幹子、田辺浩介 (2015年) 「次世代研究者プロフィールサービス　SAMURAIからNinjaへ」『情報管理』第58巻第2号、国立研究開発法人 科学技術振興機構。107-116頁。doi:10.1241/johokanri.58.107
関連項目
OpenID
ORCID
機械可読目録
国際標準名称識別子
CiNii
バーチャル国際典拠ファイル
外部リンク
* ResearcherID 公式サイト (Clarivate Analytics 提供)

もう一度検索