STS-38

STS-38：アトランティスによる国防総省極秘ミッション

STS-38は、アトランティス宇宙船を使用して行われた、アメリカ航空宇宙局（NASA）のスペースシャトル計画における重要なミッションです。このミッションの特筆すべき点は、アメリカ国防総省の極秘ペイロードを搭載していたことです。スペースシャトルとしては37回目の打ち上げであり、アトランティスにとっては7回目の飛行となりました。また、国防総省のために任務を遂行するのも7回目でした。

4日間のミッションで、アトランティスは地球を79周し、200万マイル以上を飛行しました。当初、打ち上げは1990年7月に予定されていましたが、STS-35のカウントダウン中にコロンビアで水素漏れが発見されたため、延期されました。さらに、オービタ整備施設への移動中に雹の嵐に遭遇し、機体が損傷するというアクシデントもありました。最終的に、ペイロードの問題も重なり、打ち上げは1990年11月15日に行われました。打ち上げ窓は18:30(EST)から22:30(EST)の間で、実際の打ち上げは18:48(EST)に行われました。

搭乗クルー

このミッションには、以下の5名のクルーが搭乗しました。

船長：リチャード・コヴィー (3度目の飛行)
操縦士：フランク・カルバートソン (1度目の飛行)
ミッションスペシャリスト1：カール・ミード (1度目の飛行)
ミッションスペシャリスト2：ロバート・スプリンガー (2度目の飛行)
ミッションスペシャリスト3：チャールズ・ゲーマー (1度目の飛行)

打ち上げ準備と延期

打ち上げは、当初1990年7月に予定されていましたが、前述の通り、いくつかの問題が発生しました。STS-35のカウントダウン中に液体水素の漏れが発見されたため、6月13日から7月25日まで、第39A発射台で3つの予備タンクのテストが行われました。その結果、外部燃料タンクとオービタ間の外部燃料タンク側で432mmの水素燃料漏れが確認され、ケーブルから外されました。発射台での修理が不可能だったため、アトランティスは8月9日にオービタ整備施設に移動されました。この移動の際、コロンビアがSTS-35のために発射台に移動されるまでの約1日間、スペースシャトル組立棟の屋外に留め置かれ、その間に雹による損傷を受けました。オービタ整備施設での修理後、アトランティスは10月2日にスペースシャトル組立棟に戻され、吊り上げ作業中に後方区画から取り外されていたプラットフォームビームが落下し、わずかな損傷が生じましたが、修復されました。10月12日に発射台Aに移され、10月24日には4回目のタンクテストが行われ、水素や酸素の漏れは検出されませんでした。飛行準備完了審査において、当初打ち上げ日は1990年11月9日に設定されましたが、ペイロードの問題により11月15日に延期されました。

極秘ペイロードとその目的

Aviation Week誌によると、アトランティスは当初、204km×519km、軌道傾斜角28.45°の軌道に投入されました。その後、3度に渡りスペースシャトルの軌道制御システムが点火され、最初の点火で519kmの円形軌道に到達しました。このミッションの主要なペイロードは、USA-67というコードネームで呼ばれるものでした。これは、7周目にアトランティスのカーゴベイから展開され、8周目の昇交点でロケットモーターに点火して静止トランスファ軌道に移動しました。Aviation Week誌は、USA-67は静止軌道上で電子諜報活動を行う衛星であり、1990年の湾岸戦争中の動きを監視するために打ち上げられたと報じています。当初は、STS-51-CやSTS-33と同様にマグナム衛星であると考えられていましたが、現在ではSTS-28やSTS-53で展開されたSDS-2軍事通信衛星と同様のものと考えられています。

また、USA-67以外にも、別の衛星が展開された可能性が指摘されています。公開されたアトランティスの垂直尾翼と船橋楼後端隔壁の画像がSTS-53の画像と類似しており、慣性上段ロケットの機上支援器材が空であったことから、PAM-Dモジュールを用いて2つの別の衛星が展開されたという説があります。アマチュア観測者によって「未知の」静止衛星が特定されたという噂もあり、これは他国の静止衛星を秘かに監視するプロウラーとして知られるステルス人工衛星である可能性も指摘されています。

着陸とその後

当初の着陸予定地であったエドワーズ空軍基地での強い横風のため、ミッションは1日延期されました。しかし、状況は改善されず、着陸地点をケネディ宇宙センターに変更する決定が下されました。1990年11月20日16:42:42(EST)に、アトランティスはケネディ宇宙センターの第33滑走路に着陸しました。ロールアウト距離は2,753m、ロールアウト時間は57秒でした。ケネディ宇宙センターへのアトランティスの着陸は初めてであり、また1985年4月のSTS-51-D以来、スペースシャトルの着陸自体が久しぶりのことでした。着陸時の重量は86,677kgでした。

参考文献

Astronautix: STS-38
NASA mission summary - ウェイバックマシン（2000年12月18日アーカイブ分）
STS-38 Video Highlights - ウェイバックマシン（2007年10月13日アーカイブ分）

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