Strv.103

Strv.103（ストリッツヴァグン 103）

Strv.103、またはStridsvagn S（Sタンク）として知られるこの戦車は、スウェーデン陸軍が運用した独特な設計の主力[[戦車]]です。Stridsvagnとはスウェーデン語で「戦車」を意味します。他国の第2世代主力[[戦車]]に相当し、その特徴的な楔形車体と固定式主砲は、これまでにない戦車のあり方を提示しました。

概要

Strv.103は、その低いシルエットと楔形の車体が特徴です。主砲には105mmライフル砲を搭載し、自動装填装置を装備することで、車内のスペースを最小限に抑えています。スウェーデンは中立政策を採っていたため、国内での運用を想定し、起伏の多い地形での待ち伏せ戦術に適した設計となっています。スウェーデン陸軍では主力[[戦車]]として配備されましたが、その独特な形状から駆逐戦車や自走砲と解釈されることもありました。運用方法やコンセプトは、第二次世界大戦中のドイツ国防軍の駆逐戦車に近いと言えるでしょう。

開発

1950年代半ば、スウェーデン軍は老朽化したセンチュリオン戦車の後継として、新型戦車の設計案を募集しました。ランズベルク社、ボルボ社、ボフォース社の共同提案は、155mm滑腔砲を搭載した重戦車でしたが、スウェーデン軍の要求には過大で費用もかさむものでした。1956年、軍備局は被弾面積を抑えるために、極めて車高の低い設計案を提案しました。この設計案に基づき、1958年に2種類の試作車両が完成、1960年には10台の追加発注が行われました。最終的な試作車は1961年に完成し、「Strv.103」の名称が決定、1967年から量産が開始され、1971年までに300両が生産されました。

構造

車体

Strv.103は、非常に低い車高によって被弾率を減少させ、楔形の車体上部で砲弾を弾くように設計されています。また、エンジンを乗員区画の前に配置することで、被弾時の防御力を高めています。このエンジン配置は、イスラエルのメルカバ戦車と共通する特徴です。ただし、エンジン区画上部のメンテナンスハッチは装甲が薄く、強化も困難です。正面上部の防御は避弾経始に頼る部分が大きく、APFSDS弾への防御力は十分とは言えません。

エンジンは、右側に240馬力のロールス・ロイス K60ディーゼルエンジン、左側に300馬力のボーイング 502 ガスタービンエンジンを搭載しています。通常はディーゼルエンジンで走行し、必要に応じてガスタービンエンジンを併用します。2種類のエンジンを動力として併用する戦車はStrv.103のみです。

変速機には、ボルボ社製のダブルディファレンシャル＋トルクコンバーター複合型自動変速機が使用され、故障しにくく整備性が高いのが特徴です。足回りには油気圧式の可変懸架装置を備え、片側4個の大型転輪と2個の小型上部支持輪を持ちます。履帯は幅広で接地圧を抑え、雪上での機動性を高めています。しかし、車高が低い上に砲が突き出ているため、障害物の乗り越えには注意が必要で、塹壕などの超壕性能は通常の戦車に比べて低いと評価されています。

武装

主砲は、イギリスのロイヤル・オードナンス社製L7 105mmライフル砲を長砲身化したL74を搭載しています。L74は自動装填装置により最大毎分15発の発射速度を持ち、車体後部の弾倉には50発の砲弾を収容できます。通常、APDS弾、HE弾、発煙弾を搭載します。スウェーデン陸軍では、後にイスラエル製のM111 APFSDS弾を採用しました。

副武装としては、車体前方に7.62mm機関銃2丁が装備され、車長用潜望鏡の脇にもう1丁の機関銃が搭載されています。砲手と車長には、それぞれ観測潜望鏡と二軸安定化された双眼照準器が装備されています。砲手用照準器にはレーザー測遠機が組み込まれています。車長は、周囲を全周視認できるキューポラを使用します。

主砲は車体に固定されているため、照準は車体ごと旋回させて行います。側面攻撃の場合も車体を回転させる必要があり、超信地旋回の高速性が重要となります。油気圧姿勢制御により、-10度から+12度の範囲で砲の俯仰が可能です。この機構は、待ち伏せ戦術に適応した射撃を可能にします。

乗員構成

Strv.103は砲塔を持たないため、全乗員が車体内に配置されます。車長は右側、操縦士は左側、通信士は操縦士の後ろに配置されます。操縦士は砲手を兼任し、車長も操縦と戦闘を行うことが可能です。通常は操縦士が単独で担当し、車長は指揮に専念します。

後退時にも戦闘能力を維持するため、後進時も前進時と同じ速度で走行できます。車体後方にも操縦装置があり、通信士が副操縦士として後進時の操縦を担当します。また、自動装填装置故障時には、通信士が装填手を兼任します。

発展と改修

初期生産型に加えて追加生産が行われ、追加生産型からは排土板と水上浮航用の防水スクリーンが標準装備となりました。初期生産型はA型、追加生産型はB型と呼ばれます。B型登場以降、A型にも排土板と水上浮航装置が追加装備されました。

1983年からはC型の開発が行われ、既存の車両への改修が進められました。C型は、レーザー測遠機、射撃統制コンピュータ、ディーゼルエンジン、変速機などを新型のものに換装し、増加燃料タンク兼用のサイドスカートを装着しました。A型とB型は全てC型に改修されています。

C型をさらに改良したD型も開発され評価運用されましたが、制式採用には至りませんでした。

評価

Strv.103は、独自の目標を独自の構造で実現した戦車でしたが、砲塔を持たないため行進間射撃が不可能、車高が低いため周辺視察能力が不足、路外走行性能が低いなどの問題がありました。また、複雑な構造であるにもかかわらず乗員が3名しかいないため、野戦整備の負担が大きいという問題もありました。

後継としてStrv.2000の開発が行われましたが、コスト面から中止されました。その後、スウェーデン陸軍はStrv.103の後継としてドイツ製のStrv.121およびStrv.122を導入し、Strv.103は全車が退役しました。

各形式および派生型

Strv.103A: 最初の量産型。
Strv.103B: 追加生産型。排土板と水上浮航装置を装備。
Strv.103C: 照準装置、射撃管制装置、エンジン、変速機を換装した近代化改修型。
Strv.103D: C型の暗視装置などを改良した能力向上型。試作のみ。
VEAK 40: Strv.103のコンポーネントを流用した自走式対空砲。試作のみ。

登場作品

ゲーム: World of Tanks、WarThunder。

備考

田宮模型が「Sバルカン戦車」としてプラモデルを販売していた。

脚注

関連項目

戦車
戦車一覧

外部リンク

Society S-tank - Föreningen stridsvagn S Official site （スウェーデン語）
* Society S-tank- Welcome to The S tank association Official site （英語）

もう一度検索