THE BEST / 南沙織 -1978年11月版-

『THE BEST / 南沙織』（1978年版）

1978年11月1日、CBSソニーよりリリースされた『THE BEST / 南沙織』は、歌手・南沙織にとって4作目にあたるベスト・アルバムとして発表されました。本作はボリュームのある2枚組で構成されており、同年10月7日に開催された「さよならコンサート」を終え、第一線を退いた彼女にとって、活動休止後最初に世に出た作品という点で、大きな注目を集めました。

このアルバムのリリースは、その後の彼女の作品リリース戦略にも影響を与えました。本作が好評を博したことを受け、CBSソニーは以降、「THE BEST / 南沙織」という同名のタイトルを冠したベスト盤を、ほぼ毎年リリースしていくことになります。これは、引退後も衰えない南沙織の人気に応える形で、彼女の豊富なカタログを活用するための戦略でした。数多く存在する南沙織のベストアルバムの中でも、本作はそのシリーズの先駆けとなった記念碑的な作品と言えるでしょう。

アルバムは全2枚、合計27曲を収録。彼女のデビューから引退までの主要なシングルヒットを中心に、アルバムからの人気曲も厳選して収められています。特に、南沙織の音楽世界を語る上で欠かせない、有馬三恵子作詞・筒美京平作曲のゴールデンコンビによる「17才」「潮風のメロディ」「傷つく世代」「色づく街」「夏の感情」「バラのかげり」「ひとかけらの純情」「早春の港」「哀愁のページ」「純潔」といった初期・中期の代表曲は多数収録されています。また、後期の代表曲である尾崎亜美作詞・作曲の「春の予感‐I've been mellow‐」や、松本隆作詞による「哀しい妖精」「愛なき世代」、荒井由実作詞の「青春に恥じないように」、ジャニス・イアンによる「哀しい妖精」など、豪華な作家陣による楽曲も幅広く網羅されています。これらの楽曲を通じて、デビュー当時のフレッシュな魅力から、次第に表現力を増していく過程、そして円熟期の落ち着いた歌声まで、南沙織の多様な音楽性を辿ることができます。

アルバム単体としては、CD時代に入ってからの再発売は確認されていません。しかし、本作に収録されている全ての楽曲は、後の様々なベストアルバム、CD-BOX、企画盤といった形で既にCD化されています。そのため、レコード盤としての本作は現在では入手が難しいかもしれませんが、収録された全ての音源は他の媒体を通じて、現在でも容易に聴くことが可能です。

『THE BEST / 南沙織』（1978年版）は、南沙織が歌手活動を休止した直後に発表された初期の重要なベストアルバムです。彼女の代表曲を網羅し、その後のベスト盤シリーズの基礎を築いた作品として、南沙織のキャリアと日本のポップス史において、特筆すべき存在感を示しています。彼女の軌跡を振り返る上で、欠かせない一枚と言えるでしょう。

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