TOI-1670

TOI-1670

TOI-1670は、地球からおよそ165.7パーセク（約540光年）の距離に位置する恒星です。TESS（トランジット系外惑星探索衛星）による継続的な観測によって、この恒星の周囲を複数個の太陽系外惑星が周回していることが明らかになりました。現在、少なくとも2つの惑星が確定しており、さらに1つの惑星が存在する可能性も指摘されています。

恒星の特徴

TOI-1670は、スペクトル分類がF7の主系列星に分類されます。これは、太陽（G2型）よりもやや表面温度が高く、質量が大きいタイプの恒星であることを示しています。特筆すべき点として、この恒星は比較的活動が少なく、穏やかな性質を持つことが観測から示されています。TESSが観測した見かけの明るさ（等級）は約9.5等です。

恒星名にある「TOI」は、TESS Object of Interestの略称であり、TESSの観測によって惑星候補の兆候が見つかった天体に与えられる識別子です。これらのTOIは、詳細な観測によって惑星の存在を確定させるためのフォローアップ研究の対象となります。TOI-1670には、他に「TIC 441739020」や「2MASS J17160415+7209402」といった別の名称も存在します。「TIC」はTESS Input Catalogの略で、TESSの観測対象となった天体のリストを指します。

惑星系の発見

TOI-1670の惑星系は、TESS衛星が惑星による恒星の手前通過（トランジット）を検出する手法を用いて発見されました。最初の発見は2020年で、TESSのデータから2つの惑星候補が特定され、「TOI-1670.01」と「TOI-1670.02」としてTESS Object of Interestカタログに追加されました。これらの候補は、それぞれ約41日と約11日の周期で恒星を公転していると推定されました。

その後の詳しい観測と分析を経て、これらの惑星候補は2022年に系外惑星として正式に確認されました。公転周期が約11日の候補「TOI-1670.02」はTOI-1670 b、公転周期が約41日の候補「TOI-1670.01」はTOI-1670 cと命名されました。これら2つの惑星の発見を報告する研究論文は、2022年3月8日に科学論文のプレプリントサーバーであるarXivで公開されました。

さらに、この2つの惑星の発見とは別に、2022年2月には約123日というより長い公転周期を持つ3つ目の惑星候補「TOI-1670.03」が存在する可能性も示唆されています。

個々の惑星の詳細

TOI-1670 b

TOI-1670 bは、ミニ・ネプチューンに分類されるタイプの惑星です。これは、地球より大きく海王星より小さいガスを多く含む惑星を指します。恒星に近い約11日の短い周期で公転しています。特筆すべきは、その軌道が非常に歪んでいることです。軌道離心率が0.59という高い値を示しており、これは円軌道から大きく外れた楕円軌道を描いていることを意味します。フォローアップ観測には、ハーラン・J・スミス望遠鏡やHARPS-N分光器などが用いられましたが、TOI-1670 bはドップラー分光法では検出されにくい性質を持っています。

TOI-1670 c

TOI-1670 cは、木星型惑星に分類される巨大ガス惑星です。恒星からやや離れた約41日の周期で公転しています。TOI-1670 bとは対照的に、TOI-1670 cの軌道は比較的円に近く、軌道離心率は小さい値を示しています。

惑星候補 TOI-1670.03

TOI-1670.03は、2022年3月の時点ではまだ確定には至っていないものの、存在する可能性が示されている惑星候補です。もし存在が確認されれば、その半径は地球の約3.1倍になると推定されています。公転周期は約123日と、確定している2つの惑星よりも外側を回っていると考えられます。

特異な配置と類似系

TOI-1670系は、内側に小型の惑星（b）、その外側に巨大な惑星（c）が位置するという特徴的な配置を持っています。このような内側小型・外側巨大という構成を持つ他の惑星系はいくつか知られており、例えばケプラー30系、ケプラー56系、ケプラー88系、ケプラー89系、ケプラー117系、ケプラー289系、グリーゼ876系、TOI-216系、HIP 57274系、K2-290系などが挙げられます。このような配置がどのように形成されたのかは、惑星系の進化を理解する上で興味深い研究対象となっています。今後、TOI-1670系のさらなる詳しい観測が進められることで、その起源や特性がより深く解明されることが期待されます。

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