UF-XS

新明和 UF-XS 実験飛行艇

UF-XSは、日本の航空機メーカーである新明和工業が、アメリカから提供されたUF-1救難飛行艇をベースに開発した実験用飛行艇です。この機体は、第二次世界大戦後の日本の航空技術再興において、重要な役割を果たしました。

開発の背景

第二次世界大戦終結後、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ/SCAP）によって、日本の航空機の製造、研究、運行は一時的に禁止されました。しかし、その後の航空技術の急速な発展に日本は乗り遅れていました。

そんな中、アメリカで日本の二式大艇の飛行実験が行われ、その優れた性能が明らかになりました。これにより、アメリカの航空機メーカーであるグラマン社とマーチン社は、二式大艇を製造した川西航空機の流れを汲む新明和興業に対し、自社の飛行艇の改造実験を依頼するに至りました。

一方、新明和興業では、かつての川西航空機の技術者であった菊原静男を中心に、1953年から飛行艇の構想が練られていました。1957年には防衛庁に対し、実験用飛行艇の開発を提案。この提案を受けて、防衛庁でも新型飛行艇の対潜哨戒機としての運用が検討されました。

菊原が開発した模型飛行艇には、独自の波消し装置が搭載されており、グラマンとマーチンからも高い評価を得ていました。この状況を好機と捉えた新明和は、日本独自の高性能飛行艇の開発に乗り出しました。

グラマンは、将来的に菊原の技術を自社に取り込むことを視野に入れ、アメリカ海軍向けのUF-1救難飛行艇を提供しました。新明和はこのUF-1をベースに、約7億円の費用を投じて大幅な改造を実施。艇底を自社開発の試作品に変更し、T字型尾翼を採用、主翼を延長してエンジンを4基に増設した実験飛行艇UF-XSが誕生しました。

機体の特徴

UF-XSは、UF-1をベースとしていますが、機体下面（艇底）は完全に新しく設計されました。波消し装置は魚のエラを参考にしており、艇首から取り込んだ水を艇体中央部から排水することで、着水時の波を抑制します。この波消し装置は、艇首が水圧で浮き上がり、離水を容易にする効果もありました。

また、垂直尾翼と水平尾翼はT字型尾翼に変更され、艇尾部には水中安定板が追加されました。機体上部にはBLC（境界層制御）用のガスタービンエンジンが2基搭載され、主翼には前縁スラットと後縁吹き出し（BLC）フラップが装備されました。これにより、短距離離着陸（STOL）性能の向上が図られました。エンジンは、UF-2の双発（プロペラ3翅）に加え、SNJ練習機用のエンジン2基（プロペラ2翅）を追加した4発構成となり、主翼下のフロートも新明和製のものが採用されました。

機体色は黒をベースにオレンジのアクセントが施され、試験用の白い区画線が多数引かれていました。この特徴的な塗装は現在復元されていますが、かつて三保に展示されていた際は、後のPS-1の塗装に類似した、実験機としての印象の薄いものになっていました。機体の大きさは、PS-1の4分の3程度となっています。

運用とその後

UF-XSは、1962年12月20日に初飛行に成功し、1963年3月30日から大村航空隊に配備されました。1966年まで、波消し装置、自動安定装置、高揚力装置などの実験、試験、調査が行われ、貴重な基礎データが取得されました。このデータは、後の海上自衛隊PS-1対潜哨戒機、US-1救難飛行艇、US-2救難飛行艇の開発に大きく貢献しました。

その高性能は、アメリカやイギリスからも注目を集め、ニュージーランド、オーストラリア、インドネシアなどからは商談も寄せられました。この成功がきっかけとなり、新明和工業は200～300人乗りの大型旅客飛行艇PX-Sを企画するに至りました。

UF-XSは1967年10月16日に用途廃止となり、その後、下総基地、東海大学航空宇宙科学博物館（三保）を経て、現在は岐阜かかみがはら航空宇宙博物館にUS-1と共に展示されています。2014年には、飛行艇開発の歴史を伝える航空遺産として、日本航空協会より「重要航空遺産」に認定されました。

スペック

乗員: 7名
全長: 23.1m
全幅: 24.4m
全高: 7.8m
空虚重量: 12,484kg
エンジン:
P&W R-1340（空冷星形9気筒 447kW、600馬力）×2
ライト R-1820（空冷星形9気筒 1,063kW、1,425馬力）×2
最大速度: 333 km/h

参考文献

前間孝則『日本はなぜ旅客機を作れないのか』 草思社 ISBN 4-7942-1165-1
世界の傑作機 139「新明和 PS-1」 文林堂 ISBN 978-4-89319-188-5

関連項目

日本製航空機の一覧

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