WANDS BEST 〜HISTORICAL BEST ALBUM〜

WANDS BEST 〜HISTORICAL BEST ALBUM〜：3つの時代の軌跡と新たな始まり

1997年11月6日、B-Gram RECORDSより発売されたWANDSのベストアルバム『WANDS BEST 〜HISTORICAL BEST ALBUM〜』は、バンドの歴史を凝縮した、重要な作品と言えるでしょう。このアルバムは、3期目のメンバー体制移行直後という、バンドにとって転換期にあたる時期にリリースされました。そして、WANDSにとって最後のオリコンアルバムチャート1位獲得作品という記録も残しています。

選曲は、主にシングル曲を中心に構成されています。しかし、7thシングル「Jumpin' Jack Boy」は収録されていません。また、2期時代のアルバム『PIECE OF MY SOUL』に収録されていた「MILLION MILES AWAY」は、3期メンバーによって新たにレコーディングされており、このバージョンは本作でしか聴くことができません。この大胆なアレンジは、オリジナルバージョンとは異なる魅力を生み出しています。オリジナルは生演奏のドラムとベースだったのに対し、リテイク版では打ち込みが採用されている点が大きな違いです。さらに、このバージョンでは上杉昇のコーラスがそのまま使用されており、上杉と和久井の両ボーカルによる唯一の楽曲となっています。その後、上原大史がボーカルを務めるバージョンが制作され、WANDSに携わった3人のボーカルによるレコーディングという、貴重な記録も残されました。

興味深いのは、このアルバムリリースと同時に、脱退したボーカルの上杉昇とギターの柴崎浩による新バンド、al.ni.coの結成が『朝日新聞』の一面広告で発表されたことです。このベストアルバムが、一つの時代の終わりと、新たな始まりを告げる象徴的な作品であったことを示しています。上杉自身も、このアルバムのリリースについて驚きを表明しており、その複雑な心境がうかがえます。彼は以前リリースされた『SINGLES COLLECTION+6』ですでにベスト盤は完成していると考えていたからです。

サウンド面では、いくつかの楽曲にB'zなどのエンジニアリングで知られる野村昌之氏によるリミックスが施されています。「寂しさは秋の色」、「もっと強く抱きしめたなら」、「時の扉」、「愛を語るより口づけをかわそう」、「Same Side」、「WORST CRIME〜About a rock star who was a swindler〜」の6曲が対象です。リミックスによって、原曲とは異なるサウンドスケープが実現されています。例えば「もっと強く抱きしめたなら」では、間奏やエンディングのギターパートが完全にカットされているなど、アレンジの幅広さが特徴です。また、これらのリミックスバージョンは本作以降のベストアルバムでは使用されず、オリジナルミックスのリマスタリングが採用されています。

音楽雑誌『CDジャーナル』は、このアルバムについて肯定的な評価を与えています。メンバーチェンジによってサウンドが進化を遂げてきたWANDSの歴史が凝縮されており、ハードなロック色が作品ごとに強くなっていく様が感じられると評しています。まさに、WANDSの変遷を体感できる作品と言えるでしょう。

『WANDS BEST 〜HISTORICAL BEST ALBUM〜』は、単なるベスト盤以上の意味を持つ作品です。3期にわたるWANDSの歴史を辿り、バンドの変遷と、新たな出発を象徴する、まさに歴史的な一枚と言えるでしょう。その複雑な背景と、音楽的価値、そして新たな始まりを告げる象徴性。これらの要素が合わさって、このアルバムはWANDSの歴史において特別な位置を占めているのです。

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