WM-20

WM20シリーズの射撃指揮装置

WM20シリーズは、オランダのタレス・ネーデルラント社（旧シグナール）が開発した艦載用射撃指揮装置（FCS）です。このシリーズは、1950年代に登場した初代のFCSの進化版として位置づけられ、軍艦の火力を支える重要な技術の一つとされています。

来歴

1950年代、シグナール社は戦後の初代射撃指揮装置として、ボフォース152mm砲、57mm砲、40mm機関砲用の装置を開発しました。これらはそれぞれSバンドとXバンドを利用して動作し、高出力の送信機を搭載。特にM4シリーズはXバンドを用い、特徴的なパラボラアンテナで高精度な火力支援を実現しました。次に開発されたM40シリーズは、さらなる性能向上を果たし、安定化されたアンテナを用いて多様な空中および水上目標の追尾を可能にしました。

そして、1950年代後半には、これらの後継機であるWM20シリーズが誕生し、1961年にドイツ海軍ツォーベル級魚雷艇に初めて装備されました。このシリーズでは、従来の固定プログラムからプログラム変更可能なコンピュータの使用へと進化を遂げており、包括的な火力管理が行えるようになりました。ノルウェー海軍は、1970年にストルム級ミサイル艇でWM26を採用し、WM20シリーズの運用を開始しました。

設計と特徴

M20/WM20シリーズのレーダー送信機は、M40シリーズと同系統のものが用いられ、送信尖頭電力は標準180キロワットと設定されていましたが、WM25では1MWの交差電力増幅管を利用して200キロワットに増強されました。特筆すべきは、追尾レーダーと送信機を共用する捕捉レーダーの導入で、これによりコスト削減と効率的な運用が実現しました。

この捕捉レーダーは、卵型のレドームに収められ、空中目標と水上目標をそれぞれ追尾できる設計になっています。捕捉用アンテナは毎分60回の旋回速度を持ち、期待される性能は水平距離で16–17海里、または21000フィートまでの目標の探知が可能です。

操作と能力

M20シリーズにはいくつかのバリエーションがあり、各モデルにより異なる追尾および交戦能力があります。

• - M20: 空中および水上目標の追尾が可能で、1つの魚雷を制御しつつ、砲熕兵器で攻撃を行います。
• - WM20: M20の機能を拡張し、さらに1つの水上目標との交戦が可能、そのためのオペレーター数は3〜4名と設定されています。
• - M22: フリゲート級の艦への搭載を想定し、砲熕兵器の制御能力を持っていますが、追尾の上限が設けられています。
• - WM25: フリゲートや駆逐艦向けに設計され、艦対空ミサイルの誘導機能が搭載されています。
• - WM26: 高速戦闘艇向けに最適化され、特異なGW01レーダーを使用し、敵機の早期探知が可能です。

これらの装置は、艦艇に搭載されることで海上作戦の効果を高め、迅速かつ正確な火力支援を提供します。特に連携機能が充実しているため、コンバットシナリオでの戦術的な優位をもたらすことが期待されます。

アメリカ合衆国への展開

1964年、アメリカ仕様のモデルであるMk.87は、フォード・インストゥルメンツ社によって製造され、アッシュヴィル級砲艇での採用が始まりました。その後、更なる改良が行われ、様々なバリエーションが展開されていきますが、性能向上のためにMk.92が開発されました。この海外への展開は、WM20シリーズの信頼性と技術力を証明する結果とも言えます。

まとめ

WM20シリーズは、艦艇の射撃指揮能力を飛躍的に向上させるものであり、各国の海軍において重要な役割を担っています。その先進的なレーダーシステムと多様なモデル展開は、戦術的な柔軟性を提供し、未来の海上戦力の一部として機能しています。

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