イロワケイルカ

イロワケイルカ

イロワケイルカ（学名：Cephalorhynchus commersonii）は、クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科イロワケイルカ属に分類される海棲哺乳類です。その最大の特徴は、ジャイアントパンダを思わせるような鮮やかな白黒の模様であり、「パンダイルカ」という別名でも広く知られています。種小名および英名は、フランスの生物学者フィリベール・コメルソンに由来しています。

形態

このイルカの最も顕著な特徴は、体の色分けです。頭部、胸びれ、背びれ、そして尾びれは黒く、喉から胴体にかけての大部分は白色をしており、この二色の境界は非常にはっきりと分かれています。体型はややずんぐりとしており、最大で約1.5メートルに成長します。外見上はネズミイルカ科の種に似ている部分がありますが、後述するその行動はマイルカ科の他のイルカに見られる特徴を示しています。

額はゆるやかに傾斜しており、吻（口吻）の突出はほとんど見られません。胴体も丸みを帯びたシルエットをしています。胸びれの先端は丸い形をしており、背びれは頭側が直線的で尾側がわずかに凹んでいますが、先端が丸く、鎌のような形状ではありません。幅が広く力強い尾びれの中央には、明確な切れ込みが入っています。

分布と生息地

イロワケイルカの生息域は、地理的に大きく隔てられた二つの海域に限定されています。一つは南アメリカ大陸の南端にあたるフエゴ島やフォークランド諸島、アルゼンチンのマゼラン海峡周辺の海域です。もう一つは、そこから東へ約8,000キロメートル離れたインド洋南部のケルゲレン諸島周辺の海域です。これらの生息域では、比較的浅い沿岸域を好んで生活しています。

全生息数は正確には把握されていませんが、マゼラン海峡など一部の地域では比較的よく見られると報告されています。

生態と行動

イロワケイルカは非常に活動的でエネルギッシュなイルカとして知られています。海面を高速で泳ぎ回ったり、頻繁にジャンプしたりする様子が観察されます。特に海岸近くでは、波に乗るような動きや回転を見せることもあります。また、移動中の船に興味を示し、並走したり追いかけたりすることもあります。

食性は主に肉食で、近海や遠洋に生息する魚類やイカを捕食します。南米の一部の個体群では、甲殻類を食べることも確認されています。

繁殖については、雌雄ともに生後6年から9年で性的に成熟します。繁殖期は一般的に春から夏にかけて訪れ、妊娠期間は約11ヶ月から12ヶ月とされています。寿命についてはまだ明確なデータがありませんが、飼育下での最長記録は約21年です。

保護状況

イロワケイルカは、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストにおいて、2017年に「低懸念」（LC：Least Concern）に分類されました。それ以前は情報が不足しているとして「情報不足」（DD：Data Deficient）と評価されていました。

国際的な取引に関しては、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約（ワシントン条約）の附属書IIに掲載されています。これにより、生体や死体、加工品などの商業的な国際取引を行う際には、輸出国の許可が必要となります。また、アルゼンチンでは本種を含む野生動物の生体の商業輸出は原則として禁止されています。

人間活動による脅威としては、沿岸部に近づいた個体が刺し網などの漁具に絡まってしまう混獲が挙げられます。過去には、1970年代から1980年代にかけてアルゼンチンやチリでカニ漁の餌として利用された事例もありましたが、近年ではそのような利用は減少傾向にあります。

日本での飼育

日本国内においては、2020年9月現在、仙台うみの杜水族館と鳥羽水族館でイロワケイルカが飼育・展示されています。過去には、海遊館、アドベンチャーワールド、サンシャイン水族館、のとじま臨海公園水族館、マリンピア松島水族館、横浜・八景島シーパラダイス、宮島水族館など、いくつかの水族館でも飼育されていた時期があります。

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