カーレッド

カーレッド（1943年-1968年）は、イギリスで生まれたサラブレッド競走馬にして、アメリカでその名を刻んだ種牡馬である。その生涯は、華々しい勝利と惜しまれる引退、そして種牡馬としての驚異的な成功、という三部作で彩られている。

華麗なるデビューと挫折

名門アーガー・ハーン3世の生産により、1943年に誕生したカーレッドは、鮮やかな鹿毛の体毛を持ち、白斑のない美しい馬体を持っていた。父は小柄な体格で知られた名種牡馬ハイペリオン、母はステークス競走を制した実績を持つエクレア。恵まれた血統を受け継いだカーレッドは、フランク・バトラー厩舎で競走馬としてのキャリアをスタートさせた。
2歳時は3戦全勝。コヴェントリーステークスやミドルパークステークスといった重要な競走を制し、その才能をいかんなく発揮した。しかし、フリーハンデキャップではやや低評価に終わり、その潜在能力の全てが認められたわけではなかった。
3歳シーズン、クラシック路線に挑むカーレッドだったが、喘鳴症（のど鳴り）に悩まされるようになる。2000ギニーでは2着と健闘するも、ダービーステークスでは着外と振るわず、クラシック制覇の夢は叶わなかった。その後も競走生活は続けたものの、喘鳴症の影響が大きく、若くして競走馬としてのキャリアを終えることとなる。

アメリカでの第二の輝き

引退後、カーレッドはアイルランドで種牡馬となった後、アメリカ合衆国の馬主レックス・エリズワースに高額で買い取られ、渡米する。驚くべきことに、アメリカでは競走馬として再び走り始める。5歳時、サンタアニタパーク競馬場で勝利を収めるなど、第二の競走馬人生を歩み始めたのだ。繁殖シーズンには種牡馬として活躍し、競走馬と種牡馬という二足のわらじを履いた日々を送っていたが、12月の競走で最下位に終わったのを最後に再び引退。競走馬としてのキャリアに完全な幕を閉じた。通算成績は12戦6勝2着1回。

種牡馬としての成功

再び引退したカーレッドは、種牡馬として真価を発揮する。アイルランド時代に産んだ産駒は、さほど目立った活躍はなかったが、アメリカで産まれた産駒たちは、その能力の高さを証明した。
中でも最も有名なのが、1955年のケンタッキーダービーを制覇し、生涯で25戦19勝という偉大な戦績を残したスワップスである。スワップスはアメリカ殿堂馬にも選出され、種牡馬としてもケンタッキーダービー親子制覇を果たしたシャトーゲイなど、数々の名馬を輩出した。他にも、ビッグノイズ、コーレスポンデント、ターラング、アグリッター、リンモルド、フィジシャン、ニューポリシーなど、多くのステークス競走勝ち馬を輩出し、カーレッドはアメリカ競馬界に大きな足跡を残した。1968年、カーレッドは生涯を終えたが、生涯で61頭ものステークス競走勝ち馬を輩出した。その功績を称え、1990年にはハリウッドパーク競馬場に「カーレッドステークス」が創設された。

血統の継承と未来

カーレッドの血統は、スワップス以外にも多くの成功した種牡馬を生み出した。「カーレッド系」と呼ばれる系統を形成し、その影響は現代競馬にも及んでいる。ヒラリーは種牡馬としてG1馬を輩出し、コーレスポンデントからはベルモントステークス優勝馬シャーラックが誕生した。牝馬産駒からも、アメリカ最優秀繁殖牝馬に選出されたトラックメダルなど、優れた繁殖牝馬が数多く輩出された。
日本にもスワップスの産駒が輸入され、活躍馬を生み出した。しかし、父系は現在ではやや勢いを失っており、かつてのような活躍馬を見ることは少ない。

カーレッドは、短い競走馬生活、そしてアメリカでの種牡馬としての成功という、ドラマチックな生涯を送ったサラブレッドである。その血統は、競馬史に indelible な痕跡を残している。アメリカ競馬界に大きな貢献を果たした、偉大な種牡馬として、その名は永遠に語り継がれていくだろう。

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