ガズナ朝

ガズナ朝：アフガニスタンからインドへのイスラムの波

ガズナ朝は、955年から1187年まで、現在のアフガニスタンを中心に、インド北西部、ホラーサーン地方を支配したイスラム王朝です。首都ガズナは、その繁栄ぶりから、後世まで語り継がれることとなります。

創設と初期の拡大

ガズナ朝の起源は、サーマーン朝に仕えたテュルク系マムルーク（奴隷兵）出身のアルプテギーンに遡ります。アルプテギーンは、サーマーン朝の支配者アブド・アル＝マリク1世の死後、955年にガズナで独立勢力を築きました。この時点では、まだサーマーン朝に対する半独立状態でしたが、アルプテギーンの後継者たちは着実に勢力を拡大していきます。

特に、5代目の支配者サブク・ティギーン（在位977年 - 997年）は、ガズナ政権の基盤を固め、アフガニスタン全土を支配下に収め、南方のパンジャーブ地方にも進出しました。ここで初めて、ガズナ朝は世襲制に移行します。そのため、しばしばサブク・ティギーンがガズナ朝の初代君主とされます。

マフムードの時代：最盛期とインド遠征

ガズナ朝の全盛期は、サブク・ティギーンの子、マフムード（在位998年 - 1030年）の治世でした。マフムードは、サーマーン朝を滅ぼし、その勢力をホラーサーンにまで拡大します。さらに、彼はインドへの遠征を繰り返し、北インドやグジャラート地方を征服しました。17回にわたった遠征は、インドにおけるイスラム勢力の進出に大きな影響を与えました。

マフムードのインド遠征は、イスラム教徒によるインド侵略としては初めての大規模なものだった点で歴史的に重要です。その動機はイスラム教の原理に基づいていましたが、イスラムへの改宗を強制するのではなく、徹底的な略奪と厳しい支配が特徴でした。1018年には、カナウジのプラティハーラ朝を滅ぼすなど、インドへの勢力を大幅に拡大させました。

マフムードの支配下では、ガズナ朝の版図は中央アジアのサマルカンドから、西はクルディスタン、カスピ海沿岸、東はガンジス川流域まで広がり、その権威は広く知れ渡りました。ガズナ朝の軍隊の中核はテュルク系マムルークであり、一方、行政はペルシア人官僚が担ったため、ペルシア語は公用語となりました。

マフムードは文人たちの庇護者としても知られ、有名な詩人フィルダウスィーもその恩恵を受けました。ガズナは繁栄を極め、文化の中心地として栄華を誇り、マフムードの功績はガズナ朝の歴史に深く刻み込まれています。しかし、マフムードの死後、広大な領土を維持することが困難になりました。

セルジューク朝の台頭と衰退

マフムードの後継者たちは、急速に衰え始めます。1040年、息子のマスウード1世は新興のセルジューク朝とのダンダーナカーンの戦いで敗北し、ホラーサーンなど西方の領土を失いました。その後、一時的に勢力を回復する時期もありましたが、かつての栄光を取り戻すことはなく、12世紀前半にはセルジューク朝のサンジャルに臣従するまで衰えました。

滅亡

1150年には、ガズナ朝の宗主権下にあったゴール朝によって首都ガズナが陥落し、ガズナ朝の支配は大きく揺らぎました。その後、ガズナ朝の残存勢力はインドのラホールに逃れましたが、1186年にゴール朝によって完全に滅ぼされました。

まとめ

ガズナ朝は、テュルク系マムルーク出身の支配者たちによって築かれ、マフムードの時代に最盛期を迎えました。インドへの遠征はイスラム勢力の進出において重要な役割を果たしましたが、広大な領土とセルジューク朝の台頭という二つの大きな試練を乗り越えることができず、最後はゴール朝に滅ぼされました。その短いながらも華々しい歴史は、今もなお人々の記憶に残っています。

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