ネバダ級戦艦

ネバダ級戦艦：アメリカ海軍の革新を象徴する戦艦

ネバダ級戦艦は、アメリカ海軍が建造した戦艦の艦級であり、「ネバダ」と「オクラホマ」の2隻が建造されました。このクラスは、アメリカ海軍において初めて三連装砲塔を採用し、また、集中防御方式を採用した最初の艦級としても知られています。その革新的な設計思想は、後のアメリカ海軍の戦艦設計に大きな影響を与えました。

概要

1911年度のアメリカ海軍計画において、2隻の戦艦建造が承認されました。当初は14インチ砲12門を搭載した強力な戦艦が計画されていましたが、予算の制約からニューヨーク級と同程度の排水量と火力で、新たな武装と装甲配置を備えたネバダ級として建造されました。ネバダ級は、重油を主燃料とする最初のアメリカ戦艦であり、同時に最後の2軸推進艦でもありました。推進機関の研究のため、「ネバダ」には蒸気タービン、「オクラホマ」には複式機関が搭載され、その比較が行われました。

ネバダ級は、アメリカ海軍の「標準型戦艦」コンセプトの出発点となりました。このコンセプトは、異なるクラスの戦艦に共通の戦術的特徴を持たせ、艦隊運用を円滑にすることを目的としていました。標準型戦艦は、長距離射撃能力、21ノットの速力、8,000海里の航続距離、集中防御方式、そしてダメージコントロールの改善を特徴としていました。このコンセプトは、ネバダ級以降のペンシルベニア級、テネシー級、ニューメキシコ級、コロラド級へと継承されました。しかし、ノースカロライナ級以降は、空母機動部隊の護衛も可能な高速戦艦へとシフトし、このコンセプトは廃止されました。

艦形

ネバダ級の船体は、武装増加に伴う居住空間の確保のため、艦首甲板に船首楼を追加した短船首楼型となりました。艦首には浮力確保用の膨らみが設けられ、1914年型の35.6cm砲が、1番砲塔は三連装、2番砲塔は連装で配置されました。艦橋構造は、司令塔と操舵艦橋、そして特徴的な籠状の前部マストで構成されていました。船体中央部には1本の煙突が立ち、その周囲には艦載艇が配置されていました。後部には籠状のマストと、連装砲塔の3番主砲塔、そして三連装砲塔の4番主砲塔が背負い式で配置されました。

副砲の12.7cm速射砲はケースメイト配置で舷側に多数配置されましたが、一部は波浪の侵入により使用不能となり撤去されました。また、航空爆撃の脅威に対応するため、7.62cm高角砲が追加されました。

海軍休日時代

1920年代後半には、ワシントン軍縮条約の範囲内で近代化改装が行われました。籠状マストは三脚式に更新され、艦橋は大型化されました。武装面では、副砲が移設され、水上機運用のためのカタパルトが設置されました。また、対水雷防御を強化するためにバルジが装着され、艦幅が増加しました。

第二次世界大戦時

第二次世界大戦開戦後、「ネバダ」は復旧工事を受けました。艦橋構造は更に大型化され、前部マストは軽量な三脚式に変更されました。煙突は、煤煙が前部マストに逆流するのを防ぐため、形状が変更されました。後部マストはレーダーアンテナを搭載した小型の三脚マストとなり、射撃レーダーも最新のものが搭載されました。武装面では、主砲が改良され、対空火器が大幅に増強されました。これにより、「ネバダ」の満載排水量は35,400トンに達しました。

兵装

主砲

ネバダ級は、1914年型35.6cm砲を搭載していました。この砲は、635kgの砲弾を最大射程21,030mまで届かせることができ、装甲貫通力も優れていました。三連装砲塔2基と連装砲塔2基を搭載することで、砲塔数を減らし、防御装甲に余裕を持たせることができました。

副砲、その他武装

副砲には、12.7cm速射砲が採用されました。射程12,850m、毎分8～9発の発射速度を誇りました。また、53.3cm水中魚雷発射管も装備されました。

就役後の武装変換

就役後、対空火器として76.2mm高角砲が搭載され、後に7.6cm高角砲へと換装されました。また、12.7mm機銃も追加されました。

最後の大改装

1942年の復旧工事で、主砲は「1933年型35.6cm砲」に更新され、射程と貫通力が大幅に向上しました。副砲は、12.7cm両用砲に換装され、対空火器は、ボフォース40mm機関砲やエリコン20mm機関砲が追加されました。

機関

ネバダ級の機関は、比較研究のために姉妹艦で異なる形式が採用されました。「ネバダ」はカーチス式直結タービン、「オクラホマ」は三段膨脹式レシプロ機関を搭載しました。公試では、「ネバダ」が最大出力26,500馬力で速力20.9ノット、「オクラホマ」が24,800馬力で速力20.5ノットを記録しました。この結果、タービン機関が優れていると判断され、以降のアメリカ戦艦はタービン機関を採用することになりました。

防御

ネバダ級は、集中防御方式を採用し、重要区画のみを重点的に防御しました。舷側装甲は最厚部で343mm、水平甲板は複層構造とされました。また、主砲塔は重装甲で防御されていました。第二次大戦時の復旧工事では、甲板防御と水雷防御が強化されました。

艦歴

ネバダ級は、第一次世界大戦では大西洋で活動し、戦後は近代化改装を受けました。第二次世界大戦では、真珠湾攻撃で損害を受けましたが、「ネバダ」は復旧し、ヨーロッパと太平洋の両戦線で活躍しました。「ネバダ」は戦後、原爆実験の標的艦として沈没しました。

まとめ

ネバダ級戦艦は、アメリカ海軍の戦艦設計における重要な転換点となった艦級です。三連装砲塔、集中防御方式、そして標準型戦艦コンセプトの先駆けとして、その革新的な設計思想は、後のアメリカ戦艦に大きな影響を与えました。その活躍は、第一次世界大戦から第二次世界大戦まで及び、アメリカ海軍の歴史にその名を刻んでいます。

参考資料

「世界の艦船 増刊第22集　近代戦艦史」（海人社）
「世界の艦船 増刊第83集　近代戦艦史」（海人社）
「世界の艦船 増刊第28集　アメリカ戦艦史」（海人社）
「Conway All The World's Fightingships 1906–1921」（Conway）
「Conway All The World's Fightingships 1922-1946」（Conway）
「Jane's Fighting Ships Of World War I」（Jane）

外部リンク

Nevada class battleships: 本級の説明（英語）
United States of America 14"/45 (36.5 cm) Mark 8、9、10、12
* United States of America 14"/45 (36.5 cm) Mark 1、2、3、5

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