丙吉

丙吉（へい きつ）の生涯と業績

丙吉、字は少卿は、紀元前55年に亡くなるまでの間、前漢時代の重要な政治家であり、魯国出身です。彼は若い頃に法律を学び、その後、牢獄の役人としてキャリアをスタートさせました。さらに出世して、首都長安において廷尉右監を務めるまでに成長しましたが、しばらくの間、官を失い故郷へ戻り州の従事を行った時期もありました。

丙吉の名が高まったのは、「巫蠱の禍」と呼ばれる事件が起こった際のことで、彼は治獄使者として取り調べを行いました。この事件では、首謀者として名を挙げられた戾太子劉拠の孫にあたる劉病已が逮捕されましたが、彼がまだ赤ん坊であったため、丙吉はこの幼い命を大切に思い、女性の刑徒を乳母として彼を養育することを決断しました。この優しさは、後に彼を支えることになる重要な選択となります。

武帝が長安で無差別処刑を計画していた折、丙吉は自身が担当する獄の中にいた者たちを助けるため、処刑を回避するように行動しました。この中には劉病已も含まれており、彼の命を保つことができたのです。その後、恩赦が下ると、丙吉は劉病已を祖母の実家である史氏に預けて、最善の環境で育つように配慮しました。

丙吉はその後、大将軍霍光の下で官職を昇進し、頭角を現しました。大将軍の長史として政治の実権を握り、光禄大夫給事中としても活躍しました。元平元年（紀元前74年）には、昭帝の死後に昌邑王劉賀が皇位を継承すると、彼は霍光に対して、劉病已が健在であることを伝え、後継者として推挙することを勧めました。これにより昌邑王は廃位され、劉病已が新たに宣帝として即位することになったのです。

宣帝が即位した後、丙吉はその功績により関内侯に任命されましたが、自らが皇帝を守護したことを言うことはなく、更なる栄誉には恵まれませんでした。しかし、元康3年（紀元前63年）、太子太傅から御史大夫に転任した際、宣帝は初めて彼の行動の真意を知り、その功績を高く評価し、博陽侯に封じられ、1300戸の邑を授けました。さらに、神爵3年（紀元前59年）には魏相の死去を受けて丞相となりました。

法律の知識を持っていた丙吉ですが、後に儒学にも精通し、政策を行うにあたっては人材を適切に登用することに力を入れました。彼は小さな過ちよりも人の美点を評価し、優れた人材を重視しました。ある春の日、彼は外出中に使者が通る道で人々の喧嘩を目にしましたが、それを無視し、熱さを感じている牛の持ち主には経緯を尋ね、陰陽の調和について思いを馳せたといいます。このエピソードは彼の合理的で冷静な判断力を示しています。

後に、楊顒が彼の姿勢を引き合いに出し、治国の姿勢を諌めたこともあり、丙吉の手腕は時代を超えて高く評価されることとなります。五鳳3年（紀元前55年）には病に倒れ、最期の時には将来の国政を任せるべき人として于定国、杜延年、陳万年の三名を推薦しました。丙吉の死後、彼が推薦した者たちはいずれも国家の重職に就くことになります。その生涯は多くの人々に影響を与え、称賛を受けています。彼の死後、彼には「定侯」という諡号が与えられました。

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