中宮寺

中宮寺

中宮寺（ちゅうぐうじ）は、奈良県生駒郡斑鳩町に位置する聖徳宗の寺院です。法隆寺に隣接し、聖徳太子が母后のために創建したと伝えられる尼寺であり、法興山を山号とします。本尊は如意輪観音菩薩です。

歴史

創建当初は現在の場所から500メートルほど東に位置していましたが、16世紀末頃に現在地に移転しました。発掘調査の結果から、7世紀前半の創建と推定されていますが、詳しい創建の経緯は不明です。

寺伝によれば、聖徳太子が母である穴穂部間人皇女（あなほべのはしひとのひめみこ、後の間人皇后）のために宮殿を寺としたとされ、後に間人皇后自身が発願者であるという伝承も生まれました。鎌倉時代の文献には、「葦垣宮、岡本宮、鵤宮の3つの宮の中にあった宮なので中宮といい、それを寺にした時に中宮寺と号した」という説が記されています。

平安時代以降、中宮寺は一時衰退しましたが、鎌倉時代に信如比丘尼によって復興が図られました。信如は、聖徳太子ゆかりの「天寿国繡帳」を再発見したことで知られています。この頃の宗旨は法相宗でしたが、その後真言宗泉涌寺派に変わりました。

戦国時代に炎上したため、現在地にあった法隆寺の子院に避難し、そのまま寺基を移しました。江戸時代初期には尼門跡斑鳩御所として格式を高め、明治時代以降もその姿を保っています。太平洋戦争後、法隆寺を総本山とする聖徳宗に合流し、現在に至るまで法隆寺と深い関わりを持っています。

境内

創建当時の中宮寺跡は、現在の境内から東方約500メートルの場所に位置し、国の史跡に指定されています。発掘調査により、金堂と塔の跡が検出され、四天王寺と同様に金堂を北、塔を南に配置する伽藍配置であったことが分かっています。2018年には中宮寺跡史跡公園として整備されました。

現在の境内は、法隆寺東院に隣接する子院地を拝借しています。2021年には本堂の改修が行われ、同年4月5日から拝観が再開されました。

境内には、高松宮妃の発願で建てられた本堂（和風の現代建築）、江戸時代後期建立の表御殿（国登録有形文化財）、庫裏、鳩和殿、山門などがあります。

文化財

中宮寺は、数多くの文化財を所蔵しています。

国宝

木造菩薩半跏像：飛鳥時代の作で、広隆寺の弥勒菩薩半跏像と並び称される名作。寺伝では如意輪観音とされていますが、当初は弥勒菩薩像として造立されたと考えられています。50円普通切手の意匠にもなりました。
天寿国繡帳残闕：飛鳥時代の染織品として極めて貴重な遺品。聖徳太子の母である穴穂部間人皇女と聖徳太子の死去を悼んで王妃橘大郎女が製作した曼荼羅です。現在は奈良国立博物館に寄託されています。

重要文化財

紙製文殊[[菩薩]]立像：鎌倉時代の作で、紙を張り重ねて造像した珍しい仏像。日本の重要文化財指定の彫刻のうち「紙製」はこの像のみです。東京国立博物館に寄託されています。
紙本墨書瑜伽師地論 二巻：奈良時代の作。

このほか、阿弥陀三尊繍仏、木造扁額、木彫雨宝童子立像など、数多くの文化財が所蔵されています。

所在地

〒636-0111 奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺北1-1-2

アクセス

JR法隆寺駅下車
JR・近鉄王寺駅から奈良交通バス（62・63・92系統）で「法隆寺前」下車

中宮寺は、聖徳太子の母を偲んで建立された尼寺であり、その歴史と文化財は訪れる人々に深い感銘を与えます。法隆寺と合わせて、斑鳩の里の歴史と文化に触れてみてはいかがでしょうか。

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