光の道

光の道構想とは

「光の道」構想は、2008年に当時の原口一博総務大臣の指示のもと、総務省のタスクフォースによって打ち出されたブロードバンド普及政策です。この構想は、2015年までにブロードバンド利用率100%を目指すという目標を掲げ、「光の道」と呼ばれる光ファイバー網を全国に整備することを目的としていました。

構想の概要

この構想には、大きく分けて2つの計画がありました。

A案：総務省の計画

総務省の計画は、ICTの利活用と設備競争を促進し、光ファイバー網（FTTH）の価格をADSL並みに引き下げることを目標としていました。需要に応じて整備を進め、市場原理で供給が困難な地域については、ユニバーサルサービス基金や税金による補助金も活用するというものでした。

B案：孫正義氏の計画

タスクフォースの委員であった孫正義氏は、より大胆な計画を提唱しました。その内容は、

全国の全世帯に光ファイバー網を普及させる。
光ファイバーの料金を、既存のメタル回線相当の月額1,150円程度に抑える。
この計画を税金投入なしで実現する。
そのために、NTTの加入者設備を買い取るブロードバンド回線維持専業の民間企業（実質的には国策会社）を設立する。
電子カルテやデジタル教科書を普及させ、日本の構造改革と国際競争力の回復につなげる。

というものでした。しかし、総務省はこの計画について、実現可能性が不確実であるとしていました。

各社からの反対意見

この構想に対して、通信各社からは反対意見が相次ぎました。

NTT：経済的合理性の観点から、このスケジュールでの提供は不可能であると回答しました。
KDDI：光加入者線の敷設やケーブルテレビ局への資本参加など、多額の投資を行っており、NTTの保有する光回線を各社で等しく利用できる環境にすることは、これまでの投資が無駄になるとして反対しました。また、設備競争が阻害されることも懸念しました。
ケイオプティコム：光回線はすでに十分に整備されており、整備済み地域での利用促進が最優先であると主張しました。また、携帯電話だけで十分というユーザーも多く、通信方法も多様化しているため、一律に整備することは国民負担の増大につながるとしました。KDDIと同様に、設備競争やイノベーションの阻害を懸念しました。

佐々木俊尚氏の反論

タスクフォースの委員であった佐々木俊尚氏は、孫正義氏の計画に対して以下のように反論しました。

日本のブロードバンド基盤は世界最高水準に達しているため、ブロードバンド普及を政府のIT戦略の主軸に据えるべきではない。
生活に直結した使いやすいブロードバンドのサービスが不足している。
最優先すべきは、インターネットが国民生活の社会的基盤となるような政策を推進することである。

その後

結果として、「光の道」構想は当初の計画通りには進みませんでした。しかし、FTTHやモバイルブロードバンドなどの整備は、政府の主導ではなく民間の力によって進められ、2015年の時点では当初の構想を大きく超える情報化とインフラが普及しました。一方で、デジタル教科書の普及は2020年のコロナショックまで遅れ、低価格化も実現には至りませんでした。

関連事項

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