北条朝時

北条朝時：鎌倉幕府を支えた名越流北条氏の祖

北条朝時（ほうじょう ともとき）は、鎌倉時代前期に活躍した武将です。鎌倉幕府の第2代執権である北条義時の次男として生まれ、名越流北条氏の祖となりました。母は義時の正室・姫の前であり、北条氏の嫡子と見なされていました。祖父・北条時政から受け継いだ名越邸にちなみ、名越朝時とも呼ばれています。

生涯

1193年、鎌倉で生を受けた朝時は、1203年の比企能員の変で母方の実家が滅ぼされるという悲劇に見舞われます。その後、13歳で元服し、将軍・源実朝から偏諱を受けて朝時と名乗りました。

20歳を迎えた1212年には、将軍の御台所に仕える女性への不適切な行動が発覚し、父・義時によって義絶され、駿河国での蟄居を余儀なくされます。しかし、1213年の和田合戦で鎌倉に呼び戻され、兄・泰時と共に奮戦し、その武勇を示しました。その後、幕府に復帰し、御家人としての地位を確立します。

1221年の承久の乱では、北陸道の大将軍として佐々木信実や結城朝広らと協力し、越後国府から越中国・加賀国の国境である砺波山へと進軍。朝廷軍を破り、入京を果たしました。戦後、上皇方に味方した藤原範茂の処刑を執行。1223年10月には、加賀・能登・越中・越後など北陸道諸国の守護を兼任しました。

1224年に父・義時が死去すると、朝時は弟たちと共に葬送を執り行います。その後、伊賀氏事件を経て泰時が3代執権に就任しますが、この事件における朝時の動向は明らかではありません。1225年には越後守に任じられ、1236年には評定衆に加えられますが、すぐに辞退し、幕府中枢から距離を置く姿勢を示しました。

1242年、兄・泰時の出家に伴い、朝時も翌日に出家し、生西と号します。その背景には、反執権勢力の暗闘があったとも言われています。1245年、53歳でその生涯を閉じました。

父・兄との関係

母が正室であったことから、朝時は祖父・時政の後継者として期待されていたとする説もあります。しかし、父・義時からは一時義絶され、同母弟の重時が先に要職に就くなど、必ずしも良好な関係ではなかったとする見方もあります。一方で、和田合戦や承久の乱での活躍が認められ、義時の遺領配分では多くの所領を与えられました。

兄・泰時との関係は複雑で、強盗事件の際に泰時が駆けつけた際には忠誠を誓う起請文を書いたものの、泰時の死後には周囲から不審な目で見られていたようです。また、義時の四十九日仏事を単独で行うなど、北条本流としての自負があった可能性も指摘されています。

晩年には、家人の押領事件を巡り、泰時との政治的対立が表面化。泰時の後継者争いにも関与したと見られていますが、詳細は不明です。その後、名越流は得宗家に対して反抗的な姿勢を取り続け、朝時の子である光時、時幸、教時らが宮騒動や二月騒動で謀反を企てました。

子女

北条光時：嫡男。宮騒動で出家、伊豆へ流罪。
北条時章：次男。母は大友能直の娘。二月騒動で誅殺。
北条時長：三男。母は大友能直の娘。宮騒動以降、得宗に従う。
北条時幸：四男。宮騒動で自害。
北条教時：五男。母は北条時房の娘。二月騒動で誅殺。
北条時基：六男。得宗に従う。

まとめ

北条朝時は、鎌倉時代前期の激動期を生き、鎌倉幕府を支えた一人です。名越流北条氏の祖として、一族の繁栄に貢献する一方で、父や兄との複雑な関係、そして子孫たちの反抗的な行動など、波乱に満ちた生涯を送りました。彼の足跡は、鎌倉幕府の権力構造や北条氏一族の内部抗争を理解する上で重要な手がかりとなります。

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