史浩

史浩（し こう）は、崇寧5年（1106年）に生まれ、紹熙5年（1194年）に没した南宋初期の政治家です。字は直翁、号は真隠・鄮峰真隠。諡は文恵、後に忠定と改められました。彼は明州鄞県（現在の浙江省寧波市鄞州区）の出身で、子に史弥大、史弥正、史弥遠、史弥堅がいます。

史浩は紹興14年（1144年）の科挙に合格し進士となりました。その後、国子博士、宗正寺少卿、中書舎人、翰林学士、知制誥といった要職を歴任し、孝宗皇帝からの信頼も厚く、隆興元年（1163年）には尚書右僕射に任じられました。しかし、孝宗が金に対する強硬策を主張する張浚の意見を重視し、宰相を介さずに直接前線の将軍に命令を下したことに史浩は反発し、抗議のために辞任しました。

辞任後も孝宗の信頼は揺るがず、淳熙5年（1178年）3月には右丞相に再任されました。淳熙10年（1183年）8月に引退し、太保・魏国公に封じられています。また、史浩の子である史弥堅が孝宗の姪（崇王趙伯圭の娘）を娶るなど、皇室との関係も深く、孝宗が史浩を右丞相に任命した際には、史浩の母親の誕生日を選び、祝いの品を贈ったという逸話も残っています。

史浩は政治家としてだけでなく、文化人としても知られており、大曲と呼ばれる形式の詞の作家としても名を馳せました。彼の作品は今日にも伝えられています。光宗が即位すると、太師の位が加えられました。紹熙5年（1194年）に89歳で亡くなると、会稽郡王に追封され、寧宗から「文恵」という諡号を贈られ、その功績を称える御筆も下賜されました。

さらに、嘉定14年（1221年）8月には、再び越王に追封され、「忠定」と改諡されました。そして、孝宗の廟庭に祀られるという栄誉に浴しました。

史浩は、南宋初期の政治において重要な役割を果たした人物であり、孝宗との深い信頼関係や、文化人としての側面など、多岐にわたる才能を発揮しました。彼の生涯は、南宋の政治史や文化史を理解する上で欠かせないものとなっています。

参考文献
『岩波世界人名大辞典』（岩波書店、2013年） ISBN 978-4000803151
藤本猛「武臣の清要－南宋孝宗期の政治状況と閤門舎人」（初出:『東洋史研究』63巻1号（東洋史研究会、2004年）/所収:藤本『風流天子と「君主独裁制」－北宋徽宗朝政治史の研究』（京都大学学術出版会、2014年） ISBN 978-4-87698-474-9

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