大中臣輔親

大中臣輔親（おおなかとみ の すけちか）

大中臣輔親は、平安時代中期に活躍した公卿であり、歌人としてもその名を残しています。神祇大副・大中臣能宣の長男として生まれ、四条または岩出と号しました。官位は正三位にまで昇り、祭主や神祇伯といった要職を歴任し、中古三十六歌仙の一人にも選ばれています。

経歴

輔親は、一条天皇の時代初期である寛和2年（986年）に文章生試に合格し、そのキャリアをスタートさせました。勘解由次官や皇太后宮権少進といった役職を経て、正暦2年（991年）には従五位下に叙せられます。

長徳2年（996年）には美作介に任じられ、4年間の任期を全うしました。その後、長保3年（1001年）には伊勢神宮の祭主および神祇権大副という神職に転じます。その後も神祇権大副を歴任し、寛弘4年（1007年）に従五位上、さらに正五位下に昇進。寛弘7年（1010年）には従四位下に叙されました。

寛弘9年（1012年）には、三条天皇の大嘗祭において祭主としての功績により従四位上に昇進。長和5年（1016年）には後一条天皇の大嘗祭でも同様に正四位下に叙せられています。

寛仁3年（1019年）頃には神祇伯に任じられ、長元7年（1034年）には18年ぶりの昇叙により従三位に叙せられ、公卿の仲間入りを果たしました。長元9年（1036年）には、後朱雀天皇の大嘗祭での活躍により正三位にまで昇りつめました。しかし、長暦2年（1038年）6月2日に85歳でこの世を去りました。

人物

輔親は、大中臣氏の中でも特に優れた歌人として知られており、三条天皇、後一条天皇、後朱雀天皇の三代にわたり、大嘗祭の際に和歌を詠進しました。また、屏風歌の制作や歌合にも積極的に参加しました。勅撰歌人としてもその名を残し、『拾遺和歌集』をはじめとする勅撰和歌集に合計31首の歌が収録されています。家集としては『輔親卿集』が残されています。

官歴

以下に輔親の官歴を詳細に示します。

寛和2年（986年）
10月26日：文章生となる
11月7日：文章生試に及第
永延2年（988年）8月：勘解由次官に任官
永祚2年（990年）8月30日：皇太后宮権少進（皇太后・藤原詮子）
正暦2年（991年）9月16日：従五位下に叙位
長徳2年（996年）正月25日：美作介に任官
長保2年（1000年）正月15日：美作介の任期満了
長保3年（1001年）
2月28日：祭主に任官
10月20日：神祇権大副に任官
寛弘4年（1007年）
9月20日：従五位上に昇進
12月21日：正五位下に昇進
寛弘5年（1008年）10月16日：神祇権大副として記録
寛弘7年（1010年）正月7日：従四位下に昇進
寛弘9年（1012年）11月21日：従四位上に昇進
長和5年（1016年）11月14日：正四位下に昇進
寛仁3年（1019年）正月23日：神祇伯として記録
長元7年（1034年）11月5日：従三位に昇進
長元9年（1036年）11月20日：正三位に昇進
長暦2年（1038年）6月2日：薨去

系譜

父：大中臣能宣
母：藤原清兼の娘
妻：蔵命婦 - 藤原教通の乳母
生母不明の子女
男子：大中臣輔隆
女子：伊勢大輔 - 藤原彰子（上東門院）女房、高階成順室
* 女子：大中臣守孝室

妻である蔵命婦は、藤原道長の五男である藤原教通の乳母であり、輔親もまた乳母父として教通に仕えました。この縁から、娘である伊勢大輔が藤原彰子に仕えることになったと考えられています。ただし、蔵命婦が伊勢大輔の実母であるかどうかは不明です。

このように、大中臣輔親は、公卿として朝廷に仕えながら、歌人としても優れた才能を発揮した人物でした。その生涯は、平安時代の貴族社会における文化的な側面に光を当てる重要な一例と言えるでしょう。

もう一度検索