大道寺将司

大道寺将司：反逆のテロリスト、獄中の俳人

大道寺将司（だいどうじ まさし）は、1948年6月5日に生まれ、2017年5月24日に没した日本のテロリストであり、東アジア反日武装戦線“狼”部隊のリーダー格でした。彼の生涯は、政治への強い関心と過激な反日思想、そして獄中での文芸活動という、複雑な要素が絡み合っています。

政治への目覚めと反日思想の形成

北海道釧路市で生まれた大道寺は、幼少期から父親の影響で新聞を読み、政治に関心を持つようになりました。中学校では、アイヌの同級生たちの厳しい暮らしぶりや就職差別を目の当たりにし、社会問題への意識を高めます。高校時代にはデモに参加するようになり、大学進学後も学生運動に関わりました。

華僑青年闘争委員会の「決別宣言」に触発されたことをきっかけに、大道寺は「日本帝国主義」のアジアにおける「悪行」について深く学ぶようになり、過激な反日思想を形成。自らをアイヌへの贖罪意識を持つ者と位置づけました。

ゲリラ闘争と逮捕

大道寺は、反日戦線結成前に「興亜観音・殉国七士之碑爆破事件」や「風雪の群像・北方文化研究施設爆破事件」に関与。1972年末に東アジア反日武装戦線「狼」部隊を結成してからは、「お召し列車爆破未遂事件（虹作戦）」や「三菱重工爆破事件」を含む連続企業爆破事件を起こしました。

1975年5月19日、大道寺は同志とともに逮捕され、9件の爆破事件で起訴されました。裁判中には獄中闘争を展開し、日本赤軍によるクアラルンプール事件とダッカ日航機ハイジャック事件の際には、同志が超法規的措置で釈放されたにもかかわらず、釈放を拒否しました。1987年3月24日に最高裁で死刑が確定しました。

獄中からの文芸活動

死刑確定後、大道寺は松下竜一、中山千夏、辺見庸ら知識人との交流を通して、文芸活動を開始しました。獄中で詠んだ句集『棺一基』は、2013年に日本一行詩大賞の俳句部門を受賞。その作品は、死刑囚としての心情や社会への問いかけを表現し、多くの人々に感動を与えました。

死去と遺されたもの

再審請求は棄却され、2017年5月24日、大道寺将司は多発性骨髄腫により東京拘置所で死去しました。68歳でした。

大道寺将司の生涯は、テロリズムという過激な手段を選んだことへの批判がある一方で、社会への強い問題意識と、獄中での文芸活動を通して自己を表現し続けた姿勢は、多くの議論を呼んでいます。彼の遺した著書や句集は、今もなお読み継がれ、社会に問いを投げかけています。

主な著書

『腹腹時計』
『明けの星を見上げて―大道寺将司獄中書簡集』
『死刑確定中』
『友へ―大道寺将司句集』
『鴉の目―大道寺将司句集』
『棺一基 大道寺将司全句集』
* 『残の月 大道寺将司全句集』

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