奚

奚（けい）とは：歴史と文化

奚（けい）は、4世紀から10世紀頃まで、現在のモンゴル高原東部から中国東北部にかけての地域で活動した遊牧民族です。初めは庫莫奚（こまくけい）と呼ばれていました。

起源

中国の史書によれば、奚の起源は匈奴に属する鮮卑の宇文部であるとされています。344年、前燕の攻撃を受けた宇文部の逸豆帰は、漠北へ逃れ、さらに高句麗へと亡命しました。この時、松漠の間に残った勢力が庫莫奚となったと伝えられています。

北朝時代

388年、北魏の道武帝による親征を受け、庫莫奚は弱洛水の南で大敗を喫し、多くの家畜を失いました。その後、勢力を盛り返しますが、北魏が遼海を開き、和龍を置くと、北魏に朝貢するようになります。498年には定州に侵入したため、北魏によって撃退されました。

北周時代には、突厥が柔然を滅ぼし勢力を拡大する中、庫莫奚は5つの部族に分裂し、突厥に服属しました。この頃、隣国の契丹と度々戦っています。

隋唐時代

隋代以降、庫莫奚は単に奚と呼ばれるようになり、突厥に属しながらも隋などの王朝にも朝貢しました。唐が成立すると、奚は朝貢を行い、644年には高句麗遠征にも参加しています。648年、太宗によって北方遊牧騎馬民族が唐の支配下に入ると、奚の酋長である可度者は唐に内属し、饒楽都督府が置かれました。しかし、可度者の死後、奚は唐に反乱を起こします。

660年、唐は奚討伐軍を派遣し、奚王の匹帝を斬首しました。その後も奚は契丹と結び唐に抵抗しましたが、715年に李大輔が唐に降伏し、饒楽州が置かれ、李大輔は饒楽郡王に封ぜられました。その後も唐との関係は安定せず、730年には再び反乱を起こしましたが、唐によって鎮圧され、一部は帰順しました。

746年、唐は奚王の娑固を昭信王に封じ、饒楽都督としました。その後も奚は唐と交流を続けましたが、8世紀末には室韋と共に振武を襲撃するなど、関係は不安定でした。

五代十国時代

唐末、陰涼川に住んでいた奚族は、再び5つの部に分かれました。契丹の耶律阿保機が勢力を拡大すると、奚はこれに服属しますが、契丹の苛酷な支配に苦しみます。奚王の去諸は契丹に反乱を起こし、西の嬀州へ移住し、狩猟生活を始めました。去諸の子の掃剌は、後唐から李姓を賜り、李紹威と名乗りました。

遼の時代

奚王府率いる奚族は、契丹の五院部・六院部・乙室部と並んで四大部を構成しました。奚族からは后族の蕭氏が出て、遼の歴代皇后を輩出しています。1122年、奚の回離保が自立し奚国皇帝を自称しましたが、すぐに金によって滅ぼされました。遼の滅亡後、奚族の一部は耶律大石に従って西遷し、西遼の建国に参加しました。金の領内に残った奚族は女真や漢族に同化し、西遼の奚族はイスラーム化していきました。13世紀以降、奚族の民族的活動は史書に見られなくなりました。

習俗

奚は遊牧狩猟民族であり、馬・牛・羊・豚を飼育し、移動式の住居で生活していました。狩猟を得意とし、略奪も行っていました。五代十国時代になると、農耕も行うようになりました。

言語

奚の言語は、契丹語と同じモンゴル語族に属すると考えられています。

地理

奚は、鮮卑の故地（内モンゴル東部）に住み、東は契丹、西は突厥、南は白狼河、北は霫と接していました。

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