宇文部

宇文部（うぶん ぶ）とは

宇文部（拼音: Yǔwén bù）は、遼西地方（現在の中国東北部）に存在した鮮卑（せんぴ）の一部族です。西晋時代から五胡十六国時代にかけて勢力を拡大し、南北朝時代にはその子孫が北周を建国しました。

起源

宇文部の起源には複数の説があります。

伝承: 黄帝に滅ぼされた炎帝神農氏の子孫が、北方の荒地に隠れ住んだ。
匈奴起源説: 1世紀に北匈奴が後漢に敗れて西へ逃れた際、これに従わずに漠北に留まった部衆が起源。彼らは東へ逃れて鮮卑族と混ざり合い、同化していった。
葛烏菟: 葛烏菟（かつうと）という人物が鮮卑の諸部から推戴され、檀石槐（だんせきかい）の時代には12の部落を統べる東部大人となりました。以後、彼の子孫が代々東部大人を世襲しました。
宇文普回: 宇文部の始祖とされる宇文普回（うぶんふかい）は、狩猟中に「三紐の玉璽」を拾い、その玉璽に刻まれた文字から部族名を宇文と号し、姓も宇文としました。
言語起源説: 『資治通鑑』には、宇文氏は炎帝神農氏の後裔であり、草の効能を試した際に、鮮卑語で草を意味する「俟汾（しふん）」から俟汾氏と名乗り、それが転じて宇文氏となったという説が紹介されています。

歴史

前史

宇文部は元々遼東の塞外に住んでいましたが、宇文普回の子である宇文莫那（うぶん ばくな）が陰山から南へ移り、遼西に拠点を構えました。その後、宇文部は段部（だんぶ）と並んで遼西地方で勢力を拡大し、慕容部（ぼようぶ）とは対立関係にありました。

293年、宇文莫槐（うぶん ばくかい）は部族民を虐げたため殺害され、弟の宇文普撥（うぶん ふはつ）が後を継ぎました。宇文普撥の時代には、拓跋部（たくばつぶ）と姻戚関係を結んでいます。宇文普撥の死後、子の宇文丘不勤（うぶん きゅうふきん）、宇文莫珪（うぶん ばくけい）と続きました。

宇文莫珪の時代

宇文莫珪の時代に、宇文部は最盛期を迎えました。彼は単于（ぜんう）を自称し、周辺の諸部族から恐れられました。302年には、弟の宇文屈雲（うぶん くつうん）と一族の宇文素延（うぶん そえん）に慕容部を攻撃させましたが敗北。その後、宇文素延は10万の兵を率いて慕容部の本拠地である棘城（きょくじょう）を包囲しましたが、再び敗れて撤退しました。

宇文遜昵延の時代

宇文莫珪の後を継いだ宇文遜昵延（うぶん そんじつえん）は、遼東を支配する東晋の東夷校尉崔毖（さいひ）と結託し、高句麗や段部と同盟を結んで慕容部を攻撃しました。しかし、慕容部の大人慕容廆（ぼようかい）の策略により、高句麗と段部は撤兵。宇文遜昵延は単独で棘城を攻撃しましたが、慕容廆の反撃と慕容翰（ぼようかん）の奇襲により大敗を喫し、代々伝わる玉璽三紐も奪われました。

宇文乞得亀の時代

宇文遜昵延の死後、子の宇文乞得亀（うぶん きつとくき）が後を継ぎました。325年、後趙（こうちょう）の君主石勒（せきろく）の要請により慕容部を攻撃しましたが、慕容皝（ぼようこう）に大敗。333年、東部大人の宇文逸豆帰（うぶん いつずき）によって領土を追放され、逃走中に亡くなりました。

宇文逸豆帰の時代

宇文乞得亀を追放した宇文逸豆帰は、慕容部の侵攻を受け、講和を求めました。その後、慕容仁（ぼようじん）の反乱を支援したり、拓跋紇那（たくばつ こつな）を代王に復位させたりしましたが、344年、慕容皝による宇文部討伐軍の攻撃を受け、都城を攻略されました。宇文逸豆帰は漠北へ逃亡中に亡くなり、宇文部は滅亡しました。

その後

宇文逸豆帰の子である宇文陵（うぶん りょう）は前燕（ぜんえん）に仕えましたが、前燕滅亡後は後燕（こうえん）に仕え、後に北魏に帰順しました。宇文陵の子孫である宇文肱（うぶん こう）は、六鎮の乱で功績を挙げ、その子の宇文泰（うぶん たい）が北周を建国しました。

習俗

宇文部は匈奴を起源とする説があるため、言語は本来の鮮卑族とは異なっていたとされています。人々は髪を切り揃え、頭頂部で留める髪型をしていました。女性は足まで届く長い襦（じゅ）を着用していましたが、裳（も）はなかったようです。また、秋にはトリカブトの根から毒薬を作り、狩猟に用いました。

歴代大人

葛烏菟
宇文普回
宇文莫那
宇文莫槐
宇文普撥
宇文丘不勤
宇文莫珪
宇文遜昵延
宇文乞得亀
宇文逸豆帰

関連項目

契丹
宇文泰
北周
五胡十六国時代
鮮卑
拓跋部
慕容部

もう一度検索