耶律阿保機

耶律阿保機（やりつ あぼき）：遼の建国者

耶律阿保機（やりつ あぼき、Yelü Abaoji）は、遼（契丹）を建国した人物として知られています。「阿保機」は「掠奪者」を意味するあだ名の音訳とされています。

生涯

出生と出自

耶律阿保機は、咸通13年（872年）に契丹（キタイ）族・耶律氏の迭剌部出身の耶律撒剌的と宣簡皇后蕭氏の長男として生まれました。耶律氏は移剌とも呼ばれます。彼は天皇帝、天皇王の称号も持っていました。杉山正明は、彼が「天皇帝」を自称したことを、中国皇帝の称号を受け入れたのではなく、遊牧民族の称号「天可汗」の漢訳であると主張しています。

伝説によれば、母親が夢で懐妊し、誕生時には室内が光と香りに包まれ、生まれたときから3歳児ほどの体格で這い出したと伝えられています。

即位と支配体制の確立

耶律阿保機は初め、遙輦氏の痕徳菫可汗に仕えていました。天祐3年（906年）に痕徳菫可汗が亡くなると、天祐4年（907年）1月に契丹の可汗に即位しました。

その後、室韋部・越兀部・烏古部などの奚諸部を討伐し、耶律氏による支配体制を確立。蕭轄剌を北宰相、耶律欧里思を南宰相に任じ、群臣と共に天皇帝号を奉じて「皇帝」となりました。

天祐8年（911年）から兄弟たちの反乱が頻発しましたが、彼は剌葛・迭剌・寅底石・安端などを征伐し、反乱者たちを処刑しました。

契丹の建国

神冊元年2月11日（916年3月17日）、耶律阿保機は新たに契丹可汗に即位し、国号を「キタイ＝契丹」と定め、元号を神冊としました。これにより、契丹人の王朝が建国されました。

北宰相に蕭轄剌、北院夷離菫に耶律斜涅赤、南府宰相に耶律蘇、南院夷離菫に耶律迭里を任じ、国家運営を進めました。

彼は西の突厥・吐谷渾・小蕃・阻卜・タングート・ウイグル・沙陀諸部、北の女真、南の中国10余州、東の渤海を討って服属・占領し、長男の耶律突欲を封じて「東丹国」を建国しました。しかし、渤海との戦役からの帰路の途中で病没しました。

政治・文化面での功績

耶律阿保機は政治面で大きな功績を残しました。契丹では、遊牧民と定住民を別の機構で統治する二重統治体制を確立し、遊牧所領内にも多くの都市を建設しました。また、遊牧国家でありながら農耕国家の機構を取り入れ、漢人を積極的に登用し、匈奴以来の遊牧国家機構をより強固なものとしました。

文化面では、漢文化を積極的に吸収し、神冊5年（920年）には大小2種からなる契丹民族独自の文字「契丹文字」を制定しました。

論争

天賛3年6月18日（924年7月22日）、耶律阿保機は、皇后・皇太子・大元帥・宰相・諸部の長を召集して、「3年後、丙戌年の初秋になると、必ず帰着する所があるだろう」と述べました。実際に3年後の丙戌年（926年）初秋7月26日（9月6日）、渤海遠征を終えて帰還中に扶余府で亡くなりました。つまり、彼は自らの死期を正確に予知していたことになります。北京大学教授の羅新は、彼は自殺したのではないかと推測しています。

后妃と子女

淳欽述律皇后（月里朶＝ユリド）
宮人蕭氏

子女

耶律突欲（皇太子、東丹国王（懐王）、耶律履・耶律楚材父子の祖）
耶律堯骨（太宗）
耶律李胡
耶律牙里果（子に敵烈・室魯・奚底ら、耶律大石の祖）
* 耶律質古

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