富川房信

富川房信について

富川房信（とみかわ ふさのぶ）は、江戸時代中期に活躍した浮世絵師であると同時に、版元としても名を馳せた人物です。その生没年は不明ですが、彼の影響力と業績は今なお評価されています。彼は西村重長の門下生であり、鳥居派に属することが多くの研究者に示唆されています。しかし、房信はまた、他の門人たちとは異なる道を歩んだとも言われています。

彼の本名は富川であり、通称は山本九左衛門でした。生涯においては、晩年に吟雪や百亀と名乗ることもありましたが、『浮世絵類考』では房信と百亀は別の人物とされています。富川は江戸の大伝馬町で「丸屋」または「正本屋」として知られる店を営んでおり、そこで地本問屋業を行い、錦絵などの販売を手掛けました。

しかし、富川の商業は繁盛しなかったようで、彼の時代には家業が傾いた結果、安永年間に廃業し、本郷に移り住むこととなります。彼の制作活動の主要な時期は宝暦期にさかのぼり、この頃には鳥居派風の紅摺絵を手掛けていました。具体的には宝暦10年（1760年）から安永6年（1777年）にかけて、自作の赤本や青本（黄表紙）を中心に約170作を刊行しました。

富川はまた、滑稽な作品を得意としており、約200種類の本を自らの店「丸屋」から出版しました。その中で特に知られる作品には、宝暦10年の青本『粂平内石像物語』や、刊行年は不明ですが黒本『あんぽんたん』などがあります。さらに、延享2年（1745年）に刊行されたと思われる黒本『明石潟朗天草紙』や、明和2年（1765年）の『扇絵物語』も彼の代表作です。また、明和8年（1771年）までは、黒本の挿絵が見られることもあり、その後の安永6年には噺本『新落噺初鰹』を自ら手掛けて刊行しています。

代表的な作品

富川房信の作品にはいくつかの注目すべきものがあります。例えば、「瀬川獅子」という細判の紅摺絵や、「那須与市」という同様の形式の作品が存在しています。また、「中村富十郎」も細判の紅摺絵であり、彼の技術が光る作品の一例です。さらには、「豊年踊」の柱絵や「西王母」という明和元年（1764年）頃の作品も特徴的です。これらの作品を通じて、富川房信の独自のスタイルや当時の浮世絵の流行を感じ取ることができます。

参考文献

後世にわたって富川房信の業績を評価し続けるため、以下の文献が参照されています：

• - 藤懸静也『増訂浮世絵』雄山閣、1946年
• - 日本浮世絵協会編『原色浮世絵大百科事典』第2巻、大修館書店、1982年
• - 吉田漱『浮世絵の見方事典』北辰堂、1987年
• - 吉田漱『浮世絵の基礎知識』雄山閣、1987年

これらの資料を通じて、富川房信が残した浮世絵の世界を深く探求することができるでしょう。

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