徳川家宣

徳川家宣：改革の将軍、波乱の生涯

徳川家宣は、江戸幕府第6代将軍として1709年から1712年まで治世を担いました。波乱に満ちた生涯を送った彼は、数々の改革を断行し、後世に大きな影響を与えた将軍として知られています。

庶子から将軍へ

家宣は1662年、徳川綱重の長男として江戸で誕生しました。しかし、彼は綱重が正室を迎える前の庶子でした。そのため、幼少期は家臣である新見正信に預けられ、世間から隠れるように育ちました。生母は家宣が9歳の時に亡くなっています。

9歳で綱重の世子として迎えられた家宣は、元服し、4代将軍徳川家綱の偏諱を受けて「綱豊」と名乗ります。17歳で家督を継ぎ、祖母である順性院のもとで成長しました。

家綱が重態に陥った際には、後継者候補として名前が挙がりましたが、家光に近い血筋を持つ綱吉が有力候補となり、将軍職には就きませんでした。綱吉にも男子がおらず、後継問題が深刻化する中、家宣は家光の孫という血筋も評価され、宝永元年（1704年）、43歳で綱吉の養子となり、将軍後継者に内定。家宣と改名し、江戸城西の丸に入りました。甲府徳川家は絶家となり、家臣団は幕臣として編制されました。

正徳の治

宝永6年（1709年）、綱吉の死後、家宣は48歳で第6代将軍に就任しました。将軍在職中は、宝永通宝の流通問題や酒税、そして綱吉時代の政策であった「生類憐れみの令」の一部廃止など、積極的な政策を実行しました。

側用人に間部詮房、学者には新井白石らを登用し、文治政治を推進。琉球や李氏朝鮮との外交、宝永令の発布、新井白石による正徳金銀の発行などの財政改革にも取り組みました。しかし、在職3年後の正徳2年（1712年）、51歳で急逝しました。

家宣の後継者は3歳の徳川家継であり、政治は間部や新井白石らに委ねられることとなりました。家宣と家継の治世は「正徳の治」と呼ばれ、穏やかな時代として評価されています。

人物像と逸話

家宣は慈悲深い人物として知られており、『徳川実紀』にも「仁慈の心あり」と評されています。家臣に対する深い信頼を示したエピソードや、綱吉の死後、生類憐れみの令の廃止を断行したエピソードなどは、家宣の人物像を伝える上で重要なものです。水戸光圀から強く次期将軍に推挙されたという逸話も残されています。また、新井白石から家康や家光の事跡を学び、『藩翰譜』を常に傍らに置いていたといいます。

将軍就任後も、不正を厳しく取り締まり、人材登用にも尽力しました。綱吉とは良好な関係ではなかったとされ、生類憐れみの令廃止に関する逸話には異説もありますが、家宣の決断の背景には、民衆の苦境を救済しようという強い意志があったと考えられます。

家宣の死因は当時の流行病である感冒（インフルエンザ）と推測されています。家継の幼少を危惧し、後継者問題について新井白石に相談したという記録も残っています。

容姿と系譜

増上寺の改葬調査によると、家宣は細面で鼻筋の通った美男子であったとされ、身長は当時の日本人としては平均よりやや高い160.0cmあったと推定されています。歴代将軍の中で最も高い身長であったとされています。家宣の系譜には、正室である近衛熙子との間に生まれた子供や、側室との間に生まれた子供たちがいます。その中には、7代将軍となる徳川家継も含まれます。

関連作品

家宣は、数多くの歌舞伎、映画、テレビドラマ、漫画、小説などで取り上げられ、様々な形で描かれています。これらの作品を通して、家宣の生涯や人物像を改めて知ることができるでしょう。

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