星新一賞

「星新一賞」は、日本経済新聞社が主催する、理系的な発想を基にしたショートショートおよび短編小説を対象とした公募文学賞です。2013年に創設され、ショートショート作品で知られる作家・星新一氏の名を冠しています。

概要

この賞は、一般部門とジュニア部門に分かれて作品を募集しています。ジュニア部門は中学生以下が対象です。応募作品は日本語によるものに限られ、同一作品を両部門に重複して応募することはできません。過去には学生部門も存在しましたが、現在は一般部門に統合されています。学生部門は専門学校を含む25歳以下の学生が対象でした。また、日本経済新聞社と電通の協力により、「超ショートショートの書き方講座」が無料で開催され、テレビCMも放映されました。

特筆すべき点として、一般部門では人工知能など人間以外からの応募も可能です。ただし、その場合は連絡可能な保護者または代理人を立てる必要があります。受賞作品は、日本経済新聞社から電子書籍として無料で配信されます。

賞創設の経緯

「星新一賞」創設の背景には、2009年に「小松左京賞」と「日本SF新人賞」が相次いで休止されたことへの危機感がありました。日本SF作家クラブが新たな新人賞の創設を模索していたところ、星新一氏の次女である星マリナ氏の紹介により、電通CDCとの接触が実現しました。電通CDCのプロデューサーである吉崎圭一氏も理系文学の構想を持っていたことから、日本経済新聞社を主催者として2013年に「星新一賞」がスタートしました。

人工知能（AI）との関係

「星新一賞」の大きな特徴の一つが、人工知能（AI）による応募を認めている点です。この背景には、主催者と公立はこだて未来大学との間で賞の新設を前提とした協議があったことが挙げられます。現在では、公立はこだて未来大学と東京大学の鳥海不二夫教授らによる「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」というプロジェクトも進行しています。

第3回では、人工知能による小説創作に取り組む研究者らから4編の応募があり、そのうちのいくつかは一次審査を通過しました。ただし、現時点ではAIによる小説創作には人間の手助けが不可欠であり、AIの貢献度は全体の2割程度と評価されています。執筆にAIが関与した小説の応募は、計11作品にのぼりました。

選考委員

選考委員は、各回ごとに様々な分野の専門家が選ばれています。

最終選考委員

第1回：新井素子、益川敏英、野口聡一、石井裕、朝倉啓、滝順一
第2回：谷甲州、石黒浩、古川聡、冨田勝、水木伸子、滝順一
第3回：東野司、押井守、向井千秋、真鍋真、牧野隆、滝順一
第4回：恩田陸、小島秀夫、本川達雄、玉城絵美、矢野創、滝順一
第5回：太田光、貴志祐介、山崎直子、松尾豊、石田英輝、滝順一
第6回：藤井太洋、中野信子、森内俊之、大栗博司、辻井潤一、滝順一
第7回：夢枕獏、小野雅裕、池上高志、本仮屋ユイカ、坂本真樹、滝順一
第8回：中江有里、中島秀之、上田早夕里、橋本幸士、落合陽一、滝順一
第9回：ヤマザキマリ、梶尾真治、佐野幸恵、沖大幹、ムロツヨシ、滝順一
第10回：野口聡一、合原一幸、池澤春菜、美村里江、白井弓子、滝順一

中間選考委員

第1回 - 第8回：大森望、鏡明、牧眞司、山岸真
第9回 - 現在：鏡明、牧眞司、山岸真、三村美衣

受賞作

一般部門では優秀賞以上の作品が、ジュニア部門・学生部門ではグランプリ受賞作品が公表されています。

「星新一賞」は、理系的な発想に基づいた新しい文学の可能性を追求するユニークな文学賞として、今後も注目されるでしょう。

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