猫ひっかき病

猫ひっかき病

猫ひっかき病（英語: Cat scratch disease; CSD）は、細菌感染症の一種であり、主にリンパ節の炎症を引き起こします。この病気は、バルトネラ・ヘンセレ（Bartonella henselae）というグラム陰性菌によって引き起こされます。猫ひっかき病は人獣共通[[感染症]]の一つであり、特に猫との接触があった場合にリスクが高まることが知られています。

原因

猫ひっかき病の原因となるバルトネラ・ヘンセレは、1950年代に初めて報告され、その後1993年にはこの菌が患者のリンパ節から分離されました。この菌は猫に対しては無害で、保菌状態になることがあり、最低18カ月以上も体内に存在し続けることができます。猫同士の感染にはネコノミが関与しており、感染したネコノミが猫の血を吸い、体内でバルトネラ・ヘンセレを増やして糞便として排泄します。その糞便が猫の歯や爪に付着し、人間が咬まれたり引っかかれたりすると、感染が成立します。日本では、猫の9〜15%がこの菌を保有しており、西日本に多く見られ、特に野良猫や若い雄猫に感染が多いとされています。

症状

感染後、数日から最大4週間の潜伏期間を経て、虫刺されのように受傷部が赤く腫れます。典型的な症状には、痛みを伴うリンパ節の腫脹、37℃程度の発熱、倦怠感や関節痛が含まれます。重症化することは稀ですが、一部では肝臓や脾臓の異常、肺炎、脳炎、肉芽腫といったリンパ節外病変も報告されています。腫れたリンパ節は通常痛みを伴い、皮膚の発赤や熱感が見られることがあります。また、感染が重篤な場合、免疫不全や高齢者には麻痺や脊髄障害等を伴うこともあります。

疫学

この疾病は、小児から若年者にかけて多く見られ、特に秋から冬にかけての季節に流行しやすい傾向があります。女性にやや多く見られます。

検査

猫と接触のあったが、リンパ節の腫脹を伴う患者には猫ひっかき病を疑う必要があります。その際、βラクタム系抗菌薬が無効な場合は、より深い検査が求められます。血液検査では白血球増加やCRP上昇が見られることがありますが、必須ではありません。画像検査でリンパ節の腫脹を確認することも重要です。血清診断では、抗B.henselae IgGおよびIgM抗体の測定が行われます。特にIgM陽性や、抗体価の上昇があれば、診断が可能となります。

鑑別診断

特に小児においては、発熱とリンパ節腫脹についての鑑別が必要です。化膿性リンパ節炎や川崎病、悪性リンパ腫等との違いを考える必要があります。

治療

ほとんどの患者は重篤化せず、軽症の場合には治療を必要としないことが多いです。ただし、治癒に数週間から数ヶ月かかることがあります。治療が必要な場合はエリスロマイシンやドキシサイクリンが有効とされますが、クラリスロマイシンは効果がありません。有効なワクチンは現在開発されていません。

その他の感染症

猫を介して感染する可能性のある他の疾患には、パスツレラ症やトキソプラズマ症があり、猫ひっかき病に似た症状を引き起こすこともあります。

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