睦月型駆逐艦

睦月型駆逐艦：日本海軍駆逐艦の変遷における重要艦級

睦月型駆逐艦は、日本海軍が建造した駆逐艦の艦級であり、峯風型、神風型駆逐艦の設計を基に発展しました。この艦級の最大の特徴は、日本駆逐艦として初めて61cm魚雷発射管を搭載した点にあります。12隻が建造されましたが、太平洋戦争中に全て失われました。しかし、その革新的な設計と太平洋戦争での活躍は、日本海軍駆逐艦の歴史において重要な位置を占めています。

計画

1922年、ワシントン軍縮条約の締結により、日本海軍は従来の軍備計画の見直しを迫られました。その結果、大正十二年度艦艇建造新計画が策定され、駆逐艦の建造計画も大幅に変更されました。当初計画では、1,400トン型駆逐艦24隻を建造予定でしたが、軍令部の強い要求により、航続距離、凌波性に優れた1,600トン以上の排水量と、61cm魚雷の装備が求められました。そのため、1,400トン型13隻と1,700トン型5隻の建造へと変更されました。最終的に1,400トン型は計16隻が建造され、最初の4隻は神風型後期艦となり、残りの12隻が61cm魚雷を装備した睦月型として誕生しました。また、1,700トン型5隻は吹雪型となりました。

艦型

睦月型の基本計画番号は、資料によって差異が見られますが、一般的にF41E、F41F、F41Gの3種類に分類されます。睦月から皐月までの5隻がF41E、水無月から菊月までの4隻がF41F、望月と夕月がF41Gです。三日月の基本計画番号は不明です。睦月型は、艦型呼称として「第十九号型駆逐艦」と呼ばれていましたが、睦月戦没後は「卯月型」とも呼ばれました。また、「望月型」や「水無月型」など、他の艦名を冠した別称も存在します。

船体は神風型とほぼ同一ですが、艦首形状はスプーン・バウからダブルカーブド・バウに変更され、艦首フレアも大きくされ、凌波性が向上しました。61cm魚雷発射管の装備のため、船首楼後端が切り欠かれた形状となりました。艦橋は神風型後期艦と同様に鋼製の固定式側板が設置され、窓ガラスが入れられました。天蓋は開放式のままです。また、羅針艦橋後方の水雷指揮所の上部には測的所が設けられ、2m測距儀と30cm信号用探照燈が設置されました。

兵装は、日本駆逐艦として初めて61cm魚雷を採用し、61cm3連装発射管2基6門を装備しました。予備魚雷は6本を搭載しました。砲熕兵装は、12cm主砲4門を装備し、機銃は7.7mm機銃2挺を装備しました。艦尾には八一式爆雷投射機2基、爆雷装填台2基、爆雷18個を搭載しました。また、睦月から長月までの8隻は機雷投下軌道を設置し、機雷16個を搭載しました。菊月以降の4隻は、機雷投下軌道に代わり掃海装備を備えました。

機関は、過熱器付ロ号艦本式重油専焼缶4基と艦本式タービン2基を装備しました。ただし、弥生のタービンはメトロポリタン・ヴィッカース式、長月のタービンはツエリー式でした。これらの改正により、排水量は神風型に比べ約50トン増加しました。復元性能は初期の計画艦よりも低下しましたが、新造時には対策が取られませんでした。

変遷

竣工後の主な改装としては、煙突に雨水除去装置を設置し、トップが延長されました。また、魚雷発射管に盾が装備されました。1935年の第四艦隊事件では、睦月と菊月が被害を受け、1937年頃まで復元性能を含めた性能改善工事が行われました。この工事では、羅針艦橋の幅が縮小され、天蓋が固定式となり、前面が丸みを帯びた形状に変更されました。また、羅針艦橋下部の短艇甲板は機銃設置部分を除き撤去され、カッター用ダビットは上甲板に移されました。後部煙突両舷の予備魚雷格納筺は魚雷を横置きにするように変更され、通船用ダビットは撤去されました。後部煙突の後方に方位測定室が設けられました。

これらの工事により、1938年時点で排水量1,926トン、速力32.5ノットとなりました。開戦時の兵装は、12cm単装砲4基、61cm3連装魚雷発射管2基、八年式魚雷12本、八一式爆雷投射機2基、爆雷18個が標準でした。対空機銃は、7.7mm機銃2挺に加え、一部の艦には13mm連装機銃1基が搭載されました。

大戦中の変遷は資料が不足しており、詳細な情報は限られています。しかし、1943年には一部の睦月型でボイラー、主砲、魚雷兵装を撤去し、対空火力を強化する改造が計画され、一部の艦で実施されました。例えば、三日月では2番、4番12cm砲を撤去し、そこに25mm連装機銃や3連装機銃を装備、2番魚雷発射管を撤去、後部煙突を短縮するなどの改装が行われました。卯月の場合、12cm単装砲2門、61cm3連装魚雷発射管1基、25mm機銃複数、爆雷投射機、電探が装備されていました。しかし、全ての艦が同じ改装を受けたわけではなく、艦ごとに異なる兵装や装備構成となっていました。

同型艦

睦月型は、以下の12隻が建造されました。

睦月（むつき）
如月（きさらぎ）
弥生（やよい）
卯月（うづき）
皐月（さつき）
水無月（みなづき）
文月（ふみづき）
長月（ながつき）
菊月（きくづき）
三日月（みかづき）
望月（もちづき）
夕月（ゆうづき）

睦月型の戦歴

睦月型は、開戦当初は第二水雷戦隊に所属していましたが、その後、中部～南太平洋の戦線や船団護衛に投入されました。太平洋戦争では、その旧式さにも関わらず、雷装と航洋性能を活かして奮戦しましたが、半数の6隻がソロモン方面で戦没しました。1941年12月の開戦時、第六水雷戦隊と第五水雷戦隊に配属され、ウェーク島攻略作戦や南洋作戦に参加しました。1942年以降は、ソロモン海を中心に輸送作戦に従事し、多くの艦が失われました。1944年末までに、全艦が太平洋戦争で失われました。

駆逐隊の変遷

睦月型駆逐艦は、複数の駆逐隊に所属し、その編成は戦況に応じて変化しました。

第三十駆逐隊：睦月、如月、弥生、卯月で編成。後に望月、夕月などが編入。如月、弥生、睦月、三日月、望月、卯月が戦没し、解隊。
第二十二駆逐隊：皐月、水無月、文月、長月で編成。後に夕凪を編入。長月、文月、水無月、皐月が戦没し、解隊。
* 第二十三駆逐隊：菊月、三日月、望月、夕月で編成。後に卯月、睦月が編入。菊月が戦没し、解隊。三日月は三十駆へ編入。

まとめ

睦月型駆逐艦は、日本海軍が建造した駆逐艦の中でも、特に重要な艦級です。日本駆逐艦として初めて61cm魚雷発射管を搭載し、太平洋戦争ではその雷撃能力を活かして奮戦しました。その一方で、大戦中に多くの艦が失われた艦級でもあります。しかし、その戦歴は、日本海軍駆逐艦史において決して忘れてはならないものです。

この文章は、睦月型駆逐艦の歴史、構造、戦歴について、詳細に記述しました。読者がこの艦級について深く理解するのに役立つことを願っています。

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