硫黄島航空基地

硫黄島航空基地は、東京都小笠原村硫黄島に位置する硫黄島飛行場を、海上自衛隊の硫黄島航空基地隊と航空自衛隊の硫黄島分屯基地が共同で運営・統制している通称です。

概要

飛行場の運営は海上自衛隊が行っていますが、基地という名称は使用されていません。所属部隊は、厚木基地の第4航空群隷下にある「硫黄島航空基地隊」です。航空自衛隊の航空機もこの飛行場を使用しており、航空自衛隊における名称は「硫黄島分屯基地」で、入間基地の分屯基地として扱われます。また、陸上自衛隊は不発弾処理のために人員を派遣しており、飛行場施設の一部はアメリカ軍の硫黄島通信所として使用されています。

滑走路は2,650m x 60mのものが1本ありますが、2,650m x 30mの平行誘導路が緊急滑走路として整備されており、主滑走路が閉鎖された際には離着陸が可能です。

海上自衛隊は、航空基地施設の維持、飛来する航空機に対する航空管制・給油・救難（小笠原諸島の急患輸送を含む）、司法警察業務、売店や食堂の運営を担当しています。航空自衛隊は、硫黄島における飛行訓練の統制や後方支援業務などを担当しています。さらに、海上自衛隊と航空自衛隊からそれぞれ医官が派遣され、共同で小笠原諸島の医療活動を支援しており、海上自衛隊の救難機に航空自衛隊の医官が同乗し、父島・母島の急患を搬送することもあります。硫黄島駐留部隊とは直接関係ありませんが、毎年夏には海上自衛隊の掃海部隊が硫黄島近海で実機雷敷設・実爆掃海訓練を実施しています。

航空自衛隊は主に訓練用の航空基地として使用しており、本土から各種実験飛行や戦闘機部隊が飛来して演習などが行われます。その他に後方支援業務として、入間基地から本島や南鳥島への輸送機も運用されています。

陸上自衛隊は、太平洋戦争中に残された不発弾などの爆発物処理を少数の隊員で行っています。

また、北関東防衛局の職員が施設整備工事を担当しています。施設の一部は、日米地位協定に基づき米軍に提供されており、硫黄島通信所として、日本本土（厚木・横田基地）における夜間離着陸訓練を含む陸上空母離着陸訓練(FCLP)が実施されることがあります。このFCLPは1991年から開始され、硫黄島での運用が困難な場合は、三沢、横田、厚木、岩国で代替運用されることになっています。

会計検査院の2020年度決算検査報告では、飛行場に新設された戦術航法装置が2年間運用されていないことが指摘されました。

沿革

1968年 6月26日：アメリカ軍から返還され、自衛隊による飛行場の運用が開始。海上自衛隊硫黄島航空基地分遣隊が設置。
1970年5月9日：硫黄島飛行場として運用開始。
1975年 10月10日：海上自衛隊硫黄島航空基地分遣隊による飛行場管制業務を開始。
1982年3月27日：海上自衛隊が硫黄島救難飛行隊を新編。
1984年1月26日：航空自衛隊が硫黄島基地隊を新編。
1986年 9月25日：海上自衛隊硫黄島航空基地分遣隊による進入管制業務を開始。
1991年 6月26日：航空基地の施設の一部を、硫黄島通信所として提供。
1992年3月31日：航空自衛隊が臨時無人機運用隊を新編。
1992年4月10日：海上自衛隊硫黄島航空基地分遣隊が硫黄島航空基地隊に改編。
1994年3月31日：航空自衛隊が無人機運用隊を新編。
1997年3月31日：航空自衛隊が無人機運用隊を廃止。
2003年 10月1日：海上自衛隊硫黄島航空基地隊によるターミナル・レーダー管制業務および着陸誘導管制業務を開始。
2007年 11月21日：硫黄島の名称変更に伴い、飛行場名がIwoto、呼び名がIwoへ変更。
2008年 3月26日：海上自衛隊体制移行による部隊再編に伴い、硫黄島救難飛行隊は第21航空群第73航空隊の硫黄島航空分遣隊に改編。
2018年 4月2日：第73航空隊の廃止に伴い、硫黄島航空分遣隊が第21航空隊隷下に編成替え。
2022年 3月1日：海上自衛隊警務隊の改編により、横須賀地方警務隊硫黄島警務分遣隊が硫黄島警務班に改編。

※現在、硫黄島航空基地隊は厚木航空基地の第4航空群隷下にある。

民間航空機の緊急着陸

硫黄島は、東京とグアム島・サイパン島を結ぶ民間航空路下に位置しており、民間機を含む緊急避難用としても利用されています。自衛隊の専用飛行場ですが、国際航空運送協会の3レターコード（IWO）が設定されています。

実際に航空会社の旅客機が緊急着陸した事例として、以下のようなものがあります。

2003年3月30日：グアム発仙台行きのコンチネンタル航空931便（ボーイング737）が、エンジン片方停止により緊急着陸。
2014年11月9日：大阪/関西発グアム行きのデルタ航空294便（ボーイング757-200）が、左エンジンの不具合により緊急着陸。
* 2016年3月4日：ソウル/仁川発サイパン行きのチェジュ航空3402便（ボーイング737-800）が、右エンジンの不具合により緊急着陸。

もう一度検索