穴熊囲い

穴熊囲い：堅牢な防御と独自の攻め

概要

穴熊囲いは、将棋における代表的な囲いのひとつです。その名称は、玉将を角に囲い込む様子が、熊が穴に隠れるように見えることから由来しています。古くは「岩屋」や「獅子のホラ入り」などとも呼ばれていました。

特徴は、なんといってもその堅牢さです。正方形にコンパクトにまとまった形状で、王手がかかりにくく、横からの攻撃に非常に強いとされています。ただし、完成までには多くの手数が必要で、その過程で攻撃を受けるリスクも伴います。

歴史

穴熊囲いは、元々は振り飛車戦法で使用される囲いとして江戸時代から存在していました。しかし、1960年代頃まではプロ棋士からは評価が低く、強くなるためには避けるべき戦法と見なされていた時期もありました。

転機となったのは1970年代。大内延介九段らの活躍により、穴熊囲いの実力が再評価され始めます。その後、田中寅彦九段らによって居飛車穴熊が確立されると、その堅牢さと独特の攻めから、振り飛車陣営にとって大きな脅威となりました。

現代将棋においては、AIの進化により、プロの対局では相居飛車穴熊は減少傾向にありますが、依然としてアマチュアやネット将棋では広く用いられ、重要な戦術となっています。

手順

穴熊囲いの手順は、まず美濃囲いと同様の手順で玉を囲い込み、その後、香車を上げて玉を角に移動させ、銀で穴を塞ぐという流れになります。完成形は、金と銀が密集した非常に堅い囲いとなります。

長所

堅固な防御: 金銀が連結して密集しているため、特に横からの攻撃に強い。
王手がかかりにくい: 玉が角にあり、そのままでは王手がかからないため、じっくりと攻めを組み立てられる。
独特の攻め: 堅い守りを活かした、大駒を犠牲にするなど大胆な作戦も可能。終盤での逆転力も高い。

短所

囲い完成までの手数: 完成までに時間がかかるため、その間に攻撃を受ける危険性が高い。
駒の偏り: 囲いが完成した状態では、駒が一方に集中し、自陣に隙が生じやすい。
玉の身動き: 玉が角にあり、身動きが取りにくいため、相手の攻めに対応しにくい場合もある。

攻略法

穴熊囲いを攻略するには、小駒を使った攻めが有効です。特に桂馬や香車、歩兵は、取られても守備に使いにくいという特徴があります。「と金」を使った横からの攻めも有力です。また、端攻めも有効で、一間飛車や地下鉄飛車などの戦法も存在します。

居飛車穴熊対策として有名な戦法に、四間飛車の「藤井システム」があります。これは、相手の穴熊が完成する前に、角道と端攻めを組み合わせることで、速やかに攻め崩す戦法です。

バリエーション

穴熊囲いには、使用する金銀の数や配置によって様々なバリエーションが存在します。金銀2枚のシンプルなものから、金銀4枚を使った堅固なものまで、棋風や戦況に合わせて使い分けられます。近年では、広瀬章人八段が用いた「現代穴熊」なども注目されています。

まとめ

穴熊囲いは、その堅牢さと独特の攻めが特徴の囲いです。完成までの時間を要する点が弱点となりますが、完成すれば非常に強力な防御力を発揮します。その堅実さと、時として大胆な攻めを可能にする点が、穴熊囲いの魅力と言えるでしょう。現代将棋においても、その有効性は依然として高く評価されています。

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