藤原師氏

藤原 師氏（ふじわら の もろうじ）

藤原師氏は、延喜13年（913年）に生まれ、天禄元年（970年）に亡くなった平安時代前期から中期の公卿であり、歌人でもあります。彼は関白・太政大臣であった藤原忠平の四男であり、邸宅の名前「桃園第」から「桃園大納言」や「枇杷大納言」としても知られています。彼の経歴は、平安時代の公卿の生き様と歌の力を示す貴重な資料となっています。

経歴

師氏は、延長6年（928年）に16歳で叙爵され、翌年には侍従として任命されました。その後、承平4年（934年）に従五位上・左近衛少将に叙任され、天慶2年（939年）には従四位下、天慶4年（941年）には蔵人頭兼左近衛中将に昇進しました。天慶7年（944年）には32歳で参議に任ぜられ、公卿としての地位を得ることとなります。

しかし、師氏の昇進は一筋縄ではいきませんでした。彼の弟である師尹が天慶8年（945年）に26歳で参議に任ぜられ、この時から彼の官職は弟よりも下位になることが常態化しました。天暦2年（948年）には師尹が権中納言に昇進し、彼の官位はさらに低下しました。天暦9年（955年）には従三位・権中納言、天徳4年（960年）には中納言、康保元年（964年）には正三位に昇進しますが、康保4年（967年）には兄師輔の子・伊尹が権大納言に任ぜられ、師氏は苦境に立たされることとなります。

安和2年（969年）に権大納言、天禄元年（970年）には大納言に至りますが、同年7月14日に58年の生涯を終えました。最終的には大納言正三位皇太子傅としてこの世を去り、生前は多くの歌を残しましたが、官職においては兄弟たちに遅れを取る形でした。

人物

師氏の人物像は興味深く、『空也誄』によると、彼は空也と二世の契りを結んでいたと伝えられています。彼の死に際し、空也が閻魔大王に送る牒文を書いたという伝説も残されています。また、『蜻蛉日記』には、彼が宇治に別荘を持っていたことが記されていますが、死後その別荘は荒廃したとのことです。

歌人としての才能も持ち合わせており、『和歌色葉集』では名誉歌仙とされ、さらに『後撰和歌集』や『新古今和歌集』などの勅撰和歌集には11首が収められています。また、自身で編纂した私家集『海人手古良（あまのてこら）集（師氏集）』も有名です。

系譜

藤原師氏の家系は、父が藤原忠平、母が源昭子で、源能有の娘です。彼の正室には醍醐天皇の皇女である靖子内親王がいます。この結婚は特に重要であり、師氏は内親王の降嫁に成功した二人目の人物でした。その後、彼には数人の子供があり、男子は藤原親賢、藤原保信、藤原近信などがいます。

彼の家族は、平安時代の公卿の中でも特に大きな影響力を持つ一族であり、兄弟たちが高い地位を築く中で、師氏の官位が大納言にとどまったことは、当時の官職の厳しい競争を示していると言えます。

参考文献

• - 山口博「藤原師氏と海人手子良」『王朝歌壇の研究 : 村上冷泉円融朝篇』桜楓社、1967年。
• - 花上和広「藤原師通の和歌について」『総研大文化科学研究』第14号、2018年。

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