源能有

源能有(みなもと の よしあり)



源能有は、平安時代前期に活躍した公卿であり、文徳天皇皇子として生まれました。その生涯は、政治家、官僚、文化人としての多面的な才能を示すものでした。

生涯



承和12年(845年)に誕生した能有は、仁寿3年(853年)に兄弟と共に源姓を賜り、臣籍降下しました。その後、順調に昇進を重ね、貞観14年(872年)には28歳で参議に任ぜられ、公卿の仲間入りを果たしました。清和天皇陽成天皇の治世をよく補佐し、その能力は藤原基経にも認められ、娘を娶っています。元慶元年(877年)には従三位元慶6年(882年)には中納言に昇進し、左兵衛督や左近衛中将などの武官も兼任しました。

宇多天皇の時代になっても、能有は引き続き重用され、寛平2年(890年)に正三位寛平3年(891年)には大納言に昇進しました。宇多天皇からの信頼は非常に厚く、太政官符を発給する際の上卿を28回も務めました。また、『日本三代実録』の編纂開始時には、左大臣源融右[[大臣]]藤原良世といった先任の上卿がいるにも関わらず、撰国史所総裁に任命されました。さらに、位階昇進の人事草案を提出する擬階奏も行っています。これらの役職は本来、摂関もしくは一上が務める慣例であったため、藤原基経の没後、源融藤原良世が高齢であったこともあり、能有が事実上の政権担当者として活躍したと考えられています。寛平8年(896年)には右[[大臣]]に昇進しましたが、翌寛平9年(897年)に53歳で病のためこの世を去りました。死後、正二位が贈られました。

人物



能有は、朝廷の儀礼や政務に精通した有能な人物として知られていました。菅原道真とも親交があり、道真の詩文集には、能有の依頼で自宅のを能有邸に移植した際の漢詩や、能有を追悼する漢詩が収録されています。宇多天皇も、能有の死を深く悲しみ、その衝撃について語っています。

文化人として



勅撰歌人としても才能を発揮し、『古今[[和歌集]]』には3首、『勅撰[[和歌集]]』には計4首の和歌が選ばれています。

官歴



仁寿3年(853年)6月11日:臣籍降下(源朝臣)
貞観2年(860年)9月19日:山城国宇治郡の荒廃地を賜る
貞観4年(862年)正月7日:従四位
貞観5年(863年)4月7日:次侍従
貞観8年(866年)正月13日:加賀守
貞観11年(869年)2月16日:大蔵卿
貞観12年(870年)正月25日:美濃権守
貞観14年(872年)8月25日:参議大蔵卿美濃権守如元、8月29日:兼左兵衛督
貞観15年(873年)正月15日:兼美濃守
貞観16年(874年)2月29日:右大弁、兼備中権守、余官如故
貞観17年(875年)正月7日:正四位
貞観18年(876年)正月14日:兼左近衛中将、権守如元
元慶元年(877年)11月21日:従三位
元慶2年(878年)正月11日:左衛門督
元慶3年(879年)正月11日:兼美濃権守、4月5日:検非違使別当
元慶4年(880年)正月11日:兼近江権守
元慶6年(882年)正月10日:中納言
仁和4年(888年)9月9日:兼民部卿検非違使別当如元、止左衛門督
仁和5年(889年)正月16日:兼右近衛大将、4月:兼皇太子傅
寛平2年(890年)正月7日:正三位
寛平3年(891年)3月19日:大納言
寛平4年(892年)5月10日:始奏弁官雑事
寛平5年(893年)正月11日:兼按察使、2月22日:兼左近衛大将、4月13日:兼皇太子傅
寛平7年(895年)8月16日:兼民部卿、12月3日:五畿内諸国別当
寛平8年(896年)7月16日:右[[大臣]]
寛平9年(897年)6月8日:薨去(右[[大臣]]正三位近衛大将東宮傅)、6月16日:贈正二位

系譜



父:文徳天皇
母:伴氏
妻:藤原滋子
女子:源厳子(清和天皇女御)
妻:藤原基経の娘
女子:源昭子(藤原忠平室)
妻:大伴和武多麻呂の娘
生母不詳の子女
男子:源当元
男子:源当時
男子:源当鑑
男子:源当方
男子:源当年
男子:源当純
男子:源当季
女子:源柄子(貞純親王室)

能有の子孫からは、保元の乱で活躍した源季実が出ています。また、娘の昭子は藤原忠平の妻となり、師輔らを産み、柄子は貞純親王の妻となり、源経基を産んでいます。これにより、能有の血は、藤原摂関家と清和[[源氏]]という二つの大族に受け継がれることとなりました。

参考文献



森田悌平安時代政治史研究』吉川弘文館、1978年
遠藤慶太『平安勅撰史書研究』皇學館大学出版部、2006年
武田祐吉・佐藤謙三 訳『読み下し 日本三代実録』上下巻、戎光祥出版、2009年
黒板勝美・国史大系編修会 編『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
* 黒板勝美・国史大系編修会 編『尊卑分脈 第三篇』吉川弘文館、1987年

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