角閃石

角閃石：多様な顔を持つケイ酸塩鉱物

角閃石は、ケイ酸塩鉱物の中でも特に種類が豊富で、複雑な分類体系を持つ鉱物グループです。その化学組成や結晶構造は多様性に富み、現在までに180種類以上が確認されています。水酸基（OH⁻）を含む含水鉱物としても知られています。

複雑な分類体系

国際[[鉱物学連合]]（IMA）により、2012年には角閃石グループが187種類に整理されました。しかし、新たな発見や分類の見直しが行われているため、その数は増加し続けています。

従来、よく知られていた「普通角閃石」は、現在では「苦土普通角閃石グループ」として分類されています。多くのグループでは、マグネシウムとアルミニウムを端成分とする鉱物名が基準となっていますが、例外もあります。ヘスティング閃石（鉄とアルミニウム）、アルベゾン閃石とリーベック閃石（鉄と鉄）など、端成分が異なる鉱物も存在します。また、緑閃石は透閃石に含まれるべきですが、色彩や産状の違いから独立種として扱われています。このような分類上の不一致は、しばしば混乱を招く原因となっています。

鉱物学者である堀秀道氏は、角閃石の細分化が、中等教育や鉱物愛好家にとって学習の障壁となり、角閃石への関心を低めることを懸念しています。そこで、学術的な分類とは別に、野外における角閃石の呼び方の基準を作ることを提案していますが、実現の困難さを指摘しています。

主要な角閃石グループと代表的な鉱物

角閃石グループは、化学組成に基づき複数のサブグループに分類されます。以下に主要なグループと代表的な鉱物を示します。詳細な一覧は、鉱物学専門書を参照ください。

グループ1：Mg-Fe-Mn-Li斜方角閃石サブグループ、Mg-Mn-Fe-Li単斜角閃石サブグループ
礬土直閃石 (Gedrite)
ソーダ直閃石 (Sodicanthophyllite)
マンガノカミントン閃石 (Manganocummingtonite)
マンガノグリュネル閃石 (Manganogrunerite)

グループ2：カルシウム角閃石サブグループ
このグループには、カンニロ閃石グループ、エデン閃石グループ、ヘスティング閃石グループ、苦土普通角閃石グループ、パーガス閃石グループ、定永閃石グループ、透閃石-緑閃石グループ、ツェルマク閃石グループなど、多くの鉱物が含まれます。

グループ3：ソーダ灰角閃石サブグループ
このグループには、バロワ閃石グループ、カトフォラ閃石グループ、リヒター閃石グループ、タラマ閃石グループ、ウィンチ閃石グループが含まれます。

グループ4：ソーダ角閃石サブグループ
このグループには、アルベゾン閃石グループ、エッケルマン閃石グループ、藍閃石グループ、リーキ閃石グループ、ニビョー閃石グループ、リーベック閃石グループが含まれます。

グループ5：リチウム角閃石サブグループ
このグループには、単斜ホルムクイスト閃石グループ、ホルムクイスト閃石グループ、ペドリザ閃石グループ、直閃石グループ、ケルスート閃石グループが含まれます。

角閃石の性質と特徴

角閃石は、無[[色]]、緑色、褐色、青色など様々な色を呈し、ガラス光沢を持ちます。結晶構造は単斜晶系または斜方晶系で、柱状の結晶となります。輝石と似た形状ですが、約120°で交わる2方向のへき開によって区別できます（輝石は約90°）。比重は3.0～3.5、モース硬度は5～6です。

角閃石の歴史と名称

角閃石という名称は、1797年にルネ＝ジュスト・アユイによって命名されました。彼はギリシャ語のamphiballein（両側をたたく、投げつける）を語源としており、「不確かな」「あいまいな」という意味を意図していたとされています。日本では、明治時代に「陰精石」という訳語が用いられた時期もありましたが、後に「角閃石」が定着しました。

日本における角閃石研究

日本でも多くの角閃石が発見されており、神津閃石、カリ第一鉄定永閃石など、日本産新鉱物として国際的に認められたものも多数存在します。これらの発見は、日本の地質学研究における重要な成果となっています。

角閃石の産出

角閃石は一般的な造岩[[鉱物]]であり、火成岩（安山岩、斑れい岩など）や変成岩（緑色片岩、角閃岩など）に広く分布しています。最も多く産出するのは苦土普通角閃石または第一鉄普通角閃石であり、岩石名に「角閃石」が含まれる場合、多くはこれらの鉱物を指しています。

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