電車とバスの博物館

神奈川県川崎市宮前区に位置する「電車とバスの博物館」は、東急電鉄が運営する鉄道・バス関連の保存・展示施設です。東急田園都市線宮崎台駅のすぐ近く、高架下を利用して設けられており、改札口から直接アクセスできる入口も備えています。

この博物館の大きな特徴は、単に車両を展示するだけでなく、来館者が実際に体験できるコンテンツが充実している点です。かつて東急線を走っていた電車やバスの運転、さらには飛行機の操縦といった、ユニークなシミュレータが設置されていました（一部はリニューアルにより終了）。

沿革

博物館の歴史は、1982年（昭和57年）4月3日に東急電鉄の創立60周年を記念して、川崎市高津区の高津駅高架下に開設されたことに始まります。開館当初の入館料は大人・子供ともにわずか10円でした。

1991年（平成3年）には、高津駅構内に3号館が増設され、ホールや図書室、売店などが移設されました。この際に、東急コーチバスやYS-11 飛行機のフライトシミュレータが新たに導入されたほか、館外に展示されていたデハ204形電車が館内に移され休憩所として利用されるようになりました。また、モハ517号車のカットボディが運転シミュレータに改造されています。

2002年（平成14年）9月1日からは、田園都市線の複々線化工事に伴い、現在の宮崎台への移転準備のため一時休館となりました。

翌2003年（平成15年）3月21日、現在の宮崎台駅高架下へ移転し、リニューアルオープンしました。この移転に伴い、入館料が改定されたほか、8090系電車の運転シミュレータの映像が更新されています。

その後も、2009年（平成21年）には8090系シミュレータの映像が再度更新されるなど、設備の改修が行われました。

2015年（平成27年）9月27日から再びリニューアル工事のため休館し、2016年（平成28年）2月19日に再開。このリニューアルでは、旧「博物館」をA棟、旧「イベント館」をB棟と改称し、イベント館の設備が常設展示化されました。この際に、モハ510形とYS-11のシミュレータは提供を終了しています。また、休館日が従来の月曜日から木曜日に変更され、入館料も再度改定されました。

2019年（令和元年）10月1日、東急株式会社の鉄道事業分割に伴い、博物館の運営は東急電鉄株式会社に移管されています。

主な展示・体験

博物館には、東急電鉄や関連会社の歴史を物語る貴重な車両や設備が数多く展示されており、実際に触れたり操作したりできる体験型の展示が人気です。

電車関連

デハ200形デハ204：レトロな外観のこの車両は、館内に展示され休憩スペースとして開放されています。高津時代には館外や館内に展示場所を移しながら親しまれてきました。
モハ510形モハ510：1989年に復元された車両で、移転後は車内も公開されるようになりました。
デハ3450形デハ3456（カットボディ）：車両の一部を切り取った状態で展示されており、運転台や客用ドア、パンタグラフなどの操作を体験できます。車内放送マイクもあり、車掌気分を味わうことも可能です。
8090系クハ8090 運転シミュレータ：かつて東急線を走っていた8090系の運転を体験できるシミュレータです。リニューアルにより映像や運転台の機器が更新され、田園都市線、大井町線、東横線から運転区間を選択できるようになりました。有料・予約制で、より本格的な運転体験が可能です。

バス関連

日野RB10（路線バス）：東急バスの旧塗装で展示されている車両です。車体後部の床が透明になっており、エンジンや足回りなどの構造を見ることができます。方向幕や放送装置、降車ブザーの操作も体験できます。
三菱ふそうB623B（東急コーチ）：日本初のデマンドバスとして知られる東急コーチの初期車両です。運転シミュレータとして利用されており、鷺沼線の運転を体験できます。

飛行機関連

日本航空機製造 YS-11-109 JA8662（カットボディ）：東急電鉄がかつて親会社だった日本エアシステムのYS-11型機の一部が展示されています。東亜国内航空時代の塗装が再現されています。かつてはフライトシミュレータが設置されていましたが、2016年のリニューアルで撤去され、操縦席内部の見学もできなくなりました。

その他

HOゲージ模型電車の運転：HOゲージサイズの鉄道模型を運転できる設備です。運転台からの視点をモニターで見ながら走行できます。
Nゲージレイアウト：Nゲージサイズの鉄道模型を運転できるレイアウトがあります（有料）。自分の車両を持ち込んで運転することも可能です。
高津駅旧駅舎の再現：昭和30〜40年代の高津駅の改札口や出札窓口が再現されています。
踏切：入口前に設置されており、田園都市線の電車が通過する際に警報機が鳴り、遮断機が下がる仕組みになっています。
図書資料：リニューアルにより規模は縮小されましたが、鉄道関連の雑誌などの資料の一部が閲覧可能です。
* マスコットキャラクター：現在は、東急の公式キャラクターである「のるるん」と「ノッテちゃん」が博物館のマスコットとして活躍しています。

電車とバスの博物館は、東急電鉄の歴史や、かつて活躍した車両・設備に触れ、学べるだけでなく、運転体験などを通じて鉄道やバスへの興味を深めることができる施設として、多くの人々、特に家族連れに親しまれています。

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