あやめ (列車)

特急「あやめ」について

特急「あやめ」は、かつて東日本旅客鉄道（JR東日本）が、東京駅と千葉県北東部や茨城県鹿行地域を結んで運行していた特急列車です。総武本線・成田線を経由し、2015年3月13日に定期運行を終了しました。

概要

「あやめ」は、1975年 3月10日に成田線成田駅 - 松岸駅間の電化完成を機に、東京駅 - 鹿島神宮駅間で運行を開始しました。当初は4往復で、エル特急にも指定されていました。1982年には急行「鹿島」の1往復を統合し、5往復体制となりました。

しかし、1985年3月には佐原駅 - 鹿島神宮駅間が普通列車となり、1993年7月と1994年12月にはさらに本数が削減され、最終的には1往復のみの運行となり、エル特急の指定も解除されました。2004年10月には、成田線方面の定期特急列車名称を統一するため、「ホームタウン成田」と「すいごう」が「あやめ」に名称変更されました。

運行概況

廃止時の「あやめ」は、東京駅 - 鹿島神宮駅間と東京駅 - 銚子駅間でそれぞれ1往復が運行されていました。上り列車は朝に、下り列車は夜間に設定されていました。佐原駅以遠は各駅停車の普通列車として運行していました。

「あやめ3号」は、平日のみ東京駅 - 佐倉駅間で「しおさい17号」と併結して運行していました。

停車駅

鹿島神宮駅 - 東京駅間

鹿島神宮駅 - 延方駅 - 潮来駅 - 十二橋駅 - 香取駅 - 佐原駅 - 滑河駅 - 成田駅 - 佐倉駅 - 千葉駅 - 錦糸町駅 - 東京駅

銚子駅 - 東京駅間

銚子駅 - 松岸駅 - 椎柴駅 - 下総豊里駅 - 下総橘駅 - 笹川駅 - 小見川駅 - 水郷駅 - 香取駅 - 佐原駅 - 滑河駅 - 成田駅 - 佐倉駅 - 四街道駅 - 千葉駅 - 錦糸町駅 - 東京駅

※ （）内は普通列車として各駅に停車
※ 四街道駅は3号のみ停車

使用車両・編成

全列車が幕張車両センター所属のE257系500番台5両編成で運行されていました。普通車自由席のみで、グリーン車や座席指定席は連結されていませんでした。ただし、臨時列車では座席指定席が設定される場合もありました。また、臨時列車や車両故障時には、255系が使用されることもありました。

運行開始当初は183系電車9両編成で、グリーン車も連結されていましたが、1985年にグリーン車の連結が中止され、普通車のみの6両編成となりました。

担当車掌

佐倉運輸区が全線の車掌業務を担当していました。

臨時列車

「あやめ」には、様々な臨時列車が運行されていました。臨時列車は、末端区間が普通列車とならないもの（潮来駅には停車）や、定期列車が通過する船橋駅・津田沼駅にも停車するものが存在しました。

主な臨時列車

犬吠初日の出号: 新宿駅 - 銚子駅間で運行され、新小岩駅・市川駅・稲毛駅にも停車しました。
すいごう: 笹川駅にも停車しました。
さわら号・こうざき酒蔵まつり号: 酒々井駅（2013年のみ）・下総神崎駅にも停車しました。
あやめ祭り: 毎年6月の土曜・休日に、あやめ祭り開催に合わせて運行されました。当初は「あやめ祭り号」として運転されていましたが、2009年からは「あやめ」として運転されるようになりました。2015年の定期列車廃止後は、「あやめ祭り号」の名称で運行されています。
初詣・初日の出臨時列車: 毎年1月1日に「犬吠初日の出号」が運行され、過去には「成田山初詣号」も運行されていました。
佐原夏祭り号・佐原秋祭り号: 佐原の大祭に合わせて運行され、パッケージツアーが企画されることもありました。
さわら・かしま号・こうざき酒蔵まつり号: 観光シーズンに運行され、2015年3月の定期列車廃止後も「こうざき酒蔵まつり号」として運行が継続されました。
北総江戸紀行: 2018年より、日本遺産「北総四都市江戸紀行」の成田・佐原への直通列車として運行されています。E257系5500番台が使用され、全車指定席でした。
その他: あやめ101・102号、コスモスさわら号、ピクニックあやめ号、すいごう、小江戸佐原号、おさんぽ成田・佐原号などが運行されていました。

成田線・鹿島線優等列車沿革

成田線・鹿島線では、「あやめ」以前にも様々な優等列車が運行されてきました。以下にその主な沿革を記します。

1930年代: 「水郷めぐり号」が新緑列車として運行されました。
1950年代: 「銀鱗号」が釣り客向けに、「成田号」「房総の休日号」が臨時快速として運行されました。
1960年代: 準急「総武」「水郷」が運行を開始し、その後急行列車に昇格しました。鹿島線開業に伴い、鹿島神宮駅発着列車も運行を開始しました。
1975年: 成田線電化に伴い、特急「あやめ」が運行を開始し、急行「鹿島」「水郷」も運行されました。
1980年代: 「あやめ」に急行「鹿島」が編入され、「水郷」は特急「すいごう」に格上げされました。
1990年代: 「成田エクスプレス」の運行開始に伴い、「あやめ」のスピードアップが図られました。しかし、利用客減少に伴い、「あやめ」と「すいごう」の減便が進みました。
2000年代: 「ホームタウン成田」・「すいごう」が「あやめ」に統一されました。E257系500番台が投入され、全車禁煙化されました。
2010年代: 「あやめ」は減便され、最終的に2015年3月に定期運行を終了しました。

参考文献

『JR特急10年の歩み』弘済出版社、1997年5月15日。ISBN 4-330-45697-4。