いろはにほへと (テレビドラマ)とは？意味をやさしく解説

いろはにほへと

『いろはにほへと』は、1959年にラジオ東京テレビ（現・TBSテレビ）で放送されたテレビドラマ、そして翌1960年に松竹で公開された映画です。この作品は、保全経済会事件をモデルとし、政治不信や社会の不条理を鋭く描き出したことで、放送当時から大きな話題を呼びました。

あらすじ

物語は、理事長の天野竜一が率いる匿名組合投資経済会を中心に展開します。この経済会は、多くの庶民から資金を集め、高額配当を約束することで、庶民のための投資銀行として名を馳せていました。しかし、警視庁捜査二課の刑事である松本宗治は、この経済会の実態に疑問を抱き、長年にわたり内偵を続けています。松本は、経済会の不正を暴こうとしますが、なかなか確たる証拠を掴むことができません。物語は、経済会の内部に潜む闇と、それを追う刑事の執念を描き出します。

テレビドラマ版

1959年11月20日に三洋電機の一社提供番組『サンヨーテレビ劇場』で放送されたテレビドラマ版は、岡本愛彦が演出を担当しました。脚本は、映画版と同様に橋本忍が手がけています。音楽は市場幸介、冬木透が担当しました。岡本と橋本は、前年に同じくTBSで制作された『私は貝になりたい』でもコンビを組んでおり、本作でもその才能を発揮しました。

このテレビドラマは、第14回文部省芸術祭参加作品として放送され、視聴者から大きな反響を呼びました。その結果、『私は貝になりたい』に続き、文部大臣賞芸術祭賞（現・芸術祭大賞）を受賞するという快挙を成し遂げました。その後、1975年には「TBSテレビ開局20周年芸術祭ドラマシリーズ」の一環として再放送もされています。現在、このドラマは横浜市にある放送ライブラリーで無料で閲覧可能です。

主なキャスト

松本宗治：伊藤雄之助
天野竜一：芦田伸介
西垣：宮口精二
黒河：殿山泰司
磯辺：三井弘次
三宅：織田政雄
松本満子：桜むつ子
松本美沙：香川京子
松本ムネ：飯田蝶子
およね：藤間紫

映画版

テレビドラマ版の成功を受けて、1960年には映画版が制作されました。映画版では、監督に中村登、脚本には橋本忍と国弘威雄が名を連ねています。撮影は、小津安二郎作品で知られる厚田雄春が担当しました。音楽は黛敏郎が担当し、豪華なスタッフが集結しました。

映画版では、佐田啓二が天野竜一役を演じた以外は、テレビドラマ版とほぼ同じキャストが起用されています。映画版は、第15回毎日映画コンクールで脚本賞を受賞しましたが、現在はVHSでのソフト化も廃盤となっています。

主なキャスト

松本宗治：伊藤雄之助
天野竜一：佐田啓二
西垣：宮口精二
黒河：殿山泰司
磯辺：三井弘次
三宅：織田政雄
松本満子：桜むつ子
松本美沙：城山順子
松本ムネ：浦辺粂子
芥：諸角啓二郎
およね：藤間紫
皆川：田村保
大崎：柳永二郎
高森：佐々木孝丸
太平電鉄社長：北竜二
商人A：中村是好
関西の支店長：小笠原章二郎
チンピラ：小瀬朗

作品の評価と影響

『いろはにほへと』は、テレビドラマと映画の両方で、社会の不条理や人間の欲望を深く描いた作品として、高い評価を得ました。特に、経済事件を背景にした物語は、当時の社会情勢を反映し、多くの人々に強い印象を与えました。橋本忍の脚本は、社会の矛盾を鋭く描き出し、観る者に深い問いを投げかけました。また、豪華なキャストとスタッフが、作品の質を高め、現在でも語り継がれる名作となっています。

いろはにほへと (テレビドラマ)