おおぐま座ウプシロン星

おおぐま座υ星

おおぐま座υ星（おおぐまざウプシロンせい、υ Ursae Majoris、υ UMa）は、北天の星座、おおぐま座に属する恒星です。その明るさは見かけの等級で3.8等と観測されており、晴れた夜には肉眼でもその姿を捉えることができます。地球からの距離は、年周視差の測定に基づくと、およそ115光年と推定されています。

この恒星は単独の星ではなく、質量が小さい伴星を伴う連星系を構成しています。また、連星系の主星は、自身の明るさを周期的に変化させる「たて座δ型変光星」に分類されています。

星系とその発見

おおぐま座υ星が二重星であることが確認されたのは19世紀のことです。ロシア出身の天文学者、オットー・フォン・シュトルーヴェによって、現在の確認がなされました。連星系の相手である伴星は、主星から見て北西方向に約12秒角離れた位置に見え、その明るさは約12等級です。

これらの二つの星の相対的な位置関係は、それぞれの星が持つ大きな固有運動にもかかわらず、1世紀以上にわたってほとんど変化していません。この事実は、両者が単に同じ方向に見えているだけではなく、実際に重力によって結びついた真の連星であることを強く示唆しています。現時点で詳細な軌道要素はまだ決定されていませんが、見かけの離角から推定される二つの星の間の距離は、太陽から地球までの平均距離の420倍（420 au）以上に相当すると考えられています。このような広い軌道を持つ連星の公転周期は、一般的に非常に長く、おおぐま座υ星の連星系では5000年を下回ることはないと予想されています。

主星と伴星の性質

連星系の主星であるおおぐま座υ星Aは、太陽よりも質量が大きく進化の進んだF型準巨星に分類されており、そのスペクトル型はF2 IVとされています。観測に基づくと、主星の表面温度はおよそ7130 K、半径は太陽の約2.8倍、そして質量は太陽の約2.2倍と見積もられています。この星の大きな特徴の一つは、その高速な自転です。測定された自転速度は124 km/sを超え、これは太陽の自転速度と比較すると非常に速い値です。この高速自転のため、主星の自転周期は約1.2日と非常に短くなっています。

一方、伴星のおおぐま座υ星Bは、主星とは対照的に、質量が太陽の約4割程度と推定される小さな星です。スペクトル型はM0と分類されており、これはおそらく赤色矮星に相当すると考えられています。

変光する主星

先述の通り、主星のおおぐま座υ星Aはたて座δ型に分類される脈動変光星です。その変光性は1960年代に、ウィルソン山天文台やパロマー天文台で行われた明るいF型星の精密な測光観測の中で偶然発見されました。詳しい光度曲線の解析の結果、おおぐま座υ星Aは、約0.1327日（つまり3.18時間）という非常に短い周期で、約0.1等級以下のわずかな明るさの変化を示していることが明らかになりました。

変光の振幅は、典型的な値としては0.05等級程度ですが、観測する周期によってその振幅が小さくない変化を示すことも報告されています。最も顕著な明るさの変化が見られるのは0.1327日周期に対応するものですが、この星では他にも複数の異なる周期での変光が検出されており、その内部構造や進化段階を探る上で重要な情報を提供しています。

歴史と文化の中の名称

おおぐま座υ星は、古くから様々な文化の中で言及されてきました。アラビアの天文学では、おおぐま座τ星など他の数個の星と共に、アステリズム「al-ḥauḍ」（アル=ハウド）の一部を形成していました。この名前は「泉」を意味します。また、アメリカの博物学者E.H.アレンは、この星を含む別のアステリズムを「Sarīr Banāt al Na'ash」（悲しむ者たちの玉座）と呼んでいたと紹介しています。現代では、ジェット推進研究所が発行した星表「A Reduced Star Catalog Containing 537 Named Stars」において、アル=ハウドを構成する7つの星の一つとして、おおぐま座υ星に「Alhaud VI」という固有名称が与えられています。

中国の天文学において、おおぐま座υ星は、天の宮城における六官とその職務を象徴するとされる星官「文昌」（拼音: Wén Chāng、ウェンチャン）を構成する星の一つです。この星官は、おおぐま座φ星、θ星、15番星、18番星などと共に形成されます。おおぐま座υ星自身は、文昌を構成する星の2番目にあたることから、「文昌二」（拼音: Wén Chāng èr、ウェンチャンアー）と呼ばれています。

これらの多様な名称や位置づけは、おおぐま座υ星が古くから人々に認識され、その文化や天文学において一定の役割を果たしてきたことを物語っています。

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