おおすみ衝突事故

おおすみ衝突事故

2014年1月15日、広島県大竹市阿多田島北東沖で、海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」とプレジャーボート「とびうお」が衝突し、「とびうお」の船長と乗客2名が死亡するという痛ましい事故が発生しました。

事故の経緯

事故当日の朝、「おおすみ」は定期整備のため呉基地を出航し、三井造船玉野事業所へ向かっていました。一方、「とびうお」は広島市のボートパークを出港し、釣り客を乗せていました。

「おおすみ」は宮島と能美島の間を通過後、速度を上げ、南へ進路をとっていました。「とびうお」は南南西に進んでおり、両船は阿多田島沖で衝突しました。

衝突後、「おおすみ」は海上保安庁に通報し、救助活動が開始されました。しかし、「とびうお」の乗員4人のうち、2人が心肺停止の状態で発見され、後に死亡が確認されました。この事故は、総理官邸や防衛省でも対策本部が設置され、対応にあたりました。

時系列詳細

6:30頃:「おおすみ」が呉基地を出航。
6:52:「とびうお」の所有者がボートパーク広島のゲートを通過。
7:43:「おおすみ」が宮島と能美島の間を南西向きに通過。
8:00頃: 阿多田島北東沖で「おおすみ」と「とびうお」が衝突。
8:01: 海上保安庁に事故を通報。
8:06: 海上幕僚監部に通報。
8:20: 官房長官、防衛大臣らに報告。
8:29: 「とびうお」の乗員4人の救助終了。
8:53: 心肺停止の2名を海上保安庁の巡視艇に引き渡し。
23:10頃:「とびうお」の船長が死亡。
1月16日2時前:「とびうお」の乗客の1人が死亡。

事故後の調査

事故発生後、運輸安全委員会が船舶事故調査官を派遣し、事故原因の調査を開始しました。海上自衛隊も独自に調査を行いました。運輸安全委員会の報告書では、「おおすみ」が針路と速度を維持していた一方、「とびうお」が「おおすみ」の左舷前方から右に転針し、接近したことが衝突の原因とされました。

事故原因

救助された釣り客の証言や、船舶自動識別装置（AIS）の記録から、以下の状況が判明しました。

「とびうお」は衝突直前に針路を右に変えた。
「おおすみ」は衝突前に減速、右に旋回しようとしたが間に合わなかった。
「おおすみ」は衝突約15分前に加速していた。
衝突の約1分前におおすみが減速を始めたことが音声記録からわかっている。

また、阿多田島からの目撃者は、「釣り船が後方から接近するようだった」と証言しています。さらに、「おおすみ」の左側に死角があるという指摘もありましたが、実際には見張り員が配置され、艦橋内との通信手段も確保されていました。

海上衝突予防法

海上での衝突防止のためのルールである海上衝突予防法では、以下のように定められています。

追い越す場合は、追い越し側が安全に避ける。
正面衝突しそうな場合は、互いに右によける。
横切る場合は、右側に見る船が回避する。
針路を変える際には、汽笛で合図を送る。
相手の船の動きが分からない場合は、危険を知らせるために汽笛を鳴らす。

その他の事実

「とびうお」の乗員は救命胴衣を着用していなかった。
「とびうお」にはレーダーとGPSが搭載されていたが、GPSの記録は復元できなかった。
「おおすみ」の汽笛は5回鳴らされていたことが音声記録から判明。
広島地方検察庁は、事故の原因は「とびうお」が衝突直前に針路を変えたこととし、「おおすみ」の艦長らを不起訴処分とした。

まとめ

この事故は、プレジャーボートの不適切な操船が主な原因であると結論付けられました。しかし、海上での船舶の安全航行に関する意識を高める必要性を示唆する事故となりました。

関連項目

軍艦の事故
米原潜当て逃げ事件
なだしお事件
えひめ丸事故
イージス艦衝突事故
カリナ・スター
玄界灘海難事故
米艦コール襲撃事件

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