その壁を砕け

映画『その壁を砕け』解説

『その壁を砕け』は、1959年6月23日に公開された日活製作のモノクロ映画です。監督は中平康、脚本は新藤兼人が担当しました。この作品は、日活スコープというワイドスクリーン方式で撮影されており、当時の映画技術の一端を垣間見ることができます。

ストーリー

物語は、主人公の渡辺三郎が、東京で自動車修理工として働いて得た資金で新車を購入し、故郷の新潟で事業を始めるために出発するところから始まります。新潟には、婚約者のとし江が彼の帰りを待っていました。道中、三郎は柿木という場所で男を一人車に乗せて降ろしますが、その直後、近くの郵便局で強盗殺人事件が発生します。三郎は容疑者として逮捕され、被害者の妻によって犯人だと断定されてしまいます。しかし、三郎は無実であり、この冤罪を晴らすために、様々な人物が動き出します。

とし江は、三郎の無実を信じ、優秀な弁護士である鮫島に弁護を依頼します。弁護費用を工面するため、彼女は懸命に働きます。一方、とし江と接した警官の竜夫は、事件に不審な点を感じ、独自に捜査を開始します。竜夫は、ある青年が事件に関与している可能性に気づき、彼を追跡しますが、青年は愚連隊によって殺害されてしまいます。しかし、その青年が持っていたバッグの中から、盗まれた金が見つかります。さらに、竜夫は事件のあった家の離縁した嫁が、佐渡で再婚していることを知り、事件の真相に近づいていきます。これらの捜査の結果、三郎の冤罪は晴れ、真犯人が明らかになるという展開です。

キャスト

渡辺三郎: 小高雄二
森山竜夫: 長門裕之
道田とし江: 芦川いづみ
富永清美: 沢井保男
谷川徳蔵: 二木草之助
妻民子: 岸輝子
嫁咲子: 渡辺美佐子
咲子の結婚相手: 神山繁
警察署長: 清水将夫
刑事部長: 西村晃
鮫島卓次: 芦田伸介
裁判長: 信欣三
裁判官A: 大滝秀治
裁判官B: 庄司永建
主任検事: 鈴木瑞穂
相生署の刑事A: 下條正巳
相生署の刑事B: 下元勉

スタッフ

企画: 大塚和
監督: 中平康
助監督: 西村昭五郎
脚本: 新藤兼人
撮影: 姫田真佐久
音楽: 伊福部昭
美術: 千葉一彦

作品のテーマ

『その壁を砕け』は、冤罪という社会問題を扱いながら、登場人物たちの人間ドラマを描いた作品です。無実の罪で捕えられた主人公の苦悩、それを信じて奔走する婚約者の献身、そして真実を追求する刑事の執念が、物語を重厚に彩っています。当時の社会情勢や警察の捜査の問題点も暗示しており、観る者に深い印象を与える作品です。また、伊福部昭による音楽も作品の雰囲気を高めています。

関連情報

この映画は、同時上映として『かわいい女』という作品と一緒に公開されました。また、日活の公式ページや、映画データベースサイトなどでも情報が掲載されています。

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その壁を砕け(1959) - allcinema
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