アイセーポス

アイセーポスについて

アイセーポス（古希: Αἴσηπος, Aisēpos）は、ギリシア神話に登場する神または人物であり、長音を省略してアイセポスとも表記されます。この名前を持つ存在は、主に二つの異なる系譜で語られています。

オーケアノスの子としてのアイセーポス

一つ目のアイセーポスは、大洋神オーケアノスとテーテュースの間に生まれた3000人の息子の一人です。彼は、現在のトルコ北西部にあたるトローアス地方西部、あるいはミューシア地方を流れてマルマラ海に注ぐアイセーポス川の河神として知られています。この川の下流域には、同名の都市アイセーポス（現在のギョネン）が存在していました。河神としてのアイセーポスは、その川の恵みを人々に与える存在として崇められていたと考えられます。

ブーコリオーンの子としてのアイセーポス

二つ目のアイセーポスは、トロイアの王ラーオメドーンの息子であるブーコリオーンと、泉のニュムペーであるアバルバレエーの間に生まれた子です。彼はペーダソスという双子の兄弟を持っていました。この兄弟は、トロイア戦争でトロイア側として参戦しましたが、『イリアス』の最初の戦闘で、ペーダソスと共にギリシア軍の勇士エウリュアロスによって討たれてしまいます。この戦いでの兄弟の最期は、トロイア戦争の悲劇的な一面を象徴する出来事として語り継がれています。

まとめ

このように、アイセーポスという名前は、ギリシア神話において二つの異なる存在を指しています。一方は自然の力を象徴する河神であり、他方はトロイア戦争で命を落とした戦士です。これらの物語は、古代ギリシアの人々の世界観や価値観を理解する上で重要な要素となっています。

参考文献

アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌』飯尾都人訳、龍渓書舎（1994年）
ヘシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波文庫（1984年）
ホメロス『イリアス（上）』松平千秋訳、岩波文庫（1992年）
* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）

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