アイルランドの地理

アイルランド島の地理

アイルランド島は北大西洋に位置する島で、中央部は平坦な低地が広がり、周囲を山々が取り囲む独特の地形をしています。最高峰はキャラントゥール山（1041メートル）で、西海岸は複雑な海岸線を持ち、多くの島や半島、入り江が点在しています。アイルランド最長のシャノン川は島をほぼ二分し、大西洋へと流れ込みます。シャノン川沿いや島内には多くの湖があり、最大の湖はネイ湖です。政治的には、アイルランド共和国と北アイルランド（イギリス）の二つの地域に分かれています。

地形の形成史

アイルランドの最古の岩石は約17億年前のもので、大陸移動やプレートの衝突、火山活動、氷河期といった地質学的出来事が、現在の地形を形作ってきました。

先カンブリア時代（約6億年前）: イアペタス海によって分断されていたアイルランドは、その後、衝突し合体しました。この衝突により、北アイルランドの山々や花崗岩地帯が形成されました。
古生代（約4億年前～3億年前）: アイルランドは赤道付近に位置し、温暖な海に沈みました。この時代に形成されたサンゴ礁が、現在のアイルランド地質の65％を占める石灰岩の基盤を形成しています。また、熱帯植物の堆積物から石炭層も形成されました。大陸の変動により山岳地帯が形成されました。
中生代（約2億5000万年前）: アイルランドは砂漠気候となり、石炭や石灰岩の侵食が進みました。この侵食によって形成されたカルスト地形は、現在でも見ることができます。
新生代（約6500万年前）: 火山活動が盛んになり、北部には玄武岩からなる山々が形成されました。温暖な気候により植物が繁茂し、褐炭層が形成されました。
第四紀（約300万年前～現在）: 氷河期と間氷期を繰り返し、氷河の作用によってU字谷や圏谷、ドラムリン、エスカーなどの地形が形成されました。現在のアイルランドの地形は、この時代にほぼ完成しました。

地質

アイルランドの中央低地は、氷河堆積物で覆われた石灰岩からなり、多くの泥炭地や湖沼が存在します。周囲の山々は、地域によって地質が異なり、南部は旧赤色砂岩、中部は花崗岩、北東部は玄武岩が主体です。アントリム県のジャイアンツ・コーズウェーは、火山活動による玄武岩の柱状節理が有名です。土壌は、西部では水はけの悪い泥炭が多く、東部では水はけの良い土壌が分布しています。クレア県北部のバレンは、石灰岩のカルスト地形が特徴的な地域です。

山脈

アイルランド島は中央低地を取り囲むように山々が連なっています。主な山脈としては、マクギリーカディ山脈、ウィックロー山脈、モーン山脈などがあり、最高峰はマクギリーカディ山脈のキャラントゥール山です。アイルランドの山々は比較的低く、標高1000メートルを超える山はわずかです。

河川と湖沼

アイルランド最長の河川はシャノン川で、島の中央部を流れ、大西洋に注いでいます。シャノン川流域には、アレン湖、リー湖、ダーグ湖などの大きな湖が点在しています。ネイ湖はブリテン諸島最大の湖です。

入江、岬、島嶼、半島

アイルランドの海岸線は複雑で、多くの入り江、岬、島、半島があります。主要な入り江としては、フォイル入江、ベルファスト入江、ダブリン湾、コーク港などがあります。アイルランドの最北端はマリン岬、最南端はミゼン岬です。アキル島はアイルランド周辺の島で最大で、イニショーエン半島は重要な半島の一つです。

気候

アイルランドの気候は北大西洋海流の影響で、同緯度の他の地域より温暖です。西海岸は降水量が多く、東部は比較的乾燥しています。夏は温暖で、冬は比較的穏やかです。しかし、爆弾低気圧による強風や、夏の雷雨なども発生します。

政治・人文地理

アイルランドはコノート、レンスター、マンスター、アルスターの4地方、32の県に分けられます。そのうち、6つの県が北アイルランドを、残りの26県がアイルランド共和国を構成しています。

天然資源

アイルランドの天然資源としては、泥炭、石油・天然ガス、亜鉛などが挙げられます。泥炭は長年燃料として利用されてきましたが、近年は環境問題への配慮から、その開発に制限がかかっています。沖合には天然ガス田や油田があり、近年では商業生産も開始されています。亜鉛はヨーロッパ最大の生産量を誇ります。

参考文献

Mitchell, Frank and Ryan, Michael. Reading the Irish landscape (1998). ISBN 1-86059-055-1
* Whittow, J. B. Geography and Scenery in Ireland (Penguin Books 1974)


（その他、参考文献は省略）

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