アトランタ方面作戦

アトランタ方面作戦：南北戦争における戦略的転換点

アトランタ方面作戦は、1864年の夏にジョージア州北西部とアトランタ周辺で展開された、南北戦争における西部戦線の重要な一連の戦闘です。この作戦は、北軍によるアトランタ陥落をもたらし、戦争終結への道を切り開きました。アトランタは南部の主要な鉄道と工業の中心地であり、その占領は南軍にとって大きな打撃となりました。

作戦の背景

アトランタ方面作戦は、1863年11月の第三次チャタヌーガの戦いに続くものでした。チャタヌーガは「南部への入り口」とみなされ、その占領は北軍が南部へ侵攻するための重要な足がかりとなりました。北軍の総司令官に昇進したユリシーズ・グラントは、ウィリアム・シャーマン少将を西部戦線の指揮官に任命し、多方面からの同時攻撃により南軍を圧倒する戦略を採用しました。グラントは、ロバート・E・リー将軍が率いる南軍に対抗するため、バージニア州に侵攻する一方で、シャーマンはジョージア州に侵攻し、ジョセフ・ジョンストン将軍の軍隊を破りアトランタを確保する任務を担いました。

作戦開始時、シャーマンの軍は3つの軍隊で構成されていました。ジェイムズ・マクファーソン少将のテネシー軍、ジョン・マカリスター・スコフィールド少将のオハイオ軍、そしてジョージ・ヘンリー・トーマス少将のカンバーランド軍です。一方、南軍はジョセフ・ジョンストン将軍が率いるテネシー軍でした。作戦中には、マクファーソンが戦死し、オリバー・O・ハワード少将が後任となりました。また、ジョンストン将軍は解任され、ジョン・ベル・フッド中将が指揮を引き継ぎました。作戦開始時の戦力は北軍が約98,500人、南軍が約50,000人でしたが、北軍は兵力の減少、南軍は増援により、後に北軍約112,000人に対し、南軍は戦力増強したものの戦力差は依然として残りました。

ジョンストン将軍は、防御に徹するタイプの将軍であり、積極的な攻撃を避ける傾向がありました。これに対し、シャーマンは非常に攻撃的な将軍であり、ジョンストンは、守りを固めた塹壕戦術を多用しました。シャーマンは正面攻撃を避け、防御線を迂回する作戦を展開しました。これにより、ジョンストン軍は何度も後退を余儀なくされました。両軍は補給に鉄道を利用していましたが、アトランタに近づくにつれて、南軍の補給線は短くなり、北軍の補給線は長くなるという状況でした。

主要な戦闘

アトランタ方面作戦は、以下のような一連の戦闘で構成されます。

1. ロッキーフェイスリッジの戦い (5月7日-13日)：ジョンストン軍はロッキーフェイスリッジに塹壕を築き、シャーマン軍は正面からの攻撃を避け、テネシー軍をスネーククリーク峡谷から南下させ、レサカの鉄道を攻撃しました。マクファーソンはレサカ郊外まで進軍しましたが、防御が固く、スネーククリーク峡谷まで撤退しました。その後、シャーマン軍はレサカを奪取するために合流し、ジョンストン軍はレサカに後退しました。

2. レサカの戦い (5月13日-15日)：北軍は南軍の配置を探るために偵察を行い、全面的な会戦が始まりましたが、北軍は南軍の右翼以外では撃退されました。シャーマンは右翼への攻撃をせず、ジョンストン軍の補給線を遮断する部隊を送りました。ジョンストン軍は撤退を余儀なくされました。

3. アデアーズビルの戦い (5月17日)：ジョンストン軍は後退を続け、シャーマン軍は追撃しました。南軍は巧みな後衛戦術を展開しました。アデアーズビル北部で北軍と南軍が交戦しましたが、夕暮れが迫り、戦闘は翌日に持ち越されました。翌日、ジョンストン軍はさらに後退しました。

4. ニューホープ教会の戦い (5月25日-26日)：シャーマン軍はジョンストン軍の左翼を迂回しようとしましたが、ジョンストン軍はこれを予測し、ニューホープ教会で北軍を迎撃しました。北軍は大きな損害を受け、両軍は塹壕を築いて対峙しました。

5. ダラスの戦い (5月26日-6月1日)：シャーマン軍は南軍の前線を探索し、南軍は北軍の防衛線を試しましたが撃退されました。シャーマンはジョンストン軍の周りを探索し続け、アラトゥーナ・パスを占領し、鉄道を利用して兵士と物資を輸送しました。シャーマンはダラスの前線を放棄し、アラトゥーナ・パスの鉄道終点へ移動しました。

6. ピケッツミルの戦い (5月27日)：シャーマンはハワードに南軍の右翼への攻撃を命じましたが、南軍は準備万端で北軍の攻撃は失敗に終わりました。

7. マリエッタの戦い (6月9日-7月3日)：シャーマン軍はマリエッタ地域で塹壕を築いているジョンストン軍を発見し、包囲作戦を展開しました。南軍のレオニダス・ポーク中将が戦死しました。ジョンストン軍はケネソー山に跨る新しい陣地に移動し、シャーマン軍は攻撃を試みましたが成功せず、最終的にジョンストン軍はマリエッタ地域から撤退しました。

8. コルブ農園の戦い (6月22日)：シャーマン軍は南軍を包囲しようとし、ジョンストン軍は部隊を移動させて対抗しましたが、北軍の砲撃と地形により攻撃は失敗に終わりました。

9. ケネソー山の戦い (6月27日)：シャーマンはジョンストン軍の前線が薄いと確信し、正面攻撃を仕掛けましたが、大きな損害を出して敗北しました。

10. ピーチツリークリークの戦い (7月20日)：ジョンストン軍はピーチツリー・クリークの南に後退し、シャーマン軍はアトランタ攻撃を開始しました。ジョンストンは解任され、フッドが指揮を執りました。フッドは北軍を攻撃しましたが、最終的に北軍が持ちこたえ、南軍は撤退しました。

11. アトランタの戦い (7月22日)：フッドはマクファーソンのテネシー軍を攻撃しようとしましたが、マクファーソンが戦死。フッド軍は北軍の左翼に攻撃を仕掛けましたが撃退されました。北軍は持ちこたえ、フッド軍は大きな損害を出しました。

12. エズラ教会の戦い (7月28日)：シャーマン軍はアトランタ西からの攻撃に転じ、ハワードのテネシー軍に鉄道供給線を遮断するよう命じました。フッド軍は北軍の動きを阻止しようとしましたが、北軍に撃退されました。しかし、ハワードは鉄道を遮断できませんでした。

13. ユトイクリークの戦い (8月5日-7日)：シャーマン軍は鉄道攻撃を続けましたが、南軍は防御を強化し、北軍の攻撃は失敗に終わりました。

14. 第二次ダルトンの戦い (8月14日-15日)：ウィーラーの騎兵隊が北ジョージアを襲撃しましたが、ダルトンの北軍守備隊は撤退せず、ウィーラー隊は撤退しました。

15. ラブジョイ駅の戦い (8月20日)：シャーマンは騎兵隊を派遣して南軍の補給線を襲撃させました。キルパトリック隊はラブジョイ駅に到達しましたが、南軍の歩兵隊の到着により、撤退を余儀なくされました。

16. ジョーンズバラの戦い (8月31日-9月1日)：シャーマン軍はフッド軍の補給線を遮断しようとしました。フッドはハーディに軍団をつけ、これを阻止しようとしましたが、シャーマン軍に撃退されました。フッドはアトランタを放棄し、アトランタは大火に包まれました。北軍は9月2日にアトランタを占領しました。

戦闘の後

アトランタの陥落は、北軍にとって大きな勝利であり、エイブラハム・リンカーン大統領の再選を大きく後押ししました。アトランタ方面作戦における両軍の損害はほぼ同数でしたが、南軍の損失率は高く、フッド軍は約3万名に減少しました。北軍はアトランタを占領しましたが、フッド軍を完全に壊滅させることはできませんでした。作戦後、北軍はフッド軍を追跡するフランクリン・ナッシュビル方面作戦やシャーマンの海への進軍へと移行しました。

アトランタ方面作戦は、南北戦争の転換点となり、北軍の勝利を決定づける重要な要素となりました。

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