アルメニアの歴史

アルメニアの歴史：古代から現代まで

この文章では、アルメニアの歴史を先史時代から現代まで概観します。メソポタミア文明の一部として栄えたアルメニア高原は、古くから豊かな文化と複雑な歴史を育んできました。幾度もの支配者交代、独立と喪失、そして幾多の苦難を乗り越えてきたアルメニアの物語を、詳細に紐解いていきましょう。

先史時代

チグリス川とユーフラテス川の源流域に位置するアルメニア高原は、世界最古の文明発祥地の一つとされています。考古学的発掘からは、前期旧石器時代から新石器時代にかけての遺物が数多く出土しており、すでに紀元前7千年紀には黒曜石の交易がメソポタミア平野と行われていたと考えられています。青銅器時代の装飾品なども発見されており、高度な技術が当時既に存在していたことを示唆しています。アルメニア人の起源については、未だ議論の余地がありますが、言語学や考古学の知見から、フリギア人との関連性は否定されています。一方、「ハイアサ」という古代国家との関連性やアッシリアの年代記にみられる「ムシュキ」との関連性が指摘されており、研究は現在も進行中です。

鉄器時代

紀元前9世紀頃には、アルメニア高原にウラルトゥ王国が興りました。ウラルトゥは、アララト平野の肥沃な土地や山脈の鉱物資源を支配下に置き、勢力を拡大しました。しかし、アッシリア王国との激しい争いを経て、紀元前6世紀に滅亡します。このウラルトゥ滅亡期に、現代のアルメニア人に繋がる印欧語族系の人々がアルメニア高原へ入ってきたと考えられており、彼らとウラルトゥの住民との融合が、アルメニア民族の形成に重要な役割を果たしたとみられます。

古代：ペルシアとマケドニアの支配

ウラルトゥ滅亡後、アルメニアはメディア王国、そしてアケメネス朝ペルシアの支配下に入ります。ペルシア文化の影響を受けながらも、アルメニア人は独自の文化を維持し、交易を通じて繁栄を享受しました。アケメネス朝後期の地方総督であったオロンテス朝は、事実上の独立を果たします。その後、アレクサンドロス大王によるマケドニアの征服を経て、アルメニアはセレウコス朝の影響を受けつつも、独自の政治体制を維持し続けました。

アルメニア王国の独立

紀元前2世紀には、アルタクシアス朝によるアルメニア王国が建国され、史上初のアルメニア人による独立国家が誕生しました。アルタクシアス朝は領土を拡大し、ティグラネス2世の治世にはカスピ海から地中海にまたがる広大な帝国を築きます。しかし、ローマとの戦争に敗れ、アルメニア王国は衰退しました。

パルティアとローマの緩衝地帯

その後、アルメニアはパルティアとローマ帝国の緩衝地帯となり、両大国の影響下に置かれます。紀元63年のランデイア条約によってアルサケス朝アルメニアが成立します。

世界最初のキリスト教国

301年、ティリダテス3世によってキリスト教が国教とされ、アルメニアは世界最初のキリスト教国家となりました。この出来事は、アルメニアの文化とアイデンティティに大きな影響を与えました。

中世：ペルシアによる支配と独立運動

4世紀末以降、アルメニアはサーサーン朝ペルシアの支配を受けます。サーサーン朝の圧政下でも、アルメニア人は独自の文字や教会を創出し、文化を維持しました。バグラトゥニ朝は一時的に独立を取り戻しましたが、東ローマ帝国やセルジューク朝の支配を受けることとなります。この時期、アルメニア人の一部はキリキア地方に移住し、キリキア・アルメニア王国を建国しました。キリキア王国は交易国家として発展しましたが、1375年に滅亡します。

近世：オスマン帝国とロシア帝国の支配

近世には、アルメニア人はオスマン帝国とロシア帝国の支配下に分断されました。オスマン帝国領のアルメニア人は、ミッレト制の下で一定の自治を認められていましたが、様々な差別や弾圧に苦しみました。一方、ロシア帝国領のアルメニア人は、商工業で成功する者もいましたが、ロシア帝国の支配に抵抗する動きもありました。

近代：民族意識の高まりと大量虐殺

19世紀末から20世紀初頭にかけて、アルメニア人の民族意識が高まり、独立運動が活発化します。しかし、オスマン帝国政府はアルメニア人への弾圧を強め、1890年代と1915年に大規模なアルメニア人虐殺を行いました。第一次世界大戦中にも、多くのアルメニア人が犠牲となりました。

アルメニア共和国の成立とソビエト時代

1918年にアルメニア共和国が成立しますが、これは短命に終わりました。領土紛争や経済危機の末、アルメニアは1920年にソビエト連邦に加盟しました。ソビエト時代には、アルメニアは工業化が進みましたが、政治的弾圧も絶えず、ディアスポラとの軋轢もありました。

現代：独立とナゴルノ・カラバフ紛争

1991年にソ連が崩壊すると、アルメニアは独立を果たしました。しかし、アゼルバイジャンとの間でナゴルノ・カラバフ紛争が勃発し、現在も緊張状態が続いています。経済制裁や不安定な国際関係の中で、アルメニアは新たな未来を切り開こうとしています。2023年9月にはアゼルバイジャンによる軍事作戦によりナゴルノ・カラバフ紛争は終結、アルメニア系住民の大半がアルメニアへと避難しました。

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