アレゲニー航空853便空中衝突事故

アレゲニー航空853便空中衝突事故

1969年9月9日にアメリカ合衆国で発生した航空事故。アレゲニー航空の旅客機と、訓練飛行中の小型機が空中で衝突し、両機に搭乗していた計83名全員が死亡するという痛ましい事故となりました。

事故の概要

事故機

アレゲニー航空853便: マクドネル・ダグラス DC-9-31（機体記号：N988VJ）。1968年7月に製造され、同年8月9日にアレゲニー航空に納入された比較的新しい機体でした。エンジンはプラット・アンド・ホイットニー JT8Dを搭載、総飛行時間は3,170時間でした。

訓練機: パイパー PA-28。民間機で、パイロット1名が搭乗していました。

乗員

アレゲニー航空853便
機長：47歳男性。総飛行時間23,813時間、DC-9での飛行時間900時間。DC-3、コンベア240/340/440の操縦資格も保有。
副操縦士：26歳男性。総飛行時間2,980時間、DC-9での飛行時間651時間。
パイパー PA-28
パイロット：34歳男性。

事故状況

アレゲニー航空853便は、ボストンとセントルイスを結ぶ定期便で、ボルチモア、シンシナティ、インディアナポリスを経由するルートでした。事故当日、853便はシンシナティの空港を離陸し、インディアナポリスへ向かう途中でした。この際、計器飛行方式（IFR）で飛行しており、インディアナポリスの管制官から指示を受け、高度を下げていました。

一方、パイパーPA-28は有視界飛行方式（VFR）で飛行しており、トランスポンダを搭載しておらず、航空管制との連絡も取っていませんでした。このため、レーダーにも捕捉されていませんでした。両機は、相対速度約560km/hで衝突しました。

衝突により、853便は尾翼部分が破壊され、制御不能となり、そのまま大豆畑に墜落しました。パイパーPA-28も左翼付近に大きな損傷を受け、墜落しました。

事故調査

国家運輸安全委員会（NTSB）は、事故調査報告書で以下の点を指摘しました。

航空管制における計器飛行方式（IFR）と有視界飛行方式（VFR）の混在が、事故回避能力を低下させていた。
両方式が混在する状況下での回避手順が明確でなかった。
全ての航空機を捕捉できるレーダー技術が十分ではなかった。
IFRとVFRを両立させるためのシステムが未確立だった。

事故の影響

この事故は、それまでの「相手を見合う」という原則の限界を浮き彫りにしました。特に、視界が制限された状況下で異なる速度で飛行する航空機同士の衝突は、重大な事故につながる可能性を示しました。この事故を契機に、NTSBとFAAは様々な改善策を講じました。

改善策

トランスポンダの義務化: 現在では、全ての旅客機および多くのゼネラル・アビエーション機にトランスポンダの搭載が義務付けられ、レーダーで捕捉しやすくなりました。
制限空域の設定: 定期便が運用される空港周辺には制限空域が設けられ、トランスポンダの使用と航空管制官との連絡が義務付けられました。これにより、IFRとVFRの分離がより円滑に進むようになりました。
空中衝突防止装置の搭載: 現在では、ほとんどの旅客機にACAS（航空機衝突防止装置）またはTCAS（交通衝突防止装置）が搭載され、空中衝突を未然に防ぐための対策が強化されました。地上のATCレーダーにも同様の警報装置が設置されています。

結論

アレゲニー航空853便空中衝突事故は、航空安全に関する多くの教訓を与えてくれました。この事故を契機に、航空管制システムや機材が大きく改善され、現在ではより安全な空の旅が実現しています。この悲劇を忘れることなく、安全への意識を常に高く保つことが重要です。

関連項目

空中衝突
アエロメヒコ航空498便空中衝突事故
パシフィック・サウスウエスト航空182便墜落事故

外部リンク

事故詳細 - Aviation Safety Network

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