アンダー・プレッシャー

アンダー・プレッシャー：クイーンとデヴィッド・ボウイの伝説的コラボレーション

「アンダー・プレッシャー」（Under Pressure）は、イギリスのロックバンド、クイーンとミュージシャン、デヴィッド・ボウイの共作による、ロック史に残る名曲です。1981年にシングルとしてリリースされ、その後クイーンのアルバム『ホット・スペース』にも収録されました。さらに、デヴィッド・ボウイのアルバム『レッツ・ダンス』のリマスターCDにもボーナストラックとして収録されるなど、両アーティストのベストアルバムにも頻繁に収録されています。

制作の背景

当初、ボウイはクイーンの楽曲「クール・キャット」にバッキングボーカルで参加する予定でした。しかし、レコーディング後、双方とも出来に満足できず、最終的にこの音源は削除されました。その後、両者はジャムセッションを行い、その際にボウイが「こんなくだらないことをしていないで、一緒に曲を書こう」とクイーンを誘ったことが、この歴史的なコラボレーションの始まりでした。

ボーカルは、フレディ・マーキュリーが高音パート、デヴィッド・ボウイが低音パートを担当。また、特徴的なベースラインについては、ジョン・ディーコンが「ボウイが作った」と発言しましたが、ボウイ自身は「関与する前から存在していた」と述べており、その真実は謎に包まれています。

世界的な大ヒット

「アンダー・プレッシャー」は、全英シングルチャートで1位を獲得。これはクイーンにとって「ボヘミアン・ラプソディ」以来2作目、ボウイにとっては「スペイス・オディティ」「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」に次ぐ3作目の1位となり、世界中で大ヒットを記録しました。しかし、アメリカのBillboard Hot 100では29位と、イギリスでの成功に比べるとやや低調な結果に終わっています。

1993年にアメリカで発売されたボウイのベストアルバム『The Singles 1969 To 1993 featuring His Greatest Hits』、および1994年にアメリカで発売されたクイーンのベストアルバム『クラシック・クイーン』には、それぞれ異なるミックスバージョンが収録されています。また、曲の最後の歌詞「This is our last dance」は、1回のみ繰り返すバージョンと2回繰り返すバージョンが存在します。

ミュージックビデオ

ミュージックビデオの制作当時、クイーンとボウイは共にツアー中だったため、メンバーの演奏シーンは一切含まれていません。代わりに、1920年代の無声映画からのシーンや、ビル崩壊、人ごみ、世界恐慌時のニューヨークの失業者たちの様子など、様々な映像がコラージュのように使用されています。曲の後半部分には、多くの映画のキスシーンが挿入されており、非常に印象的な映像作品となっています。

2003年には、スラント誌が発表した「The 100 Greatest Music Videos of All Time」で27位にランクインするなど、その芸術性の高さが評価されています。

ライブでの演奏

共同作品であるにもかかわらず、この曲をライブで演奏したのはクイーンのみでした。1981年からライブの定番曲となり、その模様は『伝説の証/クイーン1981|伝説の証_クイーン1981』や『オン・ファイアー/クイーン1982|オン・ファイアー_クイーン1982』、『クイーン・ライヴ!!ウェンブリー1986』などの映像作品で見ることができます。

1986年のヨーロッパ/全英ツアーでは、7月27日のハンガリー・ブダペスト公演での演奏がNHK-BS『黄金の洋楽ライブ』で放送されました。1992年のフレディ・マーキュリー追悼コンサートでは、デヴィッド・ボウイとユーリズミックスのアニー・レノックスがボーカルを務め、感動的なパフォーマンスを披露しました。

ボウイ自身は、自身のライブではこの曲を歌うことはありませんでしたが、1995年のアウトサイド・ツアーからセットリストに加え、マーキュリーのパートはベーシストのゲイル・アン・ドロシーが担当しました。

楽曲情報

プレイヤー:
フレディ・マーキュリー - リードボーカル、バッキングボーカル、ピアノ、ハモンドオルガン、ハンドクラップ、フィンガースナップ
ブライアン・メイ - エレクトリックギター、ハンドクラップ、フィンガースナップ
ロジャー・テイラー - ドラムス、バッキングボーカル、ハンドクラップ、フィンガースナップ
ジョン・ディーコン - ベースギター、ハンドクラップ、フィンガースナップ
デヴィッド・ボウイ - リードボーカル、バッキングボーカル、シンセサイザー、ハンドクラップ、フィンガースナップ

シングル収録曲:

7インチシングル
1. アンダー・プレッシャー - Under Pressure (Queen & Bowie)
2. ソウル・ブラザー - Soul Brother (Mercury)
CD
1. イギリス盤
1. アンダー・プレッシャー - Under Pressure (Queen & Bowie)
2. ソウル・ブラザー - Soul Brother (Mercury)
3. ボディ・ランゲージ - Body Language (Mercury)

その後の影響

この曲の特徴的なベースラインは、1990年にヴァニラ・アイスのシングル「Ice Ice Baby」でサンプリングされました。しかし、クレジットにクイーンやボウイの名前が記載されていなかったため、ヴァニラ・アイスは著作権侵害で訴えられ敗訴しました。

1999年には、リミックスバージョン「アンダー・プレッシャー (Rah Mix)」が発売され、イギリスやオランダでチャートインしました。このリミックスは、コンピレーションアルバム『グレイテスト・ヒッツIII 〜フレディー・マーキュリーに捧ぐ〜』にも収録されています。

また、この楽曲は映画やアニメなど様々なメディアで使用されており、その影響力の大きさを感じさせます。

2004年：アメリカ映画『ガール・ネクスト・ドア』挿入歌
2005年：マイ・ケミカル・ロマンスがザ・ユーズドとのコラボレーションでカバー
2005年：ジョス・ストーンがクイーンのトリビュートアルバムでカバー
2011年：アニメ映画『ハッピー フィート2 踊るペンギンレスキュー隊』で合唱シーンで使用
2017年：アメリカ映画『アトミック・ブロンド』劇中歌
2018年：映画『ボヘミアン・ラプソディ』で使用
2022年：イギリス・アメリカ合作映画『aftersun/アフターサン』で使用

「アンダー・プレッシャー」は、クイーンとデヴィッド・ボウイという二人の偉大なアーティストの才能が融合した、時代を超えて愛される名曲です。その制作秘話や影響は、今後も語り継がれていくことでしょう。

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