ホット・スペース

クイーン10枚目のアルバム『ホット・スペース』

『ホット・スペース』（Hot Space）は、イギリスのロックバンド、クイーンが1982年に発表した10枚目のアルバムです。前作『ザ・ゲーム』とシングル「地獄へ道づれ」がアメリカで大成功を収めたことを受け、フレディ・マーキュリーとジョン・ディーコンを中心に、クイーン流のブラックミュージックを追求した意欲作として制作されました。

しかし、このアルバムは、従来のクイーンサウンドを期待していたファンからは大きな反発を招きました。同時期に発売されたマイケル・ジャクソンの『スリラー』と比較されることも多く、『ザ・ゲーム』のセールスを上回ることはありませんでした。

シンセサイザーの導入と音楽性の変化

『ザ・ゲーム』で初めてシンセサイザーを導入したクイーンは、映画『フラッシュ・ゴードン』のサウンドトラックで大々的にシンセサイザーを解禁。本作では、シンセベースをフィーチャーした「ボディ・ランゲージ」を第1弾シングルとして発表しました。しかし、この曲のミュージックビデオは、その扇情的な内容からMTVで放送禁止となり、チャートでも振るいませんでした。

また、「ステイング・パワー」では、それまでのクイーンのサウンドでは考えられなかった生のブラスセクションを導入するなど、新たな試みも多く見られます。一方で、ブライアン・メイのギターは、彼自身の作品以外では控えめになっています。

多様な楽曲と評価

アルバムには、ジョン・レノンに捧げたフレディ作の「ライフ・イズ・リアル」、ブライアン作の銃社会への警鐘を歌った「プット・アウト・ザ・ファイア」、スペイン語の歌詞が登場する「ラス・パラブラス・デ・アモール (愛の言葉)」など、従来のクイーンサウンドに近い楽曲も収録されています。

しかし、セールスの結果から、このアルバムは失敗作と評されることもあります。一方で、時代的な背景を含めて、純粋な内容への再評価も進んでいます。また、『ザ・ゲーム』の後にリリースされたデヴィッド・ボウイとの共作曲「アンダー・プレッシャー」も収録されています。

日本での評価

発売当初の日本版ライナーノーツは、シンセサイザー奏者の難波弘之が執筆し、「ファンの間では賛否両論になるだろう」と記しています。オリコンチャートでは最高6位を記録しました。

収録曲

Side A
1. ステイング・パワー - Staying Power (Mercury) 4:10
アメリカと日本だけでA面としてシングルカットされました。
雑誌「ミュージック・ライフ」の読者アンケートによってこの曲をシングルにすることが決定しました。
2. ダンサー - Dancer (May) 3:46
3. バック・チャット - Back Chat (Deacon) 4:31
4. ボディ・ランゲージ - Body Language (Mercury) 4:29
5. アクション・ディス・デイ - Action This Day (Taylor) 3:32

Side B
1. プット・アウト・ザ・ファイア - Put Out the Fire (May) 3:18
2. ライフ・イズ・リアル (レノンに捧ぐ) - Life Is Real (Song For Lennon) (Mercury) 3:28
曲調、歌詞ともに、1980年12月8日に亡くなったジョン・レノンの作品を彷彿とさせます。
3. コーリング・オール・ガールズ - Calling All Girls (Taylor) 3:50
アメリカのみでシングルカットされました。
ロジャー・テイラーが作曲した曲がシングルのA面になったのはこの曲が初めてです。
4. ラス・パラブラス・デ・アモール (愛の言葉) - Las Palabras De Amor (The Words of Love) (May) 4:26
5. クール・キャット - Cool Cat (Deacon & Mercury) 3:26
フレディは全編ファルセットで歌っています。
ジョンはスラップ奏法を用いました。
当初、デヴィッド・ボウイがハーモニーをつけていましたが、デヴィッド自身その出来に満足できず、このバージョンの収録は見送られました。
6. アンダー・プレッシャー - Under Pressure [with David Bowie] (Queen & Bowie) 4:02

（＊ - 日本でのシングルカットA面）

担当

クイーン
フレディ・マーキュリー – リードヴォーカル、コーラス、キーボード、シンセサイザー
ブライアン・メイ – ギター、コーラス、シンセサイザー、キーボード（#9）
[ロジャー・テイラー]] – ドラムス、パーカッション、コーラス、ギター、[[シンセサイザー]
ジョン・ディーコン – ベース、エレクトリックギター、シンセサイザー

補助メンバー
デヴィッド・ボウイ - ヴォーカル、シンセサイザー（#11）
アリフ・マーディン - ホーンアレンジ（#1）
* ラインホルト・マック - プロデューサー、シンセサイザー（#5）

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