アーサー・エヴァンズ

サー・アーサー・ジョン・エヴァンズ（Sir Arthur John Evans, 1851年7月8日 - 1941年7月11日）は、イギリスを代表する考古学者であり、特にクレタ島のクノッソス遺跡の発掘によってその名を知られています。彼はミノタウロス伝説の舞台となったクノッソス遺跡を発掘し、青銅器時代のエーゲ文明の研究における先駆者としての地位を確立しました。また、クレタ文字である線文字Aと線文字Bを定義した最初の人物でもあります。

生涯

アーサー・エヴァンズは、父ジョン・エヴァンズ（1823年 - 1908年）の長男としてイングランドのナッシュミルズで生まれました。父ジョンもまた考古学者であり、オクスフォード大学やゲッティンゲン大学で学んでいます。祖父アーサー・ベノニ・エヴァンズは文法学校の校長で、ラテン語や古代ギリシア語を教えていました。このため、父ジョンはラテン語を習得しており、学術的な環境の中でアーサーは育ちました。父ジョンの考古学研究活動を受け継いだアーサーは、1884年から1908年までオクスフォード大学のアシュモレアン博物館の学芸員を務めました。

1900年、アーサー・エヴァンズはクノッソス遺跡の発掘を開始しました。彼は、著書『Palace of Minos at Knossos』を刊行するとともに、遺跡の復元にも尽力しました。しかし、その復元方法の一部、特にコンクリートの使用については現代の考古学からは批判的な意見も存在します。しかし、当時の発掘者が遺跡から出土品を持ち去る傾向が強かったこと（結果として盗掘）を考慮すると、エヴァンズの復元行為には当時の状況下での考古学に対する意識や文化財保護に対する貢献度も評価されるべきです。

クノッソス遺跡では、線文字Aと線文字Bという2種類の文字が刻まれた粘土板が発見されました。エヴァンズは当初、線文字Bを非ギリシア語を記したものと考えていましたが、後にこの説は否定されました。彼は自ら線文字Bの解読を試みたため、粘土板の公開を一部に限定しました。この事が、線文字Bの解読を大幅に遅らせる要因となったとも言われています。

1901年、王立協会のフェローに選出され、1936年にはコプリ・メダルを受賞しました。また、1911年には考古学的業績によりナイトに叙勲されています。

1936年10月、バーリントンハウスで開催されたギリシア・ミノア美術展覧会で、偶然にもパブリックスクールストウ校の一行と出会い、自らミノア文明の展示室を案内し、詳細な解説を行いました。この時、一行の中にいた後に線文字Bを解読することになるマイケル・ヴェントリスが、「展示されていた粘土板が未解読であるか」という質問をしました。この出来事が、ヴェントリスが線文字Bの解読に興味を持つきっかけとなりました。

エヴァンズの功績と影響

エヴァンズのクノッソス遺跡の発掘と復元は、エーゲ文明、特にミノア文明の研究に大きな影響を与えました。彼の研究は、ミノア文明の社会構造、文化、芸術に対する理解を深める上で不可欠であり、その後の考古学研究の基礎となりました。

しかし、彼の復元方法や、線文字Bの解読に対する態度は、現在では批判的な見解も存在します。特に、線文字Bの解読を独占しようとしたことが、その解読を遅らせたと指摘されています。しかし、彼がいなければ、エーゲ文明の解明はより遅れていたと考えられており、彼の貢献は非常に大きいと言えるでしょう。

伝記・参考文献

レナード・コットレル 『エーゲ文明への道 シュリーマンとエヴァンズの発掘物語』 暮田愛訳、前田耕作監修、原書房、1992年

関連項目

ミノア文明
ミケーネ文明
エーゲ文明
イリオス

外部リンク

Auktion der Münzsammlung bei Naville 1922
* Auktion der Münzsammlung bei Ars Classica 1934

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