イワン・プトスキー

イワン・プトスキー。その名は、1970～80年代のプロレスファンにとって、忘れられない響きを持つだろう。ポーランド、クラクフ出身の彼は、リングネームとは異なる、Józef Bednarskiという本名を持つ。幼少期に家族と共にアメリカへ渡り、テキサスでプロレスラーとしてのキャリアをスタートさせた。

彼のリングネーム、イワン・プトスキーは、ポーランドの童話から着想を得たものだ。イゴール・ボディックを彷彿とさせるキャラクターで、フリッツ・フォン・エリック率いるNWAビッグタイム・レスリング（後のWCCW）でキャリアを積んだ。NWAテキサス・タッグ王座を獲得するなど、早くからその実力を発揮した。

1974年にはAWAへ参戦。ザ・クラッシャーやラリー・ヘニングといった当時のトップレスラーとタッグを組み、AWA世界タッグ王座に挑戦するなど、激しい戦いを繰り広げた。アンドレ・ザ・ジャイアントやクリス・テイラーといった強力なタッグパートナーと共に、ラーズ・アンダーソン、ブラックジャック・ランザ、ボビー・ヒーナンなど、錚々たるヒールレスラーたちと対戦した経験を持つ。

そして1975年、彼のキャリアにおける大きな転換期となるWWWF（後のWWF）進出を果たす。身長180cmに満たない小柄な体格ながら、驚異的なパワーとタフさで、ブラックジャック・マリガン、スタン・ハンセン、ブルーザー・ブロディといったスーパーヘビー級の巨漢たちと渡り合った。その逞しいファイトスタイルは、多くのファンを魅了した。特に、悪名高き王者スーパースター・ビリー・グラハムとのWWWFヘビー級王座を巡る幾度にもわたる死闘は、伝説として語り継がれている。

WWFでの活躍は目覚ましく、1979年にはティト・サンタナとタッグを組み、WWFタッグ王座を獲得。このタッグチームは、後のWWF殿堂入りにも繋がる偉業を達成した。

1980年代に入ると、古巣のテキサスに戻り、サウスウエスト・チャンピオンシップ・レスリング（SCW）で活躍。タンク・パットンとの激しい抗争を繰り広げ、ワフー・マクダニエルとのタッグでSCW世界タッグ王座を獲得するなど、そのキャリアはさらに輝きを増した。

その後、再びWWFに戻り、イワン・コロフとの「ポーランド対ソビエト」という、当時の国際情勢を反映した抗争劇を展開。ビンス・マクマホン・ジュニア主導の全米侵攻サーキットにも参加し、中堅ベビーフェイスとして重要な役割を果たした。1985年にはWWF最初のPPVイベント「ザ・レスリング・クラシック」に出場したが、ランディ・サベージに敗れた。

1980年代後半には、セミリタイアし、テキサス州ヒューストンでプロレスリングスクールを開校。ブッカーTやアーメッド・ジョンソンといった後のスターレスラーを育成した。

1995年にはWWF殿堂入りを果たし、その功績は後世に語り継がれることとなった。1997年には息子のスコット・プトスキーとタッグを組み、WWFのリングに復帰。ジェリー・ローラー＆ブライアン・クリストファー組との親子タッグ対決は、大きな話題を呼んだ。

引退後はテキサス州オースティンでセキュリティ・ガードとして勤務する傍ら、インディー団体にも時折参戦。2007年には、かつてWWFタッグ王座を共に獲得したティト・サンタナとのタッグで、IWCで勝利を収めている。

日本には一度も来日したことがないにも関わらず、「岩石男」の異名で知られていた。新日本プロレスのMSGタッグリーグ戦への出場が予定されたこともあったが、残念ながら実現しなかったのは、多くの日本ファンにとって残念だったであろう。

彼のキャリアは、リング上での輝かしい戦績だけにとどまらない。レスリングスクール設立を通して、次世代のレスラー育成に貢献した彼の功績は、まさにプロレス界のレジェンドと言えるだろう。彼の残した足跡は、これからも多くのプロレスファンに語り継がれていくに違いない。

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