インド・パルティア王国

インド・パルティア王国の興亡

インド・パルティア王国は、1世紀頃に現在のイラン高原東部に存在したパルティア王国の影響下で、ゴンドファルネスによって建設された王国です。その領域は、アフガニスタン、パキスタン、そして北インドの一部を含む広大な範囲に及びました。

東方への進出と建国

パルティア王国の東方進出は、遊牧民の移動と深く関わっています。匈奴の勢力拡大により、大月氏が西方へ移動し、サカ人の領土を奪いました。パルティア王ミトラダテス1世の時代には、サカ人がパルティア本拠地を侵略し始め、フラーテス2世はサカ人討伐に失敗して戦死しました。この混乱に乗じて、パルティアの大貴族であるスーレーン氏族が東方へ侵入を開始。ガンダーラ地方で、クジュラ・カドフィセス（後のクシャーナ朝の王）などの地方領主との戦いを経て、バクトリア全域と北インドを支配下に置きました。インド・スキタイ王国は、紀元前12年頃まで存続しましたが、インド・パルティア王国の成立とともに衰退に向かいました。

西暦20年頃、パルティアの支配から独立したゴンドファルネスは、自らの支配領域にインド・パルティア王国を建国。インドでは、パフラヴァという名で知られ、ヤヴァナ（インド・ギリシア人）、サカ（インド・スキタイ人）とともに、しばしば文献に登場しました。

王国の盛衰

インド・パルティア王国は、およそ1世紀にわたり存続しましたが、ゴンドファルネスの後継者アブダガセスの時代には、徐々に分解を始めました。75年頃には、クシャーナ朝のクジュラ・カドフィセスによって北インド地方は再征服され、王国の領域はほぼアフガニスタンのみに限定されました。

最後の王パコレスの治世には、サカスタンとトゥーラーンを支配するのみとなり、2世紀には、サータヴァーハナ朝の王ガウタミープトラ・シャータカルニによって、インド・パルティア人は「滅ぼされるべき存在」として言及されるようになりました。

仏教の伝播への貢献

226年にサーサーン朝の支配下に入った後も、パルティア人の一部は東方に残存し、文化的影響を与え続けました。2世紀以降、中央アジアの仏教伝道師たちは、中国の首都洛陽や南京で仏典の翻訳活動を行い、その中でパルティア出身の僧侶たちが重要な役割を果たしました。彼らは、中国で「安」姓を名乗り、仏教の普及に大きく貢献しました。代表的な人物として、小乗仏教系の経典を中国語に翻訳した安世高、商人から僧侶になった安玄、曇無徳羯麿を翻訳した曇諦、安法欽などが挙げられます。

インド・パルティア王国の主な君主

ゴンドファルネス1世（Gondophares I, 20年 - 50年頃）
アブダガセス1世（Abdagases I, 50年 - 65年頃）
サタヴァステレス（Satavastres, 60年頃）
サルペドネス（Sarpedones, 70年頃）
オルサゲネス（Orthagnes, 70年頃）
ウボウザネス（Ubouzanes, 77年頃）
サセス 又はゴンドファルネス2世（Sases or Gondophares II, 85年頃）
アブダガセス2世（Abdagases II, 90年）
パコレス（100年頃）

関連項目

インド・グリーク朝
クシャーノ・サーサーン朝
インド・スキタイ人
クシャーナ朝
月氏
カンボージャ

外部リンク

Coins of the Indo-Parthians

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