ウィドウ・メーカー

ウィドウ・メーカーとは

「ウィドウ・メーカー」とは、英語で「寡婦（widow）を作るもの」という意味を持つ言葉です。この言葉は、その名の通り、使用者の命を奪い、残された者に悲しみをもたらすような物事に対して使われることが多いです。

医療分野におけるウィドウ・メーカー

医療分野では、心臓の主要な冠状動脈が高度に狭窄した状態を指す俗称として用いられます。特に、左主冠動脈や左冠動脈前下行枝の狭窄は、前兆なく致命的な心臓発作を引き起こすため、このように呼ばれます。この状態は、文字通り「未亡人」を生み出す可能性があるため、非常に危険な状態として認識されています。

兵器におけるウィドウ・メーカー

兵器の分野では、構造的な欠陥や運用上の問題に関わらず、死亡事故率が高いと評判の兵器に対して「ウィドウ・メーカー」という渾名が与えられます。これは、特に軍用機や銃火器に対して使われることが多く、その危険性を強調する表現として用いられます。

具体的な兵器の例

B-24 リベレーター: 第二次世界大戦中に活躍したアメリカの大型爆撃機。特にヨーロッパ戦線において、高い損失率から「ウィドウ・メーカー」と呼ばれました。
B-26 マローダー: アメリカの中型爆撃機。こちらも高い事故率から同様に呼ばれることがありました。
F-104 スターファイター: ロッキード製の迎撃戦闘機・戦闘爆撃機。その独特の形状と高い事故率から「空飛ぶ棺桶」とも呼ばれ、多くのパイロットを失ったことからこの名がつきました。
F3H デーモン: アメリカの艦上戦闘機。その操縦性の難しさから、事故が多発し、この渾名が与えられました。
F7U カットラス: アメリカの艦上戦闘機。高速性能を追求した結果、無尾翼という特殊な構造を採用しましたが、それが仇となり視界不良や操縦性の悪さを招き、事故が多発しました。
AV-8B ハリアー II: イギリスとアメリカが共同開発したV/STOL対地攻撃機。試験飛行中の墜落事故が多発し、その危険性から「ウィドウ・メーカー」と呼ばれることもありました。
V-22 オスプレイ: アメリカのティルトローター方式のV/STOL輸送機。こちらも試験飛行での墜落事故が多く、「ウィドウ・メーカー」と揶揄されることがあります。
AR-18、AR-180: アーマライト製のライフル。アイルランド共和軍などの準軍事組織やテロ組織によって使用され、多くの死者を出したことから、その象徴的な存在となりました。
K-19: ソ連の658型原子力潜水艦。製造時から事故が多発し、特に冷却水漏れによる炉心事故は「ヒロシマ」と呼ばれるほどの深刻な事態でした。

車両におけるウィドウ・メーカー

車両の世界でも「ウィドウ・メーカー」という言葉は、非常に高い性能を持つ一方で、操縦性や安定性に問題を抱え、事故を誘発しやすい車種に対して用いられます。特に、過去の自動車やオートバイに多く見られ、その危険性を指摘する際に使われます。

具体的な車両の例

ブラフ・シューペリア・SS100: 1920年代から1940年代にかけて製造された高性能オートバイ。アラビアのロレンスの事故死でその名が知られました。
ヴィンセント・ブラックシャドウ: 1940年代後半から1950年代にかけて製造されたオートバイ。革新的な高出力と貧弱なシャーシの組み合わせが危険視されました。
AC・コブラ427: 1960年代のマッスルカー。過剰なパワーと不安定な操縦性から、この名で呼ばれることがあります。
カワサキ・マッハシリーズ: 特に1972年式の750SSと1969年式の500SSは、過激な加速力とピーキーなエンジン特性から「ウィドウ・メーカー」の代表例とされています。
スズキ・TM400サイクロン: 1970年代のモトクロスレーサー。オフロードでの過剰な高出力と劣悪な操縦性が危険視されました。
ポルシェ・930ターボ: 1970年代のポルシェ911ターボ。ターボラグによる予測不能なコーナリングが危険視されました。
日本製ターボバイク: 1980年代初頭に登場したカワサキ・750ターボ、ホンダ・CX500ターボ、スズキ・XN85、ヤマハ・XJ650ターボなど。制御不能な高出力が危険視されました。
ヤマハ・VMAX: 1980年代に登場した大型オートバイ。「直進加速」のみを追求したコンセプトが、操縦性の欠如を招きました。
スズキ・RG500Γ: 1980年代のレーサーレプリカ。極端で制御困難なパワーバンド特性が危険視されました。
TVR・サーブラウ、ダッジ・バイパー: 1990年代から2000年代前半にかけて登場した高性能スポーツカー。超高性能と安全装備の欠如が問題視されました。
スズキ・TL1000S: 1990年代のオートバイ。サスペンション設計に起因するシミー現象の多発が問題視されました。
ハーレーダビッドソン・VRSC(V-rod): 2000年代初頭に登場したハーレーダビッドソン。コーナリング自体が危険とされるほどの極端な車両設計が問題視されました。
ドゥカティ・1098、スズキ・GSX1300Rハヤブサ: 2000年代以降に登場した高性能オートバイ。「性能と完成度が高すぎる」故に、限界を超えると誰もが大事故に見舞われる危険性が指摘されました。

その他

「ウィドウ・メーカー」という言葉は、上記以外にも様々な分野で使用されています。

音楽作品: ジミー・マーティンのアルバムや、複数のバンドのアルバムタイトル、楽曲名として使用されています。
映画: 事実を基にした潜水艦映画や戦闘機を題材にした映画のタイトルとして使用されています。
小説: SF小説のタイトルとして使用されています。
コミック: マーベルコミックスのタイトルとして使用されています。
架空のキャラクター: イメージコミックのキャラクターや、ゲームのヒーローの名前として使用されています。
その他: ネバダ州のゴーストタウンの愛称や、スポーツイベントの名称、アフリカスイギュウを意味するスラング、高速反復スクワットを意味するスラング、ゲーム内の武器名、スクーターの車名など、多岐にわたる分野で使用されています。

このように、「ウィドウ・メーカー」は、その名の通り、危険で悲劇的な結果をもたらす可能性のある物事に対して幅広く用いられる言葉です。その使用例は多岐にわたり、それぞれの分野で特有のニュアンスを持って使われています。

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